遺影とは
葬儀の際、故人の写真が飾られているのは見たことがあると思います。
そのような写真のことを「遺影」と言います。
遺影は一般的に葬儀の際の祭壇に飾られます。そして葬儀参列者が、故人の写真を眺めながら昔を思い出したり偲んだり、また焼香の際に心の中で最後の言葉をかけたりする目的があります。
また個人的な感情から遺影を飾らないこともあります。遺影を必ず飾らなければならないという決まりはないので、各々で判断します。そもそも遺影を飾ること自体が、明治時代以降に誕生した比較的新しい風習であり、宗教上の意味も特にないとされています。
また故人を偲ぶために遺影を自宅に飾っておきたいと思う人もいるでしょう。稀に仏壇の真上に遺影を飾っている人がいますが、仏壇の中は浄土の世界を表しているため、基本的には仏壇の上には、遺影に限らず何も飾らないことが良いそうです。
そこで今回は、「遺影を選ぶ際のポイント」や、また終活としての「生前に遺影を撮影するメリット」などをご紹介していきます。
遺影にする写真を選ぶ際のポイント
・なるべく亡くなった年齢に近い写真
故人の年齢になるべく近い写真を選ぶことにより、この年まで生きてこられたという、故人の歴史や思い出などを振り返るきっかけにもなります。またその年齢まで生きてきた証にもなります。
そして写真は1~5年、長くても10年以内に撮影されたものが妥当とされています。高齢で亡くなっているのにも関わらず、遺影があまりにも若い頃の写真であったら違和感があることでしょう。そもそも、誰だかわからないなんてことになるかもしれません。しかし、長期間入院生活を送っていたり、病気が長く続いていたような場合には、亡くなる少し前の闘病中の時の写真を選ぶよりも、少しでも病状が良い時に撮った写真や、病気になる前に撮った元気な時の写真などを選ぶ方が良いでしょう。
・故人らしい表情の写真
葬儀で祭壇の中央に飾られている遺影は、参列者全員が見ます。故人の人柄や生き様を表している大事な写真になります。
昔は白黒の遺影で無表情のものが多かったですが、現在はカラー写真になり、笑顔の遺影であっても何も問題はありません。写真を選ぶ際には、まず表情が良い写真を何枚か選び、その中からより良い写真を選ぶようにしていきましょう。
比較的笑顔であることの多い旅行先での記念写真や、記念日などに家族と一緒に撮影した写真などの中から選ぶと良いかもしれません。
・背景に人や物が写りこんでいない写真
背景に全く無関係な人や不要な物が写りこんでいない写真を選びましょう。ただ最近は背景を加工することが可能です。「背景に写りこんだ人や物を消す」「背景を思い出の風景に差し替える」「複数の人が写っている写真から故人だけを抜き出す」など、さまざまな加工ができるため、遺影に使いたい写真がある場合、フォトスタジオや葬儀会社に相談してみると良いでしょう。
・カメラ目線の写真
故人の目を見つめて、対話しているような気持ちになれるような写真を選びます。
参列者が遺影を見ることによって、「最後にお話をすることが出来た」という気持ちにもなるのではないでしょうか。
終活~生前遺影写真の撮影
最近では「終活」の一環として、生前に遺影の写真を撮影する人が増えています。
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終活とは自身の死を意識しながら、残された人生を前向きに精一杯生きようとする活動です。そして人生の最期を迎えるにあたって、色々と整えておきたいものですよね。
生前に遺影写真を撮っておくメリットとして、以下のようなことが挙げられます。
・遺族が遺影に悩まなくて済む
故人が写真嫌いだったのであれば、ほとんど映った写真がないこともあり得ます。また故人が小さく映っている写真を引き伸ばして、ぼやけた写真が遺影となったなんて例もあるそうです。
・自分が納得できる写真を遺影にできる
たくさんの人が見つめる遺影写真。最期に見てもらう写真は、自分らしい素敵な1枚を自分自身で選びたいですね。
・プロのカメラマンに撮ってもらうことで記念になる
人生最高の1枚の写真と考えると、プロのカメラマンに依頼し、撮影スタジオで写真を撮ることに憧れを感じるかもしれません。またそれは人生の記念でもあります。
また生前遺影写真を撮るタイミングは自由に決めることができます。いつまで生きるかわからないので、ベストなタイミングは特にありません。しかし、今撮っておきたいと思い立った時や、結婚記念日や誕生日などに合わせて撮るのも良いでしょう。
そして遺影も時代と共に変化してきています。以前のような「いかにも遺影」というものから、「自然の中でリラックスした雰囲気」「ペットと一緒に」「思い出の地で」など多様化しています。女性の中には、「自分の素顔を残したい」ということからノーメイクで撮影、または逆にしっかりとメイクをする人もいます。自分らしさを十分にアピールするのが良いと思います。
遺影を見て故人を偲ぶ
遺影は、見るだけで故人の人柄を感じられたり、楽しかった思い出を蘇らせてくれたりするものです。「遺影」とは「影を遺す」という意義があります。何気なく友人が撮ってくれた写真も、急にスマホで撮られた写真も、全て生きた証である遺影と呼べるものだと思います。
また遺影見ることによって、自分や誰かの死を意識することは、自分やその人と向き合うことであり、自分の人生や関わる人との時間をより大切にすることに繋がるのではないでしょうか。
遺影とは、その人のさまざまな想いが詰まった人生そのものでもあります。
故人の姿を思い出し、自然と語りかけてしまう。遺族にとって遺影を眺める時間が、これからの心の拠り所となっていくことでしょう。