葬儀の引き出物の意味と変化~香典返しから即日返しへ
葬儀に参列してくださった方々へ、感謝の気持ちを形にするのが「引き出物」です。
昔は「香典返し」として、忌明けの時期にあらためて贈るのが一般的でしたが、最近では葬儀の日にそのままお渡しする「即日返し」が増えています。遺族のご負担を減らせること、参列された方にとっても持ち帰りやすいことが、その理由にあります。
核家族化や高齢化が進む中で、葬儀の規模は小さくなり、家族葬を選ぶ人も増えています。参列者が少ない場合は、一人ひとりに合わせて品を選ぶより、誰に渡しても気持ちよく受け取ってもらえる品を用意することが大切になります。こうした変化の中で、引き出物として選ばれるものも少しずつ変わってきています。
以前は高価な陶器や漆器などの記念品が多く見られましたが、今は食品のように形が残らないものや、日常生活で役立つ実用品が人気です。特にお菓子やタオルは、幅広い世代に受け入れられやすく、保存や持ち運びのしやすさから定番になっています。
定番の引き出物
・昔からの定番品
お茶や海苔などの乾物は、昔から定番の引き出物です。なかでもお茶は「一服して気持ちを落ち着ける」という意味があって、弔事には欠かせない品とされています。
また、静岡茶や宇治茶のように産地がはっきりしたものは、上質さが伝わるので安心して贈れます。
・お菓子のバリエーション
羊羹や最中といった和菓子に加えて、バウムクーヘンやクッキーなどの洋菓子も選ばれるようになっています。甘さ控えめで上品な和菓子はご年配の方に、洋菓子は若い世代にと、それぞれの好みに合わせて引き出物に取り入れられています。お菓子は日持ちするものが多いので、持ち帰ったあとに好きなタイミングで味わえるのもいいところです。
・保存が効く食品
佃煮、出汁パックといった保存が効く食品も定番です。日常的に使えるため無駄にならず、どの世代にも受け入れられやすいのが理由です。特に乾物類は常温で長期保存が可能なことから、季節を問わず安定して人気があります。最近ではパック詰めや個包装が充実しているため、保存や持ち運びのしやすさも支持される理由になっています。
・実用性の高いタオル類
タオルも引き出物には欠かせない存在です。
弔事では派手な色や柄は避けて、白やグレーといった落ち着いた色合いがよく選ばれます。最近は肌ざわりや吸水性を重視したものや、オーガニックコットンのように環境に配慮した素材のタオルも見かけるようになりました。

新しい引き出物~カタログギフトや宅配サービスの広がり
最近は昔からの定番に加えて、新しい形の引き出物も見られるようになっています。
代表的なのが「カタログギフト」で、参列者が自分の好きな品を選べる仕組みです。好みが分からないときにも使いやすく、雑貨から食品まで幅広く揃っているため、贈る側にとっても気兼ねなく用意できます。
また、インターネット注文や配送サービスを利用して、香典返しを後日宅配で届ける方法も増えてきました。参列者は手荷物を増やさずに済み、遠方から来る人にも負担がかかりません。
さらに、環境への配慮を意識した商品も注目されています。過剰包装を避けたり、リサイクル素材を使ったりする工夫は、受け取る人にとっても心地よく感じられます。こうした配慮に加えて、地元の特産品や老舗の品を取り入れる工夫もあります。土地ならではの味わいや歴史を感じられるため、参列者の記憶に残る引き出物になります。
一方で注意も必要です。食品を選ぶ場合は賞味期限を必ず確認し、日持ちしない生菓子は避けるのが無難です。また、宗教や地域の慣習によって適した品は変わるため、事前に葬儀社や専門店に相談しておくと安心できます。
葬儀の引き出物の選び方~感謝を伝えるために
葬儀の引き出物は、「参列してくれた方への感謝」を形にした贈り物です。だからこそ、誰に渡しても気持ちよく受け取ってもらえることと、贈る側の思いが伝わること、その両方を意識する必要があります。
食品やタオルといった定番はこれからも外せない一方で、カタログギフトや宅配サービスのような新しい形も広がっています。どちらを選んでも、受け取った方が負担を感じずに役立てられることが重要です。
最終的には「これなら相手に気持ちが届く」と自分で納得できるかどうかです。金額の相場やしきたりを意識しながら、実用性と気持ちを両立させれば、それが一番の引き出物になります。
時代が変わっても、「ありがとう」を伝えたいという想いは同じです。定番と新しい工夫をうまく取り入れながら、葬儀の場にふさわしい形を見つけていきましょう。






