散骨に対する考え
「遺骨を自然界に撒き散らす、不法投棄と環境汚染はやめてください」
稀にこのような内容のメールが弊社に届くことがあります。
現代ではお墓の継承者不足や維持管理が困難という人が多くなってきました。そのような事情もあり「散骨」という葬送方法を選ぶ人も増えつつあります。
しかし散骨について詳しく知らない人も多く、思い違いが生まれることがあります。
「散骨は遺骨を捨てる行為」「散骨を行うことによって自然を汚すことになるのではないか」と考える人もいると思います。
今回はそのような散骨に関してのネガティブな思いを解消していきたいと思います。
散骨は遺骨の不法投棄に当たるのか
まず初めに、散骨を行うこと自体は違法ではありません。
現時点で散骨を規制する具体的な法律は存在しないため、法的な制裁を受けることもありません。
ただ、一部の地方自治体では、散骨を原則として禁止したり、散骨を行う場所を制限する条例が定められています。こちらは違反すると罰則があります。
関連記事:【散骨できない場所~条例規制やマナー~】
令和2年に厚生労働省が発表した【散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)】では「葬送のための行為であって、節度をもって行われる限りは問題ない」としています。
しかし、一部の人が「散骨は遺骨の不法投棄であり法律違反だ」と認識していることも事実です。
不法投棄と思ってしまう理由のひとつに「無縁遺骨の増加」が挙げられます。
たとえ血縁関係のある親族であっても、「故人とは疎遠で面識もない」「遺骨を引き取っても経済的な理由で納骨できない」などの理由から、遺骨の引き取りを断るケースがあります。
また遺骨を引き取ったとしても、「保管したくない」「処分したい」といって、駅のトイレやコインロッカーなどに置き去りにされたことがあり、これは実際に逮捕に至りました。公園に埋めるということもあったそうです。
遺骨の置き去りや、公共の場に埋めることについては、法律で次のように定められています。
“死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する”
刑法第190条
“埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない”
墓地・埋葬に関する法律第4条
遺骨が不要であったり、処分に困ったりした場合であっても、勝手に遺棄や埋葬をすると確かに法律違反となります。
このような事例もあり、散骨とは遺骨を海や森に捨てる不法投棄というイメージがついてしまったと思われます。
しかし、散骨は遺骨を捨てることでも置き去りにすることでもありません。
散骨は葬送の目的で節度を持って行われます。葬送の目的とは故人の死を尊重し、死を悼み、死後安らかに眠れるように願うことです。そのような目的で散骨することは、不法投棄とは言いません。
散骨とは、遺骨を捨てるのではなく「故人を弔うために撒く」という意思がある行為です。
そして、私たち散骨代行業者は「遺骨を捨ててきて欲しい」や「処分してほしい」というご要望にはお応えしていません。
捨てる、処分ということは、遺骨は単に廃棄物としか思っていないからです。
葬送の目的があってこその散骨なのです。
散骨は自然破壊・環境汚染になるのか
遺骨には「六価クロム」という有害物質が含まれているという話を聞いたことがあるかと思います。
その六価クロムが含まれている遺灰を散骨したら「自然破壊や環境汚染になるのではないかと不安になる」といった意見も少なくはありません。
確かに遺骨には六価クロムが含まれていることもあります。しかし六価クロムは、遺骨に必ず含まれているわけではありません。
正確には、環境基準値「土壌汚染対策法 0.05mg/L」を超える六価クロムが検出される事が稀にあるということです。
また遺骨に含まれていることがある六価クロムは、火葬をする際に棺桶を載せるステンレスの架台が、長期間(数十年単位)にわたって高温にさらされることによって発生し、遺骨に付着したものと言われています。
確かに業界内では、火葬場の残骨灰の中には六価クロムが含まれていることは知られていますが、実際には集塵灰の方に高濃度で含まれているそうです。
また、六価クロムは水に溶けやすい性質があるため、そこから海洋散骨は環境汚染に繋がるという考えが生まれたのかもしれません。
しかし、逆に水に溶けやすいので検査を行い易く、実際検査の際には水の中に遺骨を入れて調べます。そして万が一六価クロムが検出された際は、無害化処理を行います。
そのため散骨で遺灰を自然に還すことは、自然破壊でもなく環境汚染にもなりません。
自然破壊、環境汚染にならないように細心の注意を払って散骨を行っています。
これは日本に限らず、弊社が海外リゾート散骨を行っているフィリピンやフィンランド、オーストラリアでも同じことです。
散骨とは~自然へ還る故人への祈り
私たちが行っている散骨は、故人の遺灰を自然に還し、故人を偲ぶという葬送の目的があります。散骨は遺骨を捨ててくることでも、処分することでもありません。
もし遺骨を捨てようと思うのであれば、それは死体遺棄であり、不法投棄でもあります。
故人の冥福を祈りお見送りすること、それこそが散骨の儀式です。
また散骨をする者として、ここに生きる人間として、地球の環境を守ることは大切であると自覚してます。私たちは日々自然の恩恵を受けて生きています。また人間もその自然の一部です。それを誰が破壊しようと思うのでしょうか。
自然と生きる、自然に還る、そして自然を創ります。
私たちは故人を尊重し、地球の自然環境に配慮しながら散骨を行っております。