散骨や樹木葬の自然葬~お墓の新しい在り方
時代の変化と共に、お墓の在り方や、お墓に対する考え方が変わってきました。
「お墓の継承者がいない」「子供に維持管理の負担を掛けたくない」などの理由から、従来のような先祖代々のお墓に入る人が減りつつあります。それに伴い「墓じまい」をする人が増えてきています。
関連記事:【無縁墓になる前に墓じまいを考えてみませんか?】
そもそもお墓とは「遺骨や遺体を納める場所」のことを指します。
一般的に「墓=墓石」と思いがちですが、墓石だけがお墓ではありません。
お墓に墓石が使われるようになったのは、石が丈夫で風雨に耐えられるためと言われています。長い年月を経ても形が崩れず、子孫へと引き継ぐことができるシンボルとして、石が使われるようになったそうです。
しかし現在では様々な供養の仕方を選ぶことができます。
納骨堂や手元供養など、自分のスタイルに合った弔い方があります。
関連記事:【納骨堂~新たなお墓の選択肢~】
関連記事:【手元供養とは~メリットとデメリット・手元供養品の種類~】
また、近年最も関心が高まっているのが、お墓の継承や維持管理の負担のない、散骨や樹木葬といった「自然葬」であります。故人が自然に還り、供養として美しい海や森といった自然の中で、故人を偲ぶことができることでも人気があります。
関連記事:【森林散骨~フィンランドの森へ還る~】
関連記事:【樹木葬~新しい葬送方法~】
関連記事:【海外リゾート散骨の魅力~フィリピン・フィンランド・オーストラリアでの散骨と供養~】
関連記事:【海外リゾート散骨と海洋散骨の魅力】
そのような中で、先日ネットニュースに「許可のない自然葬に住民が憤り」と見出しの記事があったのです。
自然葬のトラブル事例
その自然葬トラブルは、町内の90%を山林が占める「三重県大台町」で起きていました。トラブルの火種として、木の根元に桶のようなものが置かれていて、表面には火葬された人の遺骨が露わになっていたそうです。これを発見した地元住民が憤りを覚え、「勝手に遺骨なんか置いてもらったら困る」「墓地の許可がない」 と声を挙げたのです。
しかも木の幹には、手書きの筆文字で12人の名前があちこちに書かれていたそうです。
住民から非難されるのも当然でしょう。それは無許可で行っていたからです。
日本では【墓地、埋葬等に関する法律】という法令があり、決められた場所以外に遺骨や遺体を埋葬することはできません。
遺骨を埋葬できるのは墓地と認定を受けているところに限定され、また墓地の経営には自治体の許可が必要と定められています。
そしてこの問題が明らかになったのは、2023年12月の町議会でした。
町議会は「町としては、取り扱い要領にのっとった正式な手続きをふんで、墓地としての許可をとるよう促していきたいと考えている」 との見解だったようです。
また2024年3月、三重県熊野市に大規模な樹木葬専用の墓地が完成しました。
そこは熊野市から、墓地の経営許可を正式に取得していています。
しかし、経営に関する許可を得るまでには約2年もかかったのです。
「間違いがあったら困るので、司法書士、行政書士、弁護士などに自治体と交渉してもらった。かなり大変でした」とのことでした。
三重県大台町の自然葬問題
樹木葬専用の墓地開設が、慎重に進められるのに対して、なぜ三重県大台町の山では、遺骨が置かれるようになったのでしょうか。その理由を登記簿で確認したところ「自然宗佛國寺」という宗教法人によるものだったのです。
記事によると、2006年に住職が、木材を使ったバイオマス発電などの事業を始めるために、過疎化が進む大台町の山を購入しました。そして遺骨の受け入れは、事業費の一部を賄うために始めたものでした。
「(墓地としての認識は)ないです。墓地埋葬法には、ひっかからない。申請は必要ないと三重県に言われた」語っていました。また遺骨は、上から土を被せていない、云わば「埋められた」状態ではないため、住職は「森のお墓」と銘打って遺骨を受け入れていて「墓地にはあたらない」と強調しました。
また住職は、担当者(当時)から「遺骨が地表にみえている状態は埋葬ではなく、法律が禁止していない散骨にあたり、私有地に散骨をしているという解釈をすれば、墓地として許可申請の必要がないと言われた」と主張していました。
しかし三重県に確認すると「20年近く前のことで、記録も残っていないため、そのようなやりとりがあったかの確認がとれない」とのことでした。
また厚生労働省は、「遺骨が土に埋まっていなければ墓地ではない」との見解を示し、「大台町の山は、遺骨を埋めていないから墓地ではない」と解釈しました。
日本での散骨の法整備~現状と未来への期待
先述した住職の主張に、大台町はとても苦慮しているそうです。2023年の町議会では、墓地としての申請を出すように求めていくとしていましたが、「県に判断を委ねたい」という意見もあったようです。
大台町長は「相手方との話し合いは続けて行く必要がありますが、三重県が権限を受け取ると言ってくれたら、それが一番かなと思います」と語っていました。
しかし遺骨が置かれた状態が、埋葬ではなく散骨だとしても「ルールが必要」と条例制定を訴える町議会議員もいます。実際に散骨に関する条例を定めている自治体もあります。
関連記事:【自分で散骨を行う際の手続きと注意するポイント】
関連記事:【散骨できない場所~条例規制やマナー~】
確かに日本国としては、現時点では散骨に関しての法令はありません。散骨に関しては、各種行政機関が実質的に適法として扱っています。
しかし2020年には厚生労働省から【散骨に関するガイドライン】が公表されています。
関連記事:【【散骨とは?】自然に還るための新しい供養の形と法律の関係】
ガイドラインでは「節度を持って散骨を行う限りは違法にならない」とされていますが、法令上問題がないからといって、何でもやって良いというわけではありません。
第三者が見ても、明らかに人の遺骨だとわかるような大きさのまま散骨をすることは、【刑法第190条「死体遺棄罪」】にあたり法律違反になってしまうのです。
死体損壊等
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。刑法第190条
遺骨を2mm以下の粉末状に砕いた状態「粉骨」であれば、遺骨を撒いても遺棄にはなりません。遺骨を粉骨後、節度を持って散骨すれば、それは「供養」となります。
関連記事:【散骨の手続きや粉骨について~流れやポイント~】
また、人の遺骨に嫌悪感を抱く人も少なくありません。
関連記事:【自分で散骨を行う際の手続きと注意するポイント】
関連記事:【ディズニーランドでの散骨の実態】
弔い方は人それぞれですが、周囲の人たちに配慮は必要なことです。
そしてこのような事態になってしまうことからも、ガイドラインだけでなく、法整備が進むことを期待します。