散骨後の安堵感と憂慮
近年、自然に還りたいという故人の希望や、葬送方法に関する価値観の多様化などで「散骨」を選ぶ人が増えてきています。
故人の希望を叶えて、散骨を無事にできた時の安堵感はかけがえのないものでしょう。
しかし一方で、散骨をして後悔している、気分が落ち込んで心が穏やかでいられないなどのご相談もあります。
後悔とは「自分の選択が間違っていたのではないのか」という過去を気にする心理です。故人の思いを尊重しつつ、散骨後に悔いが残らないようにするには、どのような選択をすれば良いのでしょうか。
散骨をして後悔した事例
・手を合わせられるお墓(墓標)がない
散骨で最も多くみられる後悔は、残された人たちのお墓参りについてです。
遺骨を全て散骨してしまうと、遺族や友人たちには手を合わせるお墓が残りません。お墓参りができず、寂しさを感じてしまうケースがあります。
また遺骨がどこにも残らないため、故人が消えてしまったような感覚になるそうです。
散骨は故人の希望で行われることが多いのですが、残された人たちは少し戸惑いも感じるのかもしれません。
実際に、お墓に向かって自身の悩みや人生の報告をしている方がいます。そうすることで気持ちが落ち着き、お墓を心の拠り所にしているそうです。
・散骨場所が希望通りではなかった
これは散骨業者とのトラブルでもあります。故人からの「思い出の場所に散骨してほしい」との希望で散骨業者に相談したけれど、色々と理由をつけられ、結局希望する場所とは別のところに散骨することになってしまったケースがあったようです。
遺族としては他の場所に散骨するのだったら、お墓を建ててあげた方が良かったと後悔したそうです。
散骨業者がどの場所で散骨をしているか、納得がいく理想通りの散骨がちゃんと行われるかどうかを、よく相談するといいでしょう。
・散骨を親族に反対される
故人が散骨を希望していたとしても、価値観の違いから親族から反対されるケースがあります。長く続く従来のお墓への埋葬を突然やめて、急に散骨をしたいといっても受け入れてもらうことは難しいかもしれません。
また、遺骨は埋葬しないと成仏しない、心と体のエネルギーバランスが崩れたなどという意見もあったそうです。
散骨したことをきっかけに、親族との関係が悪くなり、付き合いがなくなる恐れもあり得ます。親族それぞれが散骨を否定する理由は様々ですが、双方納得いくまでよく話し合うことが必要だと思います。
散骨をして後悔しないためには
・遺骨を少量手元に残す
遺骨を全て散骨するのではなく、遺骨の一部を手元に残す「手元供養」という方法があります。
遺骨を入れるための手元供養品はさまざまあり、木製やガラスで造られた手のひらサイズのミニ骨壷、遺骨を少しだけ入れて身につけるアクセサリーがあります。また遺骨そのものを宝石のように加工することもできます。
小さな骨壺、位牌、仏具、故人の写真などを納めることができるコンパクトな「ミニ仏壇」というのも良いかもしれませんね。
遺骨を残しておくことで、手を合わせることもできて心の拠り所になり、故人を失った悲しみの気持ちを和らげてくれることでしょう。
手元供養として保管していた遺骨を、やはり散骨したいとなった場合には、弊社では無償で散骨を行なっています。
・信頼のできる散骨業者を選ぶ
散骨業者によって散骨場所も違い、またそれぞれを選択できます。しかし法律や条例、安全上の理由などで、散骨場所は制限されています。
「ハワイの海がいい」「フィンランドの森に撒いてほしい」などの意向があれば、そういったエリアで確実に散骨できるのか、業者に確認してから選びましょう。
希望はなるべく明確に伝え、柔軟に対応してくれる散骨業者を選ぶことが大切です。
・家族や親族とよく話し合う
故人が希望した散骨であれども「遺骨を残しておきたい」「お墓を建てたい」という親族の意見もあるでしょう。また全ての遺骨を散骨してしまったために、親族とトラブルが起きるケースがあります。
遺骨を故人そのものとして捉える人もいます。遺骨に思い入れがある親族としては割り切れないこともあるでしょう。散骨した遺骨は回収できないので、事後報告した時に反発を受ける可能性もあります。
このような事が起こらないために、親族とはお互いが納得するように、よく話し合いましょう。
散骨後の心の安らぎを求めて
散骨後に悔やまないためには、散骨業者や親族とはよく話し合うことが大切です。
また、遺骨の一部を手元供養として残しておくことも必要なことです。
しかし、海や森林などの場所で散骨をすることで、故人が還られた自然へ向かっての供養もできるのではないでしょうか。
散骨後に、毎日の暮らしの中でふと海や森を見ながら、自然を感じながら、故人を弔い偲ぶのはいかがでしょう。
故人がいつも見守ってくれているような感覚で過ごすことで心が安らぐかもしれませんね。