自治体も進める終活
近年「終活」という言葉は、世間に広く認知されてきています。しかし終活と聞くと「死の準備を行う活動」と捉え、少し後ろめたさを感じる人もいるかと思います。自分が死ぬことが前提なので、考えたくないと思うのも当然かもしれません。
しかし終活とは、死の準備というよりも、むしろ残りの人生をどのように生きるかを前向きに考え、今後の生活を豊かにするための取り組みでもあります。
また最近では、自治体が終活支援を行ったり、東京都では4月から終活の費用補助もしています。特に豊島区では終活支援を強化していて、2022年から終活情報の登録制度を始めました。神奈川県鎌倉市や横須賀市、愛知県大府市などでも行われています。
しかし終活といっても「何から始めていいのかわからない」と思いますよね。
そこで今回は、終活の第一歩、元気なうちに身辺をある程度片付けておく「生前整理」について解説していきます。自分が亡くなった後、財産や持ち物はどうなるのだろうと不安を抱えている人もいることでしょう。生前整理を行っておくことで得られるメリットや、その方法もご紹介します。
なぜ生前整理をするの?
「生前整理」とは、生きている間に自分の身の回りの物や財産を整理することです。
生前整理をすることで得られるメリットをいくつか挙げてみます。
・遺品整理の負担を減らせる
遺品整理とは、遺族が故人が残した物を整理し、故人の暮らしていた家や部屋をきれいにすることです。遺族は故人の葬儀や諸々の手続きなどで慌だしいことが多いのです。それに加え遺品整理もしなければならないことは、想像以上の負担になります。また遺品の数や量が多いほど、遺品整理の負担は増えます。
そのため生前整理をしておくことで、自分が亡くなった後、遺族に負担をかけずに済むでしょう。また物の整理や処分に関し、その決定を自分で行うことで、遺族が責任を負うことなくスムーズに事が進みます。
・今後の人生のため
生前整理によって身の回りの物を整理をしたり、不要な物を処分することで、物理的にも精神的にも快適に暮らせるようになるでしょう。また整理されていれば、必要な物を素早く見つけ出せるようになり、部屋の機能性が増しストレスが減り、心の余裕も生まれるでしょう。
また整理することは、自分の人生を思い返すきっかけになることがあります。自分の人生を振り返ることで、その後の人生に向けた活力や気づきが得られることもあるのです。それは生きる意欲にも繋がったり、これからの人生の新たな目標も見つかるかもしれません。
・相続トラブルを防止
生前整理をしておかなかったことで、後に相続トラブルの原因になる場合があります。
故人の財産を誰が何をどれくらい受け継ぐのかがわからなければ、相続人同士での争いも起こってしまいます。そして現金や株式、土地の権利書の所在が不明だと、相続人がそれらを見つけるのは困難です。自分にはどのような財産があるのか、借金はあるのかなどを把握し、保管場所や相続人を明確にしておきましょう。
そして自分の財産をまとめることで、現時点で処分できるものは何があるかを考えられます。使用頻度が低い不動産や車などを処分すれば、今後の資金が増えるでしょう。
生前整理の実践手順~財産目録や遺言書の作成
生前整理をするといっても、何からどう始めれば良いのでしょうか。
1.所有財産の整理と財産目録を作成する
まずは自分にはどのような財産があるのか把握します。
例えば
・預貯金
・借金
・株式や有価証券
・生命保険
・ゴルフやホテルの会員権
・家や土地の不動産
・骨董品
などが挙げられます。
そして、これらの現時点での金額を財産目録に記載していきます。財産目録とは、相続財産の内容が一覧でわかるようにまとめたものです。
また、必ず金融機関名や暗証番号、通帳とカードの保管場所なども記載しましょう。通帳を並べて写真を撮っておくのも良いでしょう。
財産目録作成の際には
・使っていない口座は解約する
・土地は地番まで書く
・所有する株は銘柄まで確認する
・生命保険は受取人も書く
などといったことにも注意しましょう。
そしてタンス預金の在処も、必ず記載しておくことも大事です。
2.把握した財産の相続を、遺言書に記載する
財産目録を作成したら、財産を誰に何をどれくらい相続するのかを明確にしていきます。そして相続割合や相続させたい資産などを記載した遺言書を作成しておきます。
遺言書は法的効力を持つ書類です。自筆で作成することもできますが、公証役場で公正証書にしておくことをおすすめします。正しく遺言書を作成することでトラブル防止になります。
記事:【終活を始めよう~遺言書とエンディングノートの作成~】
また相続税が発生する可能性があれば「生前贈与」という方法もあります。生前贈与には相続税にはない基礎控除という、一定額税金がかからない枠があるので税金対策になります。
3.エンディングノートの作成
相続財産以外で家族に伝えたいことや希望がある場合は、エンディングノートに記載すると良いでしょう。またエンディングノートは自由に何でも書けます。書いていくうちに、今後の人生をどう生きたいのかも整理できるのではないでしょうか。
4.デジタル資産の整理
スマホやパソコンに保存されているデータを整理します。
整理が必要なデジタルデータの例として
・写真や動画
・メール
・クレジットカードの情報
・SNSのアカウント情報
・インターネットサービスのアカウント
・連絡先
・サイトのログインIDやパスワード
・ネットバンクの情報
などが挙げられます。
また万が一のために、スマホやパソコンのパスワードやIDは家族と共有しておくか、エンディングノートに記載しておきましょう。デジタル資産の整理について、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
関連記事:【エンディングノートで遺族をサポートしよう~故人のスマホ・サブスクの解約手続き~】
5.不用品の整理と処分
壊れたまま放置している家具や家電、ボロボロになった服、もう読まない本などの不用品は処分しましょう。必要か不要かすぐに判断できない場合は、とりあえず保管しておきます。そして、一気にやってしまおうとすると、暮らしに支障が出たり、途中で挫折してしまう可能性もあります。部屋ごとに進めていきましょう。
また自分にとっては思い出深いものであっても、家族にとっては対応に困る場合があります。しかし無理に手放す必要はありませんので、自分の死後どのように扱ってほしいかを家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載しておきましょう。
終活を前向きに捉えてみよう
終活という、人生の最期に向かって活動することは、今は必要ないと後回しになったり、途中で辛くなってしまう場合もあります。
「介護のことは考えたくない」「相続を考えることは面倒」「葬儀やお墓は家族に任せる」という声もたくさん聞きますし、気が滅入ってしまうこともあるでしょう。
しかし、終活に取り組み、生前整理をしたことで自分自身の整理もつき、死に対する不安も解消されたという意見があります。
関連記事:【中尾彬さん夫妻に学ぶ終活~夫婦で終活をする際に必要な準備~】
また相続トラブルが発生し、家族や親族の仲が拗れてしまったり、憎みあう関係になる場合もあります。自分の死後に、そのようなことになるの悲しいものです。
生前に自分の財産を把握し、財産目録や遺言書を作成しておくことで、そのようなトラブルを防ぐことができます。
また葬儀やお墓なのことが白紙のままだと、遺族には決めるべきことが山積みになってしまい、負担が大きくなってしまいます。しかしエンディングノートに自分の希望することをすべて記載しておくことで、遺族はそれを見ながら葬儀などの段取りをすることができるので、遺族はとても助かります。
そして、終活というと一人で黙々と進めるものと思っている人もいるかもしれませんが、周囲にも相談してみましょう。家族や知人に相談することで、不安や悩みが解消されることがあります。弊社にもお気軽にお問い合わせください。
これからの人生を明るく過ごすために、また遺族の負担を減らすためにも、思い立ったその日から終活を始めてみることをおすすめします。