お墓の継承者問題~祭祀継承者の選び方や手続き~

執筆者:Tomo

お墓の継承者問題~祭祀継承者の選び方や手続き~

目次

お墓の継承者とは

お墓の所有者である人が亡くなった際「誰がお墓を継ぐべき?」「お墓の継承ルールは?」と考える人もいるでしょう。近年の少子高齢化や核家族化の影響により「お墓の継承者問題」で悩む人が増えています。

お墓の承継とは「お墓を維持するための管理や費用を受け継ぐこと」です。

そしてお墓を継承することは「祭祀財産」を全てを継承する「祭祀継承者」になることです。祭祀財産とは、墓地や墓石、仏壇、仏具、家系図などといった先祖を祀るための財産のことで、祭祀財産を全て受け継ぐ人を「祭祀承継者」と言います。
そして祭祀財産は、祭祀承継者のみで受け継ぐものであります。

家や土地の不動産、預貯金などといった「相続財産」とは異なります。
そのため祭祀承継者と相続財産の相続人は、同じである必要がありません。
また、祭祀財産の受け継ぎには相続税はかかりません。

祭祀承継者の役割

祭祀承継者には主に4つの役割があります。

・お墓や仏壇の維持管理


遺族がお墓参りできるように、お墓の手入れをして維持に努めます。また、お寺の墓地や霊園に管理費を支払う義務も発生します。霊園では維持管理費、お寺の墓地ではさらにお布施を払います。お墓の管理費が納められなかった場合、無縁墓となってしまい使用権を失うことがあります。

・法要を行う


一周忌や三周忌などの法要を主宰するのも、祭祀承継者の役割です。「僧侶の手配」「親族への連絡」「お布施やお供物、お花の準備」などを行います。

・檀家としての務め


お墓がお寺の墓地にある場合、そのお寺の檀家になっていることがほとんどです。祭祀承継者は檀家としての務めも受け継ぐことになります。檀家の務めとして「法要といった行事への参加」「お布施」「寄進」などが挙げられます。

・お墓や遺骨の所有権を持つ


祭祀承継者は、お墓と遺骨の所有権を持ちます。「墓じまいをしたい」「遺骨を分骨して散骨や手元供養をしたい」などの際には、祭祀承継者の同意が必要になります。

祭祀継承者の選定

日本では古くから「身内が祭祀継承者になる」という考えがあります。
そして祭祀承継者になる一般的な優先順位は以下のようになっています。

① 長男・長女

特に問題がない場合、長男や長女と考えるのが一般的です。

② 長男以外の子供・改姓した子供

長男が遠方にいたり亡くなっている場合もあることから、長男以外の子どもがお墓を継ぐケースが増えています。また、結婚して改姓した子供が受け継ぐこともあります。

③ 兄弟・姉妹・甥・姪など

子供以外の親族に依頼することもあります。ただし、お墓を管理する負担をかけるため、金銭的なトラブルも発生する可能性もあります。

④身内以外の人

身内でなくても祭祀承継者になることはできます。ただし、墓地によっては承継者を親族に限定している場合もあります。

しかし故人(被相続人)からの指定があれば、その人が祭祀継承者になります。指定された人が第一優先となります。また故人(被相続人)からの指名は遺言書でなくても、エンディングノートや口頭でも、それを証明できる人がいれば成り立ちます。

祭祀承継に関して、民法では以下のように規定されています。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。

ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。民法第897条

このように 故人(被相続人)から指定があれば、その人が承継することになります。
そして祭祀承継者の相続順位は、法律では定められていないのです。

しかし祭祀承継者がスムーズに決まらないケースもあります。
その場合は、家庭裁判所が決めることになります。

家庭裁判所に「祭祀承継者指定の調停、または審判」を申し立てます。
・故人(被相続人)との関係性
・祭祀承継者としての能力
・生前に故人と交流していたか
・お墓の管理状況

などを総合的に考慮し「故人(被相続人)が生存していれば指定したであろう者」を選ぶことになります。

エージェント

お墓の継承の手続き

祭祀承継者が決定したら、継承するお墓の菩提寺や管理者へ連絡をします。
その後、名義変更の手続きをします。

必要な書類は
・継承者の戸籍謄本や住民票
・継承者の実印と印鑑登録証明書
・墓地使用許可証や永代使用承諾証(墓地使用権を取得した際に発行された書類)
・旧墓地使用者の死亡が記載された戸籍謄本
・遺言書
・親族の同意書
・家庭裁判所の審判書

などとなります。

お墓の取り扱いは墓地管理者によって異なりますので、どのような手続きや書類が必要かは、予め確認しておきましょう。

またお墓の継承の際に行う名義変更の手続きでは、必要書類の提出の他、手数料の支払いも行います。

費用の目安として
・公営墓地…数百円~数千円程度
・民営墓地…数千円~1万円以上
・お寺の墓地…手数料+お布施

とされています。

お布施の金額に悩んだ場合はお寺に問い合わせてみましょう。

家計簿

祭祀継承者不足とその影響~無縁墓を避けるための墓じまい

お墓や仏壇などの祭祀財産を継承すると、故人や先祖の遺骨や供養方法の決定権を持つ、祭祀継承者となります。そして祭祀継承者として「お墓の維持管理」「遺骨の扱い」「法要の主宰」などの責任を負うことになります。

そのため現代では、祭祀継承者になることを負担に思う人も少なくありません。
そして祭祀承継者と指名された人は、拒否することができません。

しかし祭祀承継者になっても相続を放棄をすることはできるとされています。
祭祀財産は相続人の間での遺産分割が必要な相続財産には当たらないため、祭祀承継者の所有物として自由に扱うことができる財産だからです。

相続財産であれば、財産を受け取ったり処分したりすることは、債務の承認にあたり相続放棄が認められません。しかし相続財産でなければ受け継いだり処分したりしても、相続放棄が認められない理由にはならないのです。

また、近年の少子高齢化や核家族化に伴い祭祀継承者不足となり、お墓の継承者や維持管理費問題が深刻となっています。そして祭祀継承者が決まらなかったり、不在の場合もあり得ます。そのような際には「無縁墓」になることを防ぐためにも「墓じまい」や「改葬」を選択することも手段のひとつです。

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墓じまいとして、今あるお墓を片付けることに抵抗がある人もいるかもしれません。
しかし、後の供養に繋げていくことが最も大切なことでしょう。

まとめまとめ

1.祭祀財産は祭祀承継者のみで受け継ぐもの

2.祭祀承継者はお墓の維持管理の責任やお墓や遺骨の所有権を持っている

3.故人(被相続人)からの指定があった場合その人が祭祀継承者になる

4.墓地管理者によって必要な書類や費用が異なるため予め確認する

5.祭祀継承者が決まらなかったり不在の場合には、後の供養に繋げていくためにも墓じまいや改葬を選択することも手段のひとつ

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