夫や妻との死別
先日放送されたNHK「あさイチ」という番組で、「死別後の心のケア」や「ひとり暮らしの不安」について特集されていました。画面越しに話す人たちの言葉が、どれも胸に深く刺さったのを覚えています。
「夜が、とにかく一番つらいんです。」
「この静けさが、なんだか怖くて仕方なくて。」
「テレビを見てても、話しかける相手がいないのが本当に寂しいです。」
そんな声がいくつも紹介されていました。
見ていて、「ああ、やっぱり誰もが感じることなんだ」と、思わず頷いた方も多かったのではないでしょうか。
夫や妻との別れは、想像以上に大きな喪失感をもたらします。ともに過ごしてきた年月の分だけ、心の中にはたくさんの思い出が積み重なっています。
たとえば、毎日交わしていた「おはよう」「いってきます」「おかえり」「おやすみ」という言葉も、食卓を囲んで「美味しいね」と笑い合った時間も、休日に一緒に歩いた道の景色も、すべてが静かな思い出へと変わっていきます。
残された人は、「こんなにも静かなんだ」「こんなにも空虚なんだ」と、初めて知る孤独の重さに押しつぶされそうになるでしょう。死別は、ただ大切な人がいなくなることではなく、共に過ごしてきた日常そのものが突然消えてしまう現実と向き合うことでもあります。この苦しさは、実際にその瞬間を迎えるまで、誰にも本当の意味では理解できないのかもしれません。
死別後の孤独と心のケア
死別の悲しみは、自然な反応です。「あさイチ」でも、専門家の先生が「悲しみは治すものではなく、付き合っていくもの」と話していました。
悲しみの感情は、決して一直線に良くなるわけではありません。波のように、良い日と悪い日を繰り返しながら、ゆっくりと落ち着いていきます。
たとえば、こんな心の動きが現れます。
・突然涙が出て止まらない
・ふと笑えた自分に罪悪感を覚える
・無気力で、何もする気が起きない
・孤独や不安で、胸が押しつぶされそうになる
しかし、これは正常な反応で、決して「自分がおかしい」のではありません。
周囲が「早く元気になって」と声をかけてくることもあるかもしれませんが、無理に明るくする必要はまったくないのです。
あさイチでも何度も伝えられていたのは、「悲しみには人それぞれの形があり、正解はない」ということでした。
泣きたいときには我慢せずに涙を流し、思い出に浸りたいときには、無理に気持ちを切り替えようとせず、そのまま思い出とともに過ごしてかまわないのです。ときには、ふとした瞬間にこぼれてしまう笑顔や、心が軽くなるような出来事があるかもしれませんが、そんな気持ちを抱く自分を責めたり、否定したりする必要はまったくありません。
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死別後の一人暮らし~不安や孤独の支えになる制度やサービス
死別によって突然始まる一人暮らしは、思っていた以上に多くの不安を伴います。
特に、次のような悩みは多くの方が感じています。
・家事を一人でこなせるか
・病気や災害のときに誰が助けてくれるのか
・金銭管理や相続、名義変更などの複雑な手続き
・体調の変化や老後への漠然とした不安
・何より、圧倒的な「孤独」への恐れ
しかし、今の社会は、こうした不安を少しでも和らげるための仕組みが、思っている以上に整っています。
たとえば、自治体や地域のサービスとして、見守りサポートや配食サービスがあります。急病のときにはボタン一つで救急に繋がる「緊急通報装置」を設置することも可能です。
名義変更や相続の手続きは、面倒に感じるかもしれませんが、行政書士や司法書士に相談すればスムーズに進めることができます。無料相談を受け付けている地域の窓口も意外と多いのです。
また、地域の交流会や趣味のサークル、カフェでの集まりなど、人との繋がりを作るきっかけは少なくありません。最近は、オンラインの趣味サークルやZoomを使ったおしゃべり会も広がっています。
「あさイチ」でも、「最初は不安だったけど、近所の編み物サークルに行ったら、思った以上に楽しくて居場所ができた」という体験談が紹介されていました。
ひとりの暮らしは最初こそ不安を感じるものですが、自分の時間を自由に使える生活でもあります。

NHK「あさイチ」でも伝えた穏やかに過ごすための向き合い方
夫や妻との死別は人生の大きな節目ですが、その悲しみは「乗り越える」ものではなく、「悲しみと共に生きる」ことが新しい日常の始まりになります。
最初のうちは、何をしても心が満たされず、孤独がずっとまとわりついて離れないように感じるかもしれません。けれど、そんな日々の中でも、ふとした瞬間に気づくことがあります。
たとえば、朝カーテンを開けて差し込んでくる光のあたたかさに、思わず目を細めたとき。近所の花屋で買った一輪の花が、静かな部屋を少しだけ明るくしてくれたとき。あるいは、離れて暮らす子どもや孫とスマホ越しに交わす何気ない会話が、思っていた以上に心をほっとさせてくれたとき。そんな小さな出来事が、「今を生きている」ということの意味を、少しずつそっと教えてくれるのです。
亡くなった相手との思い出は、これからの日々の中でも静かに寄り添い、そっと自分を支えてくれます。寂しさは消えないけれど、その中にも、穏やかに過ごせる時間が少しずつ増えていきます。こうした変化は、誰にでも、自然に訪れるものです。
NHKの「あさイチ」でも伝えられていたのは、「今の自分のままで大丈夫」という安心のメッセージでした。無理に強くなろうとする必要はなく、焦らず、ゆっくりと、自分のペースで毎日を紡いでいけば、それで十分だということです。