多死社会における火葬待ち問題

執筆者:Tomo

多死社会における火葬待ち問題

目次

火葬までの日数~都市部で長期化

現在、日本では「多死社会」「高齢化社会」を迎えています。

そのような中、近年問題となっているのが「火葬待ち」です。特に人口多い都市部の状況は深刻化していて、火葬まで3~5日の順番待ちや、長い時では10日~2週間程度、最長で17日の火葬待ちが発生しているケースもあります。年々亡くなる人が増えていて、地域によっては火葬場の受け入れが追いついていない状態となっています。

例えば、人口の多い神奈川県横浜市では【横浜市健康福祉局】によると、過去5年間の火葬待ち日数は平均「4.65 日」とあります。そして【東部方面斎場(仮称)の整備について】では、2025年に横浜市の高齢化率は26%を超え、死亡者数の増加に伴い、火葬需要も増え続けていくことが予測されているそうです。

今回はそのような火葬待ちが起こる理由、また火葬待ちによって起こる問題やその対策なども解説していきます。

順番待ち

火葬待ちが起こる理由

・年間死亡者数の増加


厚生労働省の【令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況】によると、2022年の死亡者数は約157万人で、1989年の年間死亡者数と比較すると約2倍も増えています。そして2040年には約167万人に増加すると予測されています。

そして厚生労働省の【我が国の人口について】では、2070年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は39%になると予測されています。また2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%となり、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%になるとあります。高齢化に伴い、年間死亡者数の増加も予測されていることから、さらに火葬待ちが発生する可能性が高くなることでしょう。

・火葬炉の数、火葬時間が決まっているため


火葬炉の数や火葬時間に制限があることが挙げられます。火葬炉の数は限りがあるため、1日で火葬できる上限数は決まっています。また火葬炉には定期的なメンテナンスが必要でなので、いつでも稼働できるわけではありません。そのようなことからも火葬待ちが発生している状況です。

・季節や時期による

冬季、友引前後、お盆や年末年始では火葬待ちの日数が長くなってしまうこともあります。寒い季節になると、亡くなる方が多くなったり、友引は「不幸に友を引き込む」と昔から考えられており、友引の日を火葬場の休業日としているところが多くあります。
またお盆や年末年始などの一般的に長期休暇とされている時期に亡くなった場合は、火葬場が営業を再開するまで遺体を安置することになり、火葬待ちが長くなってしまいます。特に休業日の翌日は火葬場が混雑しています。

火葬

火葬待ちによる問題点

火葬場は、亡くなってからしか予約できないため、時期によっても火葬待ちが発生しやすくなります。火葬待ちの状況では、以下のような問題が起こりやすいです。

・火葬までの安置場所が確保できない


火葬をするまでの間、遺体を安置する場所として
・自宅
・葬儀社の安置室
・火葬場の保棺所
・民間の遺体保棺所

があります。

自宅で遺体を安置する場合は、ゆっくりお別れの時間を確保できますが、遺体の冷却と保存が必要です。そのため、長期間となると遺体の損傷を早めてしまう可能性もあります。一方、葬儀社の安置室や火葬や民間の保棺所では、遺体の冷却設備は充実していますが、収容できる数に限度があるため、希望している場所に安置することができない場合があります。

・遺体安置にかかる費用が高額になる


葬儀社の安置室や火葬場、民間の遺体保棺所により料金は異なりますが、1日あたり約10000円、ドライアイスは1日あたり約5000〜10000円が相場とされています。また、遺体の損傷を防ぐために必要なドライアイスの量は、季節や部屋の温度によっても変わってきます。

予め火葬待ちが長期間になることがわかっている場合には、遺体の防腐・殺菌処理を行い、生前の姿に近づけてくれるエンバーミングを検討するのも手段のひとつです。遺体を冷却せずに最大で50日間遺体の状態を保つことができます。しかも元気だったころの姿に近づけることも可能だそうです。エンバーミングにかかる費用は、搬送料、施術料、死化粧、納棺などが含まれて約15~25万円程度が相場となります。葬儀社に相談してみるのも良いでしょう。

火葬待ちの対策

 ・火葬する時間帯を変える


葬儀の流れとして、午前中に告別式、午後に火葬をする日程が一般的です。そのため、火葬待ちがある場合でも、朝や夕方比較的空いています。時間帯を変えることによって、火葬待ちの期間を短くできる可能性があります。

・火葬する地域を変える


火葬場の混雑状況は、地域によって差があります。希望していた火葬場は混雑していても、隣の地域の火葬場は混雑していない場合もあります。火葬場の混雑状況を葬儀社に確認してもらいましょう。しかしその地域外に住んでいる人が利用する場合、費用が高くなることが多いため、火葬待ちの期間を考慮して検討しましょう。

火葬待ちをなくす社会的対応が必要

日本では、亡くなってから最低24時間は火葬をすることができないと法律で定められています。これはもしかしたら生き返る可能性を考えての猶予期間として設けられているものです。そのためどこかには遺体を安置しておく必要があります。しかし火葬待ちが発生すると、火葬までの遺体安置場所が確保できず、費用が高くなったり、遺族の負担が大きくなるため、事前により良い情報を得ておくことが大切です。

火葬待ちの状況は年間死亡者数の増加に伴い、今後ますます長くなることが予測されています。火葬待ちが深刻な横浜市では、2026年に火葬場が新設されるそうです。
また沖縄市では市内以外で火葬する住民が増え、費用の負担が増えていることを説明し、火葬場新設の理解を求めたそうです。
しかし基本的に火葬場の新設や増設はそう簡単なことではありません。火葬場は「迷惑施設」と見なされ、周辺住民の理解が得られにくいのです。

関連記事:【火葬待ち問題の救世主「遺体ホテル」~高まる需要と残る課題 ~
また民間業者の対策として、都内のとある民営斎場では、営業日数を3日増やしたり、営業時間を3時間伸ばしたことによって火葬待ちが発生しなかったそうです。
このように火葬待ちが発生しない対策を、今まで以上に社会全体で考える必要があるのかもしれませんね。

まとめまとめ

1.都市部では、長い時では10日~17日程の火葬待ちが発生している状況

2.火葬待ちが起こる主な理由として死亡者数の増加が挙げられる

3.火葬待ちによって火葬までの安置場所が確保できなかったり、安置にかかる費用が高額になる問題が発生する

4.火葬待ちの対策として、火葬する時間帯や地域を変えることも必要になってくる

5.火葬待ちを発生させないことを社会全体で考える必要がある

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