墓じまいで起きる裁判とトラブル

執筆者:Tomo

墓じまいで起きる裁判とトラブル

目次

墓じまいとは?~増える背景と注意すべきトラブル

最近、「墓じまい」という言葉をよく耳にするようになりました。
墓じまいとは、お墓を撤去して遺骨を新しい場所へ移す改葬を含むものです。

少子高齢化や核家族化の影響で、お墓を受け継ぐ人がいなかったり、遠方でお参りが難しかったりすることから、従来のお墓を閉じて、永代供養や納骨堂、散骨など新しい形で供養を続ける人が増えてきています。

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ただ、墓じまいは単なる工事や引っ越しのように簡単に進むものではありません。お墓は「祭祀財産」とされ、故人を失った家族にとっての、心の拠り所でもあります。そのため、「誰が決めるのか」「どんな手順で進めるのか」をめぐって親族の間で意見が分かれることが多く、トラブルに発展しやすいのです。

実際に、親族間での意見の食い違いが裁判にまで発展したり、業者の不手際で損害賠償が命じられたりしたケースも報じられています。それだけ、墓じまいは慎重に進める必要があるということです。

墓じまいで実際に起きた裁判事例~親族トラブルと業者の誤撤去

1.親族間で起きた無断墓じまいの訴訟


愛知県では、90歳の女性が「知らないうちにお墓を片付けられ、遺骨まで移されてしまった」として名古屋地裁に訴えを起こしたケースがありました。女性は「家族として大切に守ってきたお墓を一方的に処分された」と強いショックを受け、530万円の慰謝料を求めています。

このとき大きな問題になったのは「祭祀承継権」という、お墓や仏壇を誰が受け継いで守っていくのかという権利でした。承継者がきちんと決められていればトラブルにはなりにくいのですが、そこが曖昧だと親族の間で意見が食い違い、争いになってしまうことがあります。実際、この訴訟で親族の対立を強め、かえって家族の関係を壊す結果となってしまいました。お墓をどうするかという選択が、家族の絆を揺るがすきっかけになってしまうこともあるのです。

2.業者の誤撤去による損害賠償命令


大阪地裁で起きた裁判では、業者の確認不足が大きなトラブルにつながりました。墓じまいを請け負った業者が、依頼されたものとは別のお墓を誤って撤去してしまったのです。しかも墓石だけでなく、中に納められていた遺骨まで合葬してしまったため、元に戻すことはできませんでした。遺族は裁判を起こし、裁判所は業者の過失を認め、500万円を超える賠償を命じています。

霊園の区画はどれもよく似ているため、番号や名義を丁寧に確認しないと、こうした取り返しのつかない間違いが起きてしまいます。依頼する側も「全部お任せ」で済ませるのではなく、写真や書面などで一緒に確認していくことが重要です。

なぜ墓じまいが裁判にまで発展するのか

墓じまいがトラブルになり、ついには裁判にまで持ち込まれてしまうのには、いくつかの共通した理由があります。

1. 祭祀承継者をめぐる食い違い


お墓は土地や家のように相続財産として分けられるものではなく、法律で「祭祀財産」として別枠で扱われています。相続人全員が平等に権利を持つわけではなく、代表となる「祭祀承継者」が責任を負います。

しかし、祭祀承継者は誰かをきちんと決めていないと、「自分が継ぐべきだ」「いや、こちらが承継すべきだ」と親族同士で主張がぶつかり合います。特に、長男だから、同居しているから、費用を出しているから、などといった「根拠の違い」が、対立を深める原因になりやすいのです。

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2. 親族間の話し合い不足


墓じまいを進めるとき、事前に親族全員に説明をせず、一部の人だけで決めてしまうと「勝手にやられた」と不満を抱く人が出てきます。特に遠方に住んでいる親族や高齢の親族は情報が届きにくいため、「知らないうちに終わっていた」と怒りを覚え、裁判にまで発展することもあります。

「声をかけてくれれば反対はしなかったのに」という誤解が、わざわざ争いを生んでしまうケースも少なくありません。

3. 業者との契約や確認不足


墓じまいは石材店や専門の業者に依頼して行うのが一般的ですが、契約内容や確認手順が曖昧だと、思わぬトラブルに発展します。業者にとっては数多くこなす仕事のひとつでも、遺族にとっては唯一無二のお墓です。ほんの小さな確認不足が、取り返しのつかない損害へとつながってしまうのです。

4. 感情のもつれ


お墓は故人や先祖とのつながりを感じさせる場です。だからこそ「効率」や「合理性」だけでは割り切れない、心の問題が大きく関わってきます。

「自分の気持ちを無視された」「先祖を大切にしていない」と感じた瞬間に、親族の間に深い溝が生まれてしまいます。手続きや費用の分担がきちんとされていたとしても、心の部分で納得できなければ争いは避けられません。感情の行き違いが積み重なり、最終的には裁判に頼らざるを得ないところまでいってしまうこともあるのです。

家族会議のイメージ

墓じまいでトラブルを避けるための必要な準備

墓じまいを検討する人は今後さらに増えていくと予想されています。しかし、トラブルや裁判に発展させないためには、事前の準備と家族への配慮が欠かせません。

まず重要なのは、誰が祭祀承継者になるのかを明確にしておくことです。遺言や家族の合意によって承継者を定め、可能であれば書面に残しておくことで、後々の争いを未然に防ぐことができます。

親族間での丁寧な話し合いも欠かせません。遠方に住む親族や高齢の親族にも情報を共有し、できる限り全員の意見を確認しておくことが大切です。時間はかかりますが、誤解や不信感を減らし、全員が納得できる結果にたどり着きます。

また、業者を選ぶ際には、複数の見積もりを比較し、契約内容を具体的に確認しておくことも大切です。施工の範囲、遺骨の扱い、撤去後の処理方法などを契約書に書いておけば、後のトラブルを防ぎやすくなります。

弊社「海と森のセレモニー」では、海外リゾート散骨だけでなく、墓じまいに関するご相談や手続きのサポートを行っております。お墓の撤去から改葬、供養の方法まで、一連の流れを安心して進められるようお手伝いしています。

墓じまいは「お墓をなくすこと」ではなく、「供養のあり方を変えて続けていくこと」です。散骨や納骨堂、永代供養などに移っても、ご先祖を大切に思う気持ちは変わりません。そのことを家族で共有できれば、余計な対立も起こりにくいでしょう。

実際に裁判まで発展した例もあるように、墓じまいは家族にとって大きな決断です。だからこそ、準備や話し合いを丁寧に重ねながら、それぞれが納得できる方法を探していくことが大切です。

まとめまとめ

1.墓じまいが増えている一方で、親族間の対立や業者の不手際から裁判に発展することもある

2.愛知では無断墓じまいで女性が提訴し、大阪では墓じまい業者の誤撤去で賠償命令が下るなど、裁判が起こった

3.墓じまいが裁判に発展するのは、祭祀承継者の不明確さや親族間の話し合い不足、業者の確認不足、感情のもつれが原因

4.墓じまいは今後増えると予想され、裁判を避けるには承継者の明確化や話し合い、業者との契約確認が大切

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