中尾彬さん死去~妻・池波志乃さんとの終活の取り組み
2024年5月16日、俳優の「中尾彬さん」が心不全のためお亡くなりになりました。
中尾彬さんといえば、ストールをねじって首に巻く「ねじねじ」がトレードマークでしたね。また最近ではドラマ「下町ロケット」、映画「翔んで埼玉」に出演されていました。
5月上旬にはCM撮影をするなど仕事も通常通りしていたそうなので、突然の死に皆さんも驚かれたことでしょう。
1978年に女優の池波志乃さんと結婚し、2018年には夫婦共著の「終活夫婦」が出版されたことで話題になりました。
二人が終活しようと思ったきっかけは、2006年に池波さんが、目や手足が動かせなくなる難病である「フィッシャー症候群」、2007年に中尾さんが筋肉の痛みなどを生じる「横紋筋融解症」という大病を患い、大変な思いをしてきたことでした。中尾さんは「私と妻、二人が同時に病気になったことがあり、そろそろ色々なことを考えないといけない年齢になって、、、じゃあ大きい物から少しずつ片づけていこう」と語っていました。
中尾さん夫妻の終活の内容として、千葉のアトリエや沖縄のマンションを手放したり、自分たちが入るためのオリジナルのお墓を用意しました。さらに人間関係の整理も行い、関わる人は役者といった同者業ではなく、医者やお店の人などといった、自分たちにはない発想をしている人との関係を大切にしていたとも語っていました。またトレードマークのねじねじストールも、400本あったうちの半分は処分したそうです。
このように夫婦で終活をすることで、どちらかが亡くなった際に慌てることがなかったり、負担が軽減できたり、またこれからの夫婦生活にも良い影響をもたらすことでしょう。また中尾さん夫妻のように子供がいない場合、ひとりでの老後や死後の不安を解消するためにも終活に取り組む必要があります。夫婦でしっかりと話し合い、必要な対策をしておくことが大切です。
子供のいない夫婦の終活~生前整理、相続対策や遺言書、お墓について
子供のいない夫婦にとって、老後や死後の不安は尽きません。またどちらかが亡くなった後のことを考えると、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。しかし、しっかりと終活に取り組めば、夫婦の安心で快適な暮らしを維持することができます。では子供のいない夫婦の終活では何を行えば良いのでしょうか。解説していきます。
・持ち物や財産の整理(生前整理)
夫婦のどちらかが亡くなってしまうと、残された配偶者がひとりで荷物の整理をしなくてはなりません。思い出の品を処分するのは、精神的に辛いものです。
また、預貯金や不動産、保険などといった二人の財産を整理する作業も配偶者に委ねられます。特に名義変更の手続きなどは煩雑なので、専門家のサポートを受けることをおすすめします。そして日頃から不用品を処分したり、所有財産について少しずつ整理を始めておくと、万が一の際の負担を最小限に抑えられるでしょう。
・相続対策と遺言書の作成
子供のいない夫婦は、配偶者に財産を引き継ぐための相続対策が必要です。法定相続分に従うと、大半の遺産を配偶者に残したくても、本人に両親や兄弟姉妹がいた場合では、そちらに相続が発生する可能性があります。そこで遺言書を作成しておくことが重要になってきます。
遺言書がない場合、被相続人の財産は法定相続分に従って配偶者と親族に分配されます。その際、相続人全員の合意が得られなければ、預貯金の解約や不動産の名義変更などが一切できなくなるのです。
一方、遺言書があれば、基本的には遺言の内容に沿って財産分与が行われます。要するに、配偶者が他の親族の同意を得ることなく遺産を受け継ぐことができます。
万が一の際に備え、確実に法的効力を持たせる「公正証書」による遺言書を作成しておくようにしましょう。また遺言書がなく相続人もいなかったため、財産が国のものになってしまったケースもあります。
しかし、夫婦の遺言を一つの書面にまとめて記載する「夫婦共同遺言」は禁止されています。二人以上が同じ書面で遺言書を作成することはできません。
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
そのため、夫婦で遺言書を残す場合は、夫用と妻用の二つに分けて、それぞれ個別に作成する必要があります。一つの遺言書に二人分の記載をすると、その遺言書は無効になってしまうので注意しましょう。また遺言書の内容を確実に実行するための「遺言執行者」を指名しておくことも大切です。
以下の記事でも、生前整理、遺言書の書き方や相続トラブルの対策を解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
関連記事:【終活を始めよう~遺言書とエンディングノートの作成~】
関連記事:【終活での生前整理~財産目録や遺言書を作成して相続トラブルを防止~】
・葬儀やお墓の問題
中尾さんは東京の谷中の寺院に、自らデザインしたお墓を建てました。3つの墓石が鏡餅のように折り重なって積まれていて、池波さんの母方の実家、池波さんの両親、そして中尾家をイメージして造られたそうです。そしてお墓の下には直筆で「無」という文字が書かれています。それは「死んだ人は『無』なんだから」という中尾さんの考えだそうです。
このように、生前に自分が永眠する場所を決めておくことで、配偶者をはじめ周囲の人たちにとっても負担を軽減できます。池波さんは「万が一の際に、お墓に自分で這って入るわけにはいきません、また子供がいませんから結局誰かの手を煩わせることになるんです」と語っていました。自分たちの死後、どのようなかたちで供養されたいかを生前に決めておくことは大切です。
また突然配偶者が亡くなり、自分ではどうしようもできない、頼れる親族もいないという「おひとりさま」のケースもあります。そのような際のために「死後事務委任契約」を結んでおくことも重要になります。死後事務委任契約とは「自分の死後に行わなければならない手続きを第三者に委任する契約」のことです。
特に子供のいない夫婦の場合では身寄りのない人も多いため、信頼できる専門家や業者と契約を交わしておくことをおすすめします。万が一の際に備えて、死後の手続きの代行を依頼できる体制を整えておきましょう。
ちなみに弊社では身寄りのない人の場合での「散骨代行の死後事務委任契約」を承っております。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【自分の散骨代行は予約できる?終活から考える散骨の死後事務委任契約】
関連記事:【孤独・孤立死を防ぐために~終活としてエンディングノートの活用~】
関連記事:【死後事務委任契約に関するトラブルと対策】
中尾彬さんのように終活している芸能人
今回は中尾彬さんが亡くなり、また夫婦で終活していたことも明らかになりましたが、同じ芸能人の中でも終活している人はたくさんいます。
・いとうあさこさん
多くのバラエティ番組で活躍していますね。50歳を目前にしたときに終活を始めたそうです。一升瓶を持ちながら笑顔で遺影を撮影し「おちゃらけているのが一番泣けるだろう」と考えた結果だそうです。
関連記事:【遺影の選び方と終活としての生前遺影写真を撮るメリット】
また葬儀の際の出棺用の曲は、尾崎紀世彦さんの【また逢う日まで】を流してもらうと決めていたり、番組のロケでは親友の大久保佳代子さんとお墓を見に行ったこともありました。
・中田敦彦さん(オリエンタルラジオ)
テレビ番組「しくじり先生」の中で、終活をテーマに授業を行った事がありました。それをきっかけに、中田さんは実際に終活に取り組み「遺言書を書く」「葬儀を決める」「お墓を決める」という、人生の最期が訪れるまでにやっておくべきことがあると気づいたそうです。
・坂上忍さん
40代半ばくらいの時に「50歳までには終活を終わらせよう」と決め、7~8ヶ月くらいかけて資産の流れなどを全て決めたそうです。またテレビ番組「坂上どうぶつ王国」では、終活の一環として動物の保護活動をメインとした施設を完成させていました。
・加藤茶さん綾菜さん夫妻
2011年に45歳という年の差を超え結婚しました。当時は財産目当てとバッシングもありましたね。しかし今ではパーキンソン病を患った加藤茶さんのためにヘルパー実務者の資格を取得したり、健康に良いとされる料理を作ったり、snsでは仲睦まじい姿も見られます。
そして志村けんさんが亡くなったことをきっかけに、二人は終活を始めたそうです。加藤茶さんは志村さんが亡くなった際、食事が喉を通らなくなり体重が激減し、その姿を見た綾菜さんは「カトちゃんと当たり前のようにずっと一緒にいられると思っていたけど、絶対ではないんだと思い知った」と語っていました。
また葬儀について加藤茶さんは「僕が亡くなったら、最後まで芸人の加藤茶で笑わせたいから、ハゲづらをかぶせて、手も針金で固定して『カトちゃん、ペッ』の形にして、花火を打ち上げてくれ、お墓も銅像型にしてくれと」と明かしていたそうです。
これからの人生を安心して暮らせるように
子供のいない夫婦にとって、老後や配偶者との死別後の生活に大きな不安を感じると思います。しかし終活を行うことで、これらの不安を解消することができるでしょう。相続対策や遺言書の作成、お墓のことなどという終活で行うべきことを押さえておくことが重要です。
また近年では「子供がいない」「お墓の継承者がいない」ことにより、先祖代々のお墓を解体して撤去する「墓じまい」が増加しています。お墓を継ぐ人がいなくなると、お墓の維持管理費用が支払われずそのまま撤去されるか、そのまま放置されて無縁墓になってしまいます。
関連記事:【無縁墓になる前に墓じまいを考えてみませんか?】
子供がいない夫婦にとっては、お墓については悩ましい問題でもあるでしょう。
そのようなことからも、墓じまい後の遺骨を「散骨」というかたちで供養する人が年々増加してきているのです。散骨とは遺骨を粉骨し、海や森といった自然に還すことです。墓石のように手を合わせる決定的な墓標はありませんが、子供がいないことでのお墓の継承者問題は起きません。またお墓の費用管理費もかからず、誰かの負担になることもないでしょう。そして散骨することによって、思い出のある場所や自分が行ってみたかった国で最期を過ごすことができます。
終活という亡くなった後のことを事前に準備しておくことで、安心して人生を過ごすことができ、また万が一の際に周りに迷惑をかけることもなくなります。
子供のいない夫婦だからこそ、終活に取り組むことが大切なのです。
「二人だけだから特に心配ない」と思わずに、残された時間を夫婦で有意義に過ごすためにも、財産や物の整理から亡くなった後の手続きの準備まで、中尾さん夫妻のように人生の最期に必要なことを健在のうちにしておくことが重要です。
中尾さんは「終活という終わりの活動をしているわけだけど、やっぱり活動なんだよ。活動っていうのは生きていくためにやることであって、死に支度ではない。だったらどれだけ楽しくやれるかだ」と語っていました。気負わず、夫婦で仲良くゆっくり楽しく終活を行っていきましょう。