イギリスで導入進む水葬「ウォータークレメーション」とは?~火葬・土葬に代わる新しい選択肢~

執筆者:Tomo

イギリスで導入進む水葬「ウォータークレメーション」とは?~火葬・土葬に代わる新しい選択肢~

目次

イギリスで注目の水葬「ウォータークレメーション」

最近、イギリスで新たな葬送方法が注目を集めています。
それは「ウォータークレメーション(Water Cremation)」と呼ばれる方法です。直訳すると「水による火葬」。

従来の火葬や土葬とはまったく異なるアプローチで、環境への配慮から関心が高まっています。一部のイギリスのメディアでは、「boil-in-a-bag(袋で煮る)」という少し刺激的な表現で紹介され、社会の中では驚きとともに賛否の声が広がっています。

ウォータークレメーションは、すでにアメリカやカナダ、アイルランド、南アフリカなどでは合法化され、多くの人々がこの方法で見送られています。そしてイギリスでも現在、制度導入に向けた本格的な検討が進められています。

火で燃やすわけでもなく、土に埋めるわけでもない。でも、故人にきちんと別れを告げることができる。そんな第三の選択肢が、今まさにイギリスでも真剣に議論されはじめています。従来の常識にとらわれない、新しい葬送のかたちが、少しずつ現実になりつつあります。

ウォータークレメーションの仕組みと環境負担の少なさ

「水による火葬」と聞いても、どんな仕組みなのかピンとこない方も多いかもしれません。

この方法は、技術的には「アルカリ加水分解(Alkaline Hydrolysis)」と呼ばれています。遺体を専用の圧力容器に入れ、水とアルカリ性の液体(たとえば水酸化カリウム)を加えて加熱し、数時間かけてゆっくりと分解していきます。

分解が進むと、遺体のほとんどが液体になります。その液体は無害で、専用の設備で適切に処理されたあと、下水へと放流されます。一方で骨は溶けずに残るため、乾燥させて細かく砕き、火葬のあとの遺灰と同じようにして遺族のもとへ返されます。

つまり、火を使わずに「灰」にするという意味で、「火葬の水バージョン」とも言えるかもしれません。

またウォータークレメーションは、環境への負担が少ないことも、大きな特徴のひとつです。従来の火葬では多くの二酸化炭素が排出されますが、この方法ではそれがほとんどありません。

必要とされるエネルギーも少なく、煙や排ガスも出ないため、環境にやさしい「エコ葬」としても、世界中で関心が高まっています。

綺麗に洗浄された骨

賛否が分かれるウォータークレメーション

一方で、批判の声も少なくありません。

特にイギリスでは、保守的な宗教団体や一部の市民から「人間の身体を溶かして流すというのは、あまりにも非人道的ではないか」といった声が上がっています。
確かに、「袋で煮る」「下水に流す」といったワードだけが一人歩きすれば、グロテスクな印象を与えてしまうのも無理はありません。

しかし実際のところ、この方法は衛生的で安全な手段として、きちんと管理されています。そして科学的にも倫理的にも、いろいろな視点から検討が重ねられてきた背景があります。

そもそも、今ではすっかり当たり前になった火葬も、広まり始めた頃は「人を焼くなんてとんでもない」と強く反発されたことがありました。新しい方法が出てくるたびに、それをどう受け入れるかは、文化や価値観の変化と深く関わっているのかもしれません。

ウォータークレメーションを巡っては、「本当に導入していいのか?」という声が、議会だけでなく市民の間でも交わされています。環境への配慮や価値観の変化をふまえた、新しい選択肢として、社会全体がそのあり方を考え始めているところです。

ウォータークレメーションの世界導入状況と日本のこれから

イギリスでは、まだ導入に向けた話し合いが続いていますが、導入を求める声は年々強まっています。その背景には、環境への配慮はもちろん、費用の負担や墓地の空きが足りないといった、これまでの土葬や火葬だけでは対応しきれない現実的な事情もあります。

こうした課題は、イギリスに限らず世界中の国々にも共通しており、同じような理由からウォータークレメーションを導入・検討する動きが各地で広がっています。

・アメリカ


すでに20以上の州でウォータークレメーションが合法化されており、州によっては専用の施設も実際に稼働しています。

・アイルランド


2023年に欧州で初めて公的ウォータークレメーション施設を開設し、注目を集めました。

・カナダ


サスカチュワン州、オンタリオ州、ケベック州、ニューファンドランド・ラブラドール州、そしてノースウェスト準州の5つで、すでに合法化されています。

・南アフリカ


2019年ごろから導入されており、ノーベル平和賞受賞者のデズモンド・ツツ大司教がこの方法で見送られたことでも話題になりました。

・オーストラリア


一部の州で制度整備が進められており、今後の本格導入に向けた動きが続いています。

・ニュージーランド


2025年に初の専用施設が稼働を開始し、国内でも本格的な利用が始まりつつあります。

・ベルギー


フランデレン地域で法的に承認されており、ヨーロッパでの普及拡大の動きのひとつとされています。オーストラリアやニュージーランドでも、法整備や施設導入に向けた検討が進められており、今後の普及が期待されています。

そして、日本でもウォータークレメーションという考え方が話題になる日が来るかもしれません。

少子高齢化やお墓の問題、そして終活の考え方が広まってきた今、ウォータークレメーションは、意外と身近な選択肢になる可能性があります。

火に還るのか、水に還るのか、土に還るのか。どの選択にも、その人らしい想いが込められているように感じます。「こうしなきゃいけない」ではなく、「自分で選べる」ということが、いちばん大切ではないでしょうか。

まとめまとめ

1.イギリスで、新たな葬送方法としてウォータークレメーションが注目されている

2.ウォータークレメーションは、水とアルカリで遺体を分解し、環境への負担が少ない

3.ウォータークレメーションは賛否の声があるものの、新たな葬送の選択肢として社会全体で受け入れの是非が模索されている

4.ウォータークレメーションは、環境や費用、墓地不足といった課題への新たな選択肢として世界で広まりつつある

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