そもそも「散骨」って何?
皆さんは「散骨」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
大まかに言ってしまえば亡くなった人の遺骨を撒くことで自然に還す葬儀・供養の方法の1つなのですが、あまり聞き馴染みはないかもしれません。
人が亡くなった時には、
お通夜があり
お葬式があり
故人は火葬され
残された遺骨は骨壷に入れてお墓に埋めて供養する。
一般的に、葬祭は↑このような流れで執り行われますが、実は火葬された後の遺骨をどのように供養するのかというのは遺族が自由に決めることができるのです。
遺骨の供養方法にどのようなものがあるのかはこちらの記事でも簡単にお話をしていますが、散骨もその選択肢の一つです。
散骨は多くの場合、海や山などの自然豊かな環境で行われます。
故人が生前愛していた故郷、あるいは生涯憧れ続けていたが遂には訪れることができなかった憧憬の地。
思い思いの場所で、自然と一つになることができるのが散骨の大きな魅力の一つです。
しかし、伝統的な供養の方法であるお墓とは違い、散骨は比較的新しく生まれた供養の方法です。
近年では少しずつ散骨に関する法律やガイドラインが整備されてきましたが、「何をどのようにどこまでやって良いのか」については曖昧な部分も多いのが実情です。
また、遺骨の供養は非常にデリケートな事柄なので、仮に法令上問題のないからといってなんでもやって良いというわけではありません。
大切の故人の供養であるからこそ、正しい知識を身につけて無用なトラブルを避けるようにしましょう。
遺骨を撒くって違法じゃないの?
通常、散骨を行う際には火葬後の遺骨を粉骨し、概ね2mm以下程度の砂状に加工します。
そのように加工した状態の遺骨を自然環境に撒くのが散骨です。
そのように聞くと、
「詳しいことはよくわからないけれど、それって死体遺棄......? 的な法律に引っかからないの?」
と、このように感じてしまう感覚はとてもよくわかります。
しかし結論から言ってしまうと、遺骨を撒くという行為自体は特に法令で禁じられていません●死体損壊等
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
少しショッキングな内容を載せてしまいましたが、法律上はこのように定義されています。
「粉骨」や「散骨」はこれらに抵触しそうにも思えますが、、、実は問題ありません。
少し砕けた表現で言ってしまうと
この法律はあくまで一般的な宗教的感情を守ることが目的のものだから、それ(散骨)が葬送のための行為であって、節度をもって行われる限りは問題ない
と解釈されています。
じゃあ、その「節度を持って」という曖昧な部分はどうなんだという指摘もありそうですが、散骨に関しては各種行政機関が実質的に適法として扱っています。
●東京都保健医療局HPのQ&A
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo//eisei/bochitou/ryuuijikou.html
●令和2年度に厚生労働省が発表した散骨事業者向けのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000763737.pdf
散骨はどこでも好きな場所でできる?
散骨自体が違法でないことは前の章でお話ししましたが、散骨をする場所についてはどうでしょうか?
山・陸地での散骨
山・陸地での散骨は非常にハードルが高いです。
多くの場合、山を所有しているのは他人か国です。
他人の所有地を利用するためには民法上土地所有者の承諾が必要になりますが、現実的にはかなり難しいと思われます。
また、個人で山を所有している場合でも一筋縄ではいきません。
散骨可能な場所は自治体の条例で禁止されている場合があります。
●例:長沼町さわやか環境づくり条例
https://www1.g-reiki.net/maoi.naganuma/reiki_honbun/a091RG00000348.html#e000000147
第11条に「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」と定められています。
山を所有している散骨事業者に散骨代行を依頼するということは可能ですが、個人での散骨はかなり難しいと思われます。
海での散骨
海での散骨は法律や条例で制限をされていません。
しかし、先のトピックでも紹介をしましたが、散骨は
「それが葬送のための行為で節度をもって行われる限りは問題ない」
という範囲の中で適法と解釈されます。
少しイメージをしてみてほしいのですが、例えば家族連れや観光客が賑わうビーチで堂々と遺骨を撒き散らしている人がいたらどうでしょう?
周囲への配慮があまりにも欠けていますし、とても節度を守っているとは言い難いですよね。
また、自治体によってガイドラインという形で海洋散骨の指針を示している場合もあります。
●伊東市における海洋散骨に係る指針
https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/10/271225kaiyousannkotusisinn.pdf
ガイドラインの中でも陸地から離れた海域で散骨をすることを要請しています。
海洋散骨を行う場合は条例やガイドラインの有無に関わらず、ボート等で沖まで出るのが望ましいと言えるでしょう。
いずれの場所で散骨を行う場合でも各自治体への事前確認は必須と言えます。
確認などが難しいと感じる場合は、国内の信頼できる散骨代行業者を頼ってみるのも一つの手段かと思います。
大切な人のエンディングを彩るために
記事の冒頭でも少し触れましたが、散骨はまだまだ新しい供養の形です。
これから散骨について多くの議論が起こり、法が整備され、できることとできないことの境界が今よりももっとハッキリとしてくるでしょう。
しかし、今のように曖昧で不確定なことが多いからこそ、故人のことを想いどのような供養が出来るのかを一生懸命考えることが出来るのだと思います。
どのような形であれ、真に大切な人のことを考えた供養であればそれはきっと素晴らしいものなのです。
※各種法令の調査は以下の体制で執り行っております
調査主体:合同会社KOKEHSI Arts
調査協力:クロス・マーケティング