バリ島で83人分の遺骨をまとめて弔う“合同ガベン”―火葬から海への散骨まで、地域で支え合う弔いのかたち

執筆者:Tomo

バリ島で83人分の遺骨をまとめて弔う“合同ガベン”―火葬から海への散骨まで、地域で支え合う弔いのかたち

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2026年8月7日、インドネシア・バリ島のヌサペニダ島スブニブス村で、83人分の遺骨を一度にまとめて火葬する「合同ガベン(火葬儀礼)」が営まれました。地元クルンクン県が正式に補助金交付を発表し、現地在住のライターが二日間にわたって密着取材した記録が、8月末から9月にかけて公開され話題になっています。今回はこのニュースを入り口に、バリ島の伝統的な弔いのかたちと、その先にある「海への散骨」について紹介します。

バリ島ヌサペニダで営まれた“合同ガベン”とは

「ガベン」はバリ・ヒンドゥーにおける火葬儀礼として広く知られていますが、実はより大きな枠組みである「ピトラ・ヤドニャ(Pitra Yadnya)」という、故人や祖先に関わる一連の儀礼の一部です。スブニブス村で掲げられた儀礼用の傘には「LPD Sebunibus-Upacara Pitra Yadnya-7 Agustus 2026」と記されており、村自体もこの儀式を単なる火葬ではなく、より広い意味を持つ弔いの儀礼として位置づけていたことがうかがえます。

現地では、クルンクン県が2026年8月4日、「合同ガベン(Ngaben Massal)」を営む慣習村に対し、1体(サワ)あたり500万ルピア、1村あたり最大1億5000万ルピアの補助金を交付すると正式に発表しました。スブニブス村にはこの上限額にあたる1億5000万ルピアが交付されており、行政が地域の伝統儀礼の継続を後押ししている実態がわかります。

土から掘り起こし、骨を洗い、火にかける―二日間の儀式

取材記録によると、儀式は大きく二段階に分かれて行われました。

・8月4日:掘り起こしと洗骨


早朝、遺族たちが自分の家族の墓を掘り起こし、遺体を包んだ布ごと丁寧に取り出します。取り出したあとの墓には、遺体の代わりとしてココナッツや生きた鶏などが供物として納められるそうです。回収された骨は、水と石けん、アランアラン(チガヤ)という植物を使って遺族自身の手で洗い清められ、識別のため番号付きの袋に納められます。

・8月7日:合同火葬


三日後、動物の形をした装飾構造物「プトゥランガン」に番号順に遺骨が納められ、正午過ぎに一斉に火が放たれます。取材者によれば、火が回る速さは驚くほどで、点火からわずか数分で燃え広がったといいます。

この村では、亡くなってから合同ガベンが営まれるまでの間、遺体は一度土に埋葬されたまま待つのが通例だといいます。合同で行う日程が来ると、墓地内のすべての墓が一斉に掘り起こされる決まりになっており、費用や労力を地域で分かち合うための仕組みとして機能しているようです。

なぜ「合同」で行うのか―費用と共同体で支え合う知恵

バリ島では誰もが亡くなってすぐに火葬されるわけではない、という点は誤解されやすいポイントです。個別に火葬する家庭がある一方、スブニブス村のように、村の慣習組織(Desa Adat)が僧侶とともにバリ暦をもとに日取りを決め、数年に一度、村全体でまとめて執り行うケースもあります。

複数の家族が一つの「プトゥランガン」を共有することも多く、装飾や祭具にかかる費用を分担できるのが合同で行う大きな利点です。今回のような行政からの補助金も、遺族にとって経済的な負担を和らげる後押しとなっているようです。

火で終わらない弔い―遺灰は海へ、その後も続く旅

バリの海 波打ち際の岩場

火葬を終えると、白く残った骨をさらに細かく砕き、ココナッツとともにその日のうちに海へ運んで還すのがスブニブス村の慣わしだといいます。数日後には「ングラピン」と呼ばれる儀式で、海に還した魂を家族それぞれが呼び戻し、その後12日後にはブサキ寺院など複数の聖地を巡ったうえで、最終的に各家庭の祖先を祀る「家寺」へと迎え入れられます。

つまり、燃え上がる炎はドラマチックな一場面にすぎず、弔いの本質は、遺灰を海へ還したあとも家族と地域が続けていく一連の儀礼のなかにあるというのが、現地で取材にあたったライターの実感だったようです。

まとめ―弔いの形は違っても、大切な人を丁寧に送る心は同じ

土を掘り起こして骨を洗う、村全体で火を囲む、遺灰を海へ運ぶ――日本の感覚からすると驚きを伴う光景かもしれません。しかしその根底にあるのは、費用や労力を分かち合いながら、大切な家族を丁寧に見送りたいという普遍的な想いであり、日本で広がりつつある墓じまいや海洋散骨への関心とも、どこか重なるものがあるのではないでしょうか。

海と森のセレモニーがご提案する「海外リゾート散骨」でも、バリ島は海洋散骨が可能なエリアの一つとしてご案内しています。土地や後継者を必要としない供養のかたちにご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

関連記事:【インドネシアのトラジャ族~葬儀やお墓・死生観について~

参考:
Ngaben in Bali: Inside a Collective Cremation Ceremony (2026) - Nusa Penida
Bupati Satria Serahkan Bantuan Ngaben Massal di Nusa Penida - クルンクン県政府
Upacara Ngaben - バリ州政府 文化遺産ポータル
Penyuluhan tentang Upacara Pitra Yadnya - インドネシア宗教省 バリ州事務所

まとめまとめ

1. 2026年8月、バリ島ヌサペニダのスブニブス村で83人分の遺骨をまとめて弔う「合同ガベン」が営まれた

2. 儀式は土からの掘り起こしと洗骨(8月4日)、合同火葬(8月7日)の二段階で行われる

3. クルンクン県は1体あたり500万ルピア、1村あたり最大1億5000万ルピアの補助金を伝統儀礼の維持のために交付している

4. 火葬後、遺灰は同日中に海へ運ばれ、後日「ングラピン」という儀式で魂を迎え入れるなど、供養は火で終わらず続く

5. バリ島は海と森のセレモニーの海外リゾート散骨プランの対象エリアでもあり、土地や後継者に縛られない供養のヒントにもなり得る

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