動物も死を悼むのか?ゾウの埋葬やシャチの“喪”に見る、命を想う心

執筆者:Tomo

動物も死を悼むのか?ゾウの埋葬やシャチの“喪”に見る、命を想う心

目次

動物は仲間の死をどう受け止めているのか

大切な人を亡くしたとき、私たちは深い悲しみに包まれます。もう二度と会えないという現実は、ときに身体の力まで奪ってしまうほど重いものです。

「葬儀を行い、故人を弔うのは人間だけだ」とよく言われます。では、人間以外の動物は、仲間の死をどのように受け止めているのでしょうか。

人類学者のバーバラ・J・キング氏は、著書【死を悼む動物たち】のなかで、ネコやイヌ、ゴリラ、ゾウなど多くの動物が、仲間の死後に食欲が落ちたり、眠れなくなったり、沈み込んだような様子を見せたりする事例を紹介しています。亡くなった仲間を探し回ったり、聞いたことのない声で鳴いたりすることもあるそうです。

キング氏は、動物が「死とは何か」を人間のように頭で理解しているとは限らないとしながらも、命の終わりを感覚として感じ取っている動物がいる可能性に触れています。

今回は、近年の研究や報道も交えながら、動物たちが見せる「死」への反応をご紹介します。

コーギーとシーズー

ゾウの埋葬行動―子ゾウを土に還す群れ

ゾウは以前から、仲間の死を悲しんでいるように見える行動をとることで知られています。アフリカゾウが仲間の遺骸のそばに集まって長い時間じっと動かなかったり、骨に鼻で触れたりする様子は、多くの研究者によって観察されてきました。

そして2024年2月、学術誌【Journal of Threatened Taxa】に、アジアゾウが死んだ子ゾウを埋葬していたとする、インドの研究者による論文が発表されました。インドの森林局職員であるパルヴィーン・カスワン氏らは、西ベンガル州北部の茶園で、2022年から2023年にかけて5件の子ゾウの埋葬事例を記録しています。

論文や報道によると、子ゾウは群れのゾウたちに鼻や脚で運ばれ、茶園の灌漑用の溝に仰向けに寝かされた状態で土をかぶせられていました。どの事例でも脚は地面から突き出していたそうです。周囲には15〜20頭分の足跡が残っており、近くの茶園の警備員は、群れが30〜40分ほど大きな声で鳴き続けていたと証言しています。また、その後ゾウたちは埋葬場所を通る道を避けるようになったとも報告されています。

一方で、埋葬の瞬間を人が直接見たわけではなく、脚が地面から出ていたのは溝が浅かったためかもしれないとして、解釈には慎重な見方もあります。ゾウが「弔う」つもりで埋めたのかどうかは、今後の研究が待たれます。

それでも、小さな命を群れで運び、土で覆い、声を上げるゾウたちの姿に、人間の弔いと重なるものを感じる方は多いのではないでしょうか。

夕景のゾウさん

シャチ、ネコ、チンパンジー―動物たちが見せる悲しみのかたち

・シャチ


アメリカ北西部の海に暮らすシャチ「タレクア(J35)」は、2018年、生まれて間もなく死んだ子どもを17日間、約1,600kmにわたって頭で押しながら運び続けたことで世界的に知られました。さらに2024年の年末にも、生まれて約1週間で亡くなった娘を、年明けから少なくとも11日間運び続けているのが確認され、再び大きく報じられました。子どもを運ぶ間は食事ものんびりとできないため、研究者たちは母親の心身への影響を心配しています。

・ネコ


アメリカ動物慈愛協会(ASPCA)が1996年に行った調査では、同居していたネコを亡くしたネコの約46%が食欲が落ち、約7割に鳴き方の変化が見られたと報告されています。飼い主に甘えるようになったり、亡くなった仲間が好んでいた場所で過ごす時間が増えたりするネコもいたそうです。また2016年にオーストラリアとニュージーランドで行われた飼い主への調査(イヌ159頭・ネコ152頭が対象)でも、仲間を失った後に甘える行動や食事量・鳴き声の変化が見られたと報告されています。

・イヌ


私たちにとって最も身近な動物であるイヌにも、飼い主や仲間を亡くしたあと、その人がいた場所から離れなくなったり、元気をなくしたりする事例が数多く語られています。先述の調査でも、多くのイヌに行動の変化が見られたとされています。

・チンパンジー


タンザニアのゴンベで長年チンパンジーを研究したジェーン・グドール氏は、1972年に母親を亡くした若いチンパンジーの様子を記録しています。母親の死後、その子は群れから離れ、食事もほとんどとらなくなり、数週間後に衰弱して亡くなったとされています。母子の絆の深さを物語る事例として、今もよく知られています。

・ゴリラ


コンゴ民主共和国の【ヴィルンガ国立公園】では、子どもを亡くした母親ゴリラが長い間遺骸のそばを離れなかった事例や、母親を亡くした子どもたちが遺骸に寄り添い続けた事例が伝えられています。現地の関係者からは、心の内は分からないものの、喪に服しているように見えるとの声もあがっています。

動物の悲しみと人間の弔いの共通点

バーバラ・J・キング氏は、TEDトーク【動物は死を理解できるのか】のなかで、悲しみは「食事・睡眠・仲間との関わり」といった普段の行動からの変化として捉えられると語っています。その視点に立てば、人間だけでなく数十種の動物が「悲しみ」を抱えている可能性があると彼女は指摘しています。

もちろん、動物の心の内を直接確かめることはできません。ゾウの埋葬やシャチの行動が、人間と同じ意味での「悲しみ」なのかどうかは、科学的にはまだ分かっていません。けれど、証明できないからといって、動物に悲しみがないと言い切ることもまたできないのです。

私たち人間は、葬儀や法要、お墓参り、そして散骨といった「弔いのかたち」を通して、大切な人との別れを少しずつ受け入れていきます。子どもを運び続けるシャチや、子ゾウに土をかけるゾウの姿は、形は違っても、失った命と向き合おうとする心が人間だけのものではないことを教えてくれているのかもしれません。

関連記事:【グリーフケアとは~大切な人を亡くした悲しみに寄り添う~】

参考:
Unearthing calf burials among Asian Elephants in northern Bengal, India(Journal of Threatened Taxa)
Asian Elephants Bury Their Dead, New Research Suggests(Smithsonian Magazine)
Orca mom Tahlequah is carrying a dead calf for the second time(CNN)
Do Cats Mourn?(VCA Animal Hospitals)
Owners’ Perceptions of Their Animal’s Behavioural Response to the Loss of an Animal Companion(Animals, 2016)

まとめまとめ

1.ネコやイヌ、ゾウなど多くの動物が、仲間の死後に食欲低下や行動の変化を見せるとされている

2.2024年の論文で、インドのアジアゾウが死んだ子ゾウを灌漑用の溝に運び、土をかぶせていた5件の事例が報告された

3.シャチのタレクアは2018年に死んだ子どもを17日間運び続け、2024年末にも再び同じ行動が確認された

4.ネコでは約46%に食欲低下、約7割に鳴き方の変化が見られたという調査がある

5.動物の心の内は確かめられないが、失った命と向き合う心は人間だけのものではないのかもしれない

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