終活とは~人生の最期の準備
近年「終活」という「人生の最期に向けての活動」が社会の大きな流れとなっていて、「遺言書」や「エンディングノート」に関心を持つ人が増えています。
一方で「まだ元気だから必要ない」「死を意識したくない」という人も少なくありません。
しかし、自分自身のためはもちろん、家族や親族、周りの人などに負担や苦労をかけないことも終活の目的のひとつでもあります。
関連記事:【終活~最期に向けた散骨に対する想い~】
終活とは
・家族や親族の負担を減らすだけでなく、自分らしく生きられる
・死の不安を軽減できる
・今後の人生をより充実させるため
という大切な活動なのです。
今回はその終活のひとつでもある、遺言書とエンディングノートついて解説します。
遺言書とエンディングノートの違いと役割
遺言書とエンディングノートの大きな違いは、法的効力があるかないかです。
遺言書は、自分の財産を誰にどのように残したいか、また自分の遺志や想いを「確実に伝える」ための法的効力があるものです。
エンディングノートは、あくまでも家族や親族、遺産相続人に対する「お願い」であり法的効力がありません。
エンディングノートに「〇〇に全ての財産を残したい」と書いても、法的効力がないため〇〇以外の人が遺産を受け取ることになるかもしれません。
法的効力がある形で自分の遺志を残す場合には、エンディングノートとは別に遺言書を作成しておく必要があります。エンディングノートと遺言書は役割が違うため、遺言書がなければいくらエンディングノートに希望を書いていても、全て叶えられるとは言えないのです。
まずは遺言書にはどのような種類があるのか、何を書くべきなのかを解説します。
遺言書の種類
遺言書には何を書いても良いというわけではありません。
遺言書に書くことができるのは死後のことに関してのみで、主に遺産相続のことです。
そして遺言書の書き方は法律で決められています。
また遺言書には以下の「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3つの種類があります。
そして、それぞれの決まりに満たして書いていないと遺言書が無効になってしまうケースもあるので注意しましょう。
・自筆証書遺言
自筆で書く遺言書です。作成費用は掛からず手軽に書くことができます。
しかし自筆で書く以外にも「日付を正確に入れる」「押印をする」ことが必要です。また、遺言書を開封する際には、家庭裁判所での検認(遺言書が法的な要件を満たして署名され、執行されたと証明すること)を得なければなりません。
また形式上の不備で無効になるリスクがあります。
2020年に施行された【法務局における遺言書の保管等に関する法律】で、法務局における保管制度が新たに作られたため、自筆証書遺言が利用しやすくなったそうです。
自筆証書遺言の保管制度について、以下の法務省のHPもご覧になってみてください。
自筆証書遺言の保管制度:【https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html】
・公正証書遺言
先述の自筆証書遺言が自筆に対して、公正証書遺言は原則的に公証役場で作ります。2人以上の証人の立ち会いのもと、公証人がパソコンで作成します。そして遺言を残す人が、間違いがないかを確認して最後に署名と押印をします。
証人が必要な理由は「誰かに脅迫されて書かされているわけではないこと」「正常な判断能力が備わっているかどうか」などを確認するためです。
作成費用は、遺産の金額に応じて決まります。形式上の不備の心配をしなくてもいいのがメリットです。公正証書遺言は公証人に依頼するため、費用も時間もかかりますが、正式な遺言を残しておきたい人にとってはベストな方法といえるでしょう。
また公証役場で公正証書遺言を作成する際に必要な書類は、
・発行から3か月以内の印鑑登録証明書(印鑑登録をしていない場合は運転免許証やパスポート)
・遺言者の戸籍謄本
・遺言者と財産を譲る相続人の続柄が分かる戸籍謄本
・財産を相続人以外の人に譲る場合は、その人の住民票の写し
・不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
・固定資産税納税通知書、または固定資産評価証明書
・預貯金の通帳のコピー
・証人を知人に依頼する際や遺言執行者を指定する場合は、その人の名前、住所、生年月日、職業がわかるもの
とされています。
公証役場によっては、必要な書類が異なることもあります。公証役場で確認しましょう。
・秘密証書遺言
遺言の内容は明らかにせず、公証人と2人以上の証人に遺言書の存在を証明してもらいます。自筆証書遺言と同様、形式上の不備で無効になるリスクがあります。誰にも遺言書の内容を知られたくないという人向けです。しかし最近ではあまり用いられることのない遺言方法でもあります。
遺言書に書いておくこと
遺言書に書いておいたとしても、すべてが法的な効力が認められるわけではありません。そのため法的な効力が認められることを踏まえて書く内容を決めることが大切です。
法的な効力が認められるものの例として以下の内容があります。
・推定相続人の廃除
相続人から虐待や侮辱などをを受けたことを理由に、その人の相続権をなくす制度のことです。ただ、遺言書に書いておけば完全に相続権をなくすことができるわけではなく、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。しかしこのケースでは、裁判所も慎重に判断する傾向があり、認められることは多くはありません。
・ 相続分の指定
法定相続分とは異なる割合を指定できます。
遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる
民法第902条第1項
とあります。
また遺言書中に相続分の指定という言葉が使われていなくても、解釈によって相続分の指定と判断されることもあります。
関連記事:【終活での生前整理~財産目録や遺言書を作成して相続トラブルを防止~】
・遺産分割方法の指定
特定の財産を、特定の相続人に受け取らせることを指定します。遺言書がない、または遺言書で相続分の指定だけされている場合には、相続人は遺産分割の話し合いをする必要があります。そのため遺言書を書く際は遺産分割方法を指定した方がいいと思われます。
・遺贈
遺言によって財産を譲り渡すことです。相続人に限らず第三者に遺贈したり、公的法人に寄付することもできます。
・遺言執行者の指定
遺言の内容を実行する人を指定することができます。
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる
遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない
遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない
民法第1006条
しかし、遺言の執行にあたって法的な問題(遺留分など)がある場合や、相続人との直接のやり取りを避けたい場合は、弁護士や法律に詳しいの専門家などに依頼することをおすすめします。
・祭祀承継者の指定
お墓や仏壇などの祭祀財産の所有権を持つ人を指定できます。祭祀承継者を巡って親族で争いになる場合もあるので、予め指定しておきましょう。
自分の財産をどのように相続してほしいかについては、法的な効力のある遺言書に書いておきましょう。
関連記事:【お墓の継承者問題~祭祀継承者の選び方や手続き~】
また費用はかかっても、自分の遺志を実現できる内容の遺言書を作成することが大切です。
エンディングノートに書くべきこと
遺言書とは違い、エンディングノートには法的効力はありません。
法的効力がないので、それを実行する義務もありません。
一方、遺産に関することをまとめて書いておけば、家族や親族が遺産相続を考えるきっかけにもなり対策ができるかもしれません。
また遺言書とは違い、エンディングノートには作成する際のルールが特にありません。
病気や事故にあった場合の延命措置、これからの介護、葬儀やお墓のことなど、様々な内容が自由に書けます。
エンディングノートを書く目的は、残された家族や親族に対して自分の考えを伝えることや、残りの人生をより良いものにすることです。
しかしエンディングノートに何を書いたら良いのかわかない場合もあると思います。その場合は以下を参考にしてみてください。
・自分自身について
自分の歴史を書くイメージで、今までのことについて書いてみると良いでしょう。生年月日、学歴や職歴、趣味や特技、心に残っている出来事や思い出などです。自身の写真を貼っておくのも良いかもしれません。
・身の回りのこと
スマホやパソコンなどのログインID・パスワードを書いておきましょう。もしものときに、家族が解約の手続きをする際に役立ちます。
また、金融機関、運転免許証、パスポートなどのパスワードなどの情報をまとめておくのも良いでしょう。
関連記事:【エンディングノートで遺族をサポートしよう~故人のスマホ・サブスクの解約手続き~】
・介護や医療
判断能力が低下してしまった後にどのような介護を受けたいのか、重い病気になったら延命措置を望むのか、臓器提供の意思などを、具体的にメッセージを残しておくのが良いでしょう。少しでも家族や親族の負担を軽減することができます。
・葬儀全般
葬儀に関する詳細について、自分で決めた内容を書いてきましょう。どのような葬送方法を望むか」「お墓はどうするのか」などを決めておくと、家族や親族がスムーズに進めることができます。
・遺産について
現時点での状況を詳しく書いておきましょう。
今後の財産を想定し、相続税がかかるかどうかという観点でまとめてみるのも良いでしょう。また別に遺言書がある場合は、その旨も書きましょう。
・周囲へのメッセージ
家族や親族、友人、日頃お世話になっている人へ向けて、普段では伝えられない感謝の思いや、その人との大切な思い出なども書くことができます。
また自身が亡くなった時に、「葬儀に参列してほしい」「弔電だけでも欲しい」と希望していることがあれば書いておきましょう。
終活という未来への架け橋
終活のひとつであるエンディングノートとは、大切な人へのメッセージを書いたり、自分が亡くなった後の葬儀や相続のことを自由に書くことができるノートです。
遺言書とは違い、気軽に書くことができます。
終活という言葉は、それだけで聞くと「死ぬための準備」と思ってしまいがちです。
しかし終活の一環であるエンディングノートを書くことによって「自分の過去を振り返ることができる」「自分がこれからどのように生きていきたいか」「どのようなかたちで人生を終えたいか」など、自分自身のことが見えてくると思います。
また終活は「自分が死んだ後を考えること」とマイナスに捉えがちですが「今日からどんな人生を歩みたいか」と思い描くと、自分の人生の締めくくりについて考えてみたくなってきませんか?
関連記事:【終活旅行とは~人生の最期を考えながら楽しむ旅~】
「いい人生だったな」と思えるその時のためにも、今から終活を始めてみるのも良いかもしれないですね。