散骨できない場所~条例規制やマナー~

執筆者:Tomo

散骨できない場所~条例規制やマナー~

目次

散骨の適法性と節度

最近、需要が高まっている散骨。散骨は多くの場合、海や山などの自然豊かな環境で行われます。そして思い思いの場所で、自然と一つになることができるのが散骨の大きな魅力です。

散骨は【令和2年度に厚生労働省が発表した散骨事業者向けのガイドライン】では、
「葬送のための行為で節度をもって行われる限りは問題ない」と解釈され適法とされています。また散骨を行う場所についても記載されています。しかし明確にはされていません。
「あらかじめ特定した区域、海岸から一定の距離以上離れた海域であればどこでもいいの?」「しかもこれは散骨業者向けのガイドラインだし、個人で散骨する場合だったらもっと自由なのでは?」と思ってしまうかもしれません。少し曖昧で不安になりますよね。

そこで今回は、具体的に散骨をしてはいけないとされている場所について、さらに散骨する際の注意点も解説していきます。

散骨できない場所

・国や自治体の所有地


日本の土地の多くは、国や地方自治体の所有地であるため散骨できません。また散骨の許可をもらうのはほぼ不可能でしょう。

・他人の所有地


許可があれば散骨できますが、許可されないことが多いです。所有者の散骨に対する意識や理解によっても変わってくるので、所有者と相談してみるのが良いでしょう。

・観光地、総合レジャー施設(公共施設や公園など)


ディズニーランドやUSJ、故人が好きだったなじみのある公園や緑地など、思い出の場所に散骨したいと考えられる人も多くいます。しかし公共の施設は、運営会社に管理されているので許可なく散骨することはできません。勝手に散骨をすることで、そこに遺骨が撒かれているという風評被害が発生し、トラブルになる可能性があります。また観光地やレジャー施設は、多くの人が集まる場所でもあり、散骨に対する心理的な抵抗や今後のトラブルの防止のためにも、許可が下りるのは難しい場合が多いようです。

関連記事:【ディズニーランドでの散骨の実態

・湖、河川


川や湖などに流れる水は、生活用水として使われる水なので、基本的に散骨はできません。しかし近年、琵琶湖で散骨業者が散骨を行っているそうです。
現在琵琶湖での散骨を禁止する条例はありませんが、【湖沼水質保全特別措置法】に触れる可能性もあります。琵琶湖は生活用水として使われているので、良くは思わない近隣住民は多いことでしょう。そして琵琶湖で、これからさらに多くの散骨が行われるようになったら、裁判まで発展したり条例で規制される場合があるかもしれません。

・漁場、養殖場のある海域


漁業権が存在する海への散骨は、散骨による風評被害から漁業権を侵害されたとして、損害賠償を請求をされる可能性があります。
漁業権とは、「一定の水面で特定の漁業を排他的に営む権利」のことです。
漁業法】第143条では「漁業権又は漁業協同組合の組合員の漁業を営む権利を侵害した者は、二十万円以下の罰金に処する」とあります。岸の近くは漁業権範囲の可能性があるため、漁業権の及ばない場所を探しましょう。

・条例で禁止、規制されている地域


①北海道長沼町

平成17年3月【長沼町さわやか環境づくり条例
墓地以外の場所での散骨を禁止しています。
この長沼町の条例が、日本で最初の散骨を規制する条例となりました。

②長野県諏訪市

平成18年4月【諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例
散骨業者が散骨事業を行う場合には、市長への許可申請が必要となっています。

③北海道七飯町

平成18年【七飯町の葬法に関する要綱
散骨業者に対し、事業を行う場合の申請や、散骨してはいけない場所(公園や学校・病院・障がい者施設などから110m以上離れていること)などを定めています。

④北海道岩見沢市

平成19年【岩見沢市における散骨の適正化に関する条例
散骨業者が行う散骨を許可制にすると共に、散骨場以外の場所における散骨を原則として禁止しています。また個人で散骨をする場合も、市長に申請する必要があると定めています。

⑤埼玉県秩父市

平成20年【秩父市環境保全条例
環境保全の観点から、墓地以外での散骨は許可していません。
隣地所有者の同意や隣地境界から100メートル以上離れているなど、市長が定める一部例外もあるようですが、基本的には散骨を許可はしていないようです。

⑥静岡県御殿場市

平成21年【御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例
散骨業者に対して、その300m圏内の自治会に、散骨事業を行う旨の説明や許可を得る必要があると定めています。市長への申請や協議も必要とされています。

⑦埼玉県本庄市

平成22年【本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例
公衆衛生と公共の福祉を守るために、散骨業者向けに散骨場の設置に関する規定があります。

⑧宮城県松島町

平成22年【松島町環境美化の促進に関する条例
環境美化の促進のため「何人も、みだりに焼骨を散布してはならない」と散骨を禁止しています。

⑨神奈川県湯河原町

平成26年【湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例
公衆衛生の向上や、自然との調和がとれた快適な生活環境の確保のため、散骨場設置に関する規制があります。また隣地所有者の同意、住居地域との距離制限なども定められています。

⑩静岡県熱海市

平成27年【熱海市海洋散骨事業ガイドライン
熱海市内から10km離れた海域で行うことや、レジャー時期である夏の散骨を控えることが定められています。

⑪神奈川県箱根町

平成27年【箱根町散骨場の経営の許可等に関する条例
公衆衛生の向上や自然環境の調和のため、散骨事業を行う際は、事前に町長と散骨事業に関する相談を行わなければならないとしています。

⑫静岡県伊東市

平成27年【伊東市における海洋散骨に係る指針
伊東市内の陸地から6海里以内の海域で散骨しないことや、環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)をまかないことを要請しています。

⑬静岡県三島市

平成29年【三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例
公衆衛生の向上と市民の生活環境の確保のため、散骨業者に対して市長への事業許可申請や協議の必要性を定めています。

⑭愛媛県愛南町

平成30年【愛南町散骨事業等の適正化に関する条例
散骨場の設置や散骨に係る事業などが、町民の宗教的感情に適合し、公衆衛生や公共の福祉のもと適正に行われ、町民の生活環境を守るために、予め町長に必要な書類を申請し、許可を得なければならないと定められています。

⑮鹿児島県伊佐市

令和2年【伊佐市環境保全及び美化推進条例
「何人も、市長が別に定める場合を除き、焼骨を散布してはならない」とあります。

⑯熊本県南阿蘇村

令和2年【南阿蘇村環境美化条例
「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」とあります。

海と遠望

散骨する際の注意点

散骨をする際、場所だけではなく方法にも注意するところがあります。

陸地で散骨をした場合、その上から「土を被せる」ことは絶対に避けましょう。
撒いた遺骨の上から土をかけたり、逆に穴を掘って遺骨を埋めてしまうと、「埋葬」という扱いになってしまうため【墓地、埋葬等に関する法律】に違反してしまう可能性があります。第4条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」とあります。 このように墓埋法では、墓地以外での埋葬は禁止されているのです。

散骨する際には、必ず遺骨を粉末状にしてから土地の表面に撒きましょう。

また条例で禁止されていない地域で、近隣住民の同意を得た私有地である自宅で散骨はできますが、自宅であっても埋葬は違法となるため、埋葬とならないよう注意します。墓標となる木や石などの目印を設置することも違法になります。
また近隣住民への迷惑にならないよう、節度を持って散骨を行いましょう。

しかし将来的に自宅を売却する予定がある場合は、自宅での散骨はあまりお勧めはしません。後々、事故物件と同じような扱いになってしまう可能性があるからです。
不動産売買では、お客様に「出来る限り全てを説明する」必要があり、遺骨が撒かれたとなると買い手がつかなかったり資産価値が下がったりします。そのあたりも考慮して、自宅での散骨を行ったほうが良いかもしれません。

畑の芽

散骨とモラル~他人への配慮と社会への影響

現在、散骨に関する直接的な法律はありません。そのようなことから、「ここなら大丈夫かも?」と散骨場所を安易に判断したり、考えない人が増えるかもしれません。そして社会問題となり、散骨行為自体禁止される可能性も否定できません。

そうならないためにも、自身がそこに関わっていない第三者になった立場から、散骨場所が不快に思えるか、思えないかを考える必要もあると思います。その判断は自身のモラル次第でもあります。

曖昧で不確定なことが多いからこそ、他人との調和も必要なのかと感じます。
そしてマナーや条例を守って、故人や遺族が満足できる散骨が理想ではないでしょうか。気持ちよく故人をお見送りしたいものですよね。

まとめまとめ

1.ガイドラインには散骨を行う場所についても記載されてあるが明確にはされていない

2.他人の所有地に散骨する際や、条例で決められている場合には許可が必要

3.撒いた遺骨の上から土をかけてしまうと墓埋法違反になる

4.散骨場所に関してモラルを守り他人に対する配慮が大切

タグ

おすすめ記事

お問い合わせ

Contact

各種お問い合わせは「お問い合わせ・お申込みフォーム」よりお受付をしております。 どのような些細なことでも、お気兼ねなくお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ・お申込み

お問い合わせお問い合わせ・お申込みフォームへ

Contact