知っていますか?散骨の手順と費用
故人の遺骨を自然に還す散骨ですが、一般的には人生で何回も経験することではありません。
そのため、故人の遺志に従って散骨をすることになった場合や、様々な理由から墓じまいをすることになった場合、あるいは自身の終活として散骨を希望するとき、具体的にどのような手順を踏めば良いのかはわからないのが普通でしょう。
「散骨をするのに特別な資格は必要なの?」
「自分で勝手に散骨をやって良いの?」
「専門の散骨代行業者に依頼する場合、費用はどれくらいかかるの?」
実際に散骨を行う場合には様々な疑問があると思いますので、特に費用の部分を中心に注意点などを解説していきます。
個人で散骨を行う場合の費用
まず、結論から言ってしまうと日本国内で散骨をするのに特別な資格は必要ありません。
散骨代行業者に依頼する場合、少なからず費用面での心配や大切な遺骨を預ける抵抗感などがあるものですので、ご自身で散骨を行うというのも選択肢の一つです。
散骨をする際の注意点や法律的な解説は以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にして見てください
記事:【散骨とは?】自然に還るための新しい供養の形と法律の関係
自身で散骨をする場合、費用面で考えなければいけないのは大きく2点です。
・粉骨をどのようにするか
・どこで散骨を行うか
粉骨にかかる費用や場所によって考えなければならないことを詳細に見ていきましょう。
粉骨にかかる費用【2~5万円】
粉骨とは、故人の焼骨(火葬された後の遺骨)を粉砕して、遺骨とわからない程度の大きさである概ね2mm以下程度に加工することを言います。
散骨代行を専門の業者に依頼する場合は粉骨の代金もプランに含まれていることがほとんどですが、個人で行う場合は粉骨も自分でやらなければなりません。
粉骨を行わず、遺骨をそのまま散骨した場合は死体遺棄になる場合があります
一般的には粉砕機のようなものを使って粉骨を行います、粉骨を行うためだけにこれを購入するのはあまり現実的ではないでしょう。また、自身で身内の粉骨を行うという行為自体に抵抗を感じられる方も少なくありませんので、粉骨代行業者などを利用するのが現実的かと思われます。
業者によってサポートの内容や金額は様々ですが、概ね2万円〜5万円といった費用感が相場のようです。
特に長年骨壷に入った状態の遺骨を、墓じまいのために墓から取り出して粉骨を行う場合には特別な洗浄等が必要になるため、しっかりと事前の見積もりをもらうように注意しましょう。
国内での海洋散骨費用(個人)【0~15万円 程度】
自身で国内の海洋散骨を行う場合、基本的に費用は発生しません。
ご自身で作業をするのですから当然ですね。
ただし、自治体によっては海洋散骨のできる場所を制限している場合があります。
例えば静岡県伊東市では、海洋散骨について以下のような指針を発表しています
●伊東市における海洋散骨に係る指針
https://www.city.ito.shizuoka.jp/material/files/group/10/271225kaiyousannkotusisinn.pdf
「伊東市内の陸地から6海里(約11.11㎞)以内の海域で散骨しないこと。」
と記載があります。
条例ではなくガイドラインなので特に罰則があるわけではないのですが、散骨におけるトラブルを避けるためにも遵守するべきものです。
陸地から大きく離れるためにはそれなりの船を用意する必要があり、その費用はどうしても必要になってしまいます。
また、特別な規制のない自治体においても家族連れなどが訪れるビーチで堂々と散骨を行うのはやはりマナー違反だと言わざるを得ないでしょう。多少なりとも沖合に出て人が少ないところで散骨を行うのが良いと思われます。
居住地の近くの海で問題なく散骨を行えるのであれば費用面の心配は必要ありませんが、ボートのチャーター代や遠征費が必要な場合は15万円程度は必要になると考えておく必要があるでしょう。
国内での山・森林散骨費用(個人)【※0円】
先に紹介した以下の記事でも解説をしていますが、個人で山・森林散骨を行うのは事実上かなり難しいでしょう。
記事:【散骨とは?】自然に還るための新しい供養の形と法律の関係
いかにも人気がありそうな富士山などは国有地ですので、入山はできても勝手に散骨を行うことは認められないでしょう。
自身で山を保有している場合でも、条例などの制限を受けていたり近隣住民とのトラブルになる可能性があります。
そのため、そもそも実施が困難であるという意味で費用を0円としています。
海外での海洋散骨費用(個人)【20~80万円 程度】
個人で海外に遺骨を持ち込み散骨を行うのは大変リスキーですが、不可能なことではありません。
どの国に行くのか、どれくらい滞在するのか、何人で行くのかなどなど......諸条件によって費用はかなり変動します。
費用がかかる項目としては概ね以下のとおりです。
・交通費(往復の飛行機や現地での移動)
・滞在費(宿泊費・食費など)
・現地でのボートチャーター費
・その他費用(パスポート発行、各種遠征用の装備購入など)
旅慣れている方ならば問題ありませんが、普段あまり海外旅行などに出かけない方の場合費用が余計に多くかかってきます。
また、海外地域における各種法律などをしっかりと調べておかないと思わぬトラブルに巻き込まれたり、場合によっては知らぬ間に犯罪行為を働いてしまうリスクもあります。
例えば、弊社でも散骨代行プランとしてご提案しているフィリピン散骨では、遺骨をフィリピンに持ち込むため必要書類を事前に準備しておく必要があります。
●フィリピン大使館公式HP
https://tokyo.philembassy.net/consular-section/services/miscellaneous/repatriation-of-ashes-to-the-philippines/
役所などで発行した各種書類をさらに外務省に持ち込みアポスティーユを取得する必要があります。
とてもではありませんが、個人で全ての手続きを調べて用意するのは難しいので各種代行サービスなどを利用することになると思います。
その場合、やはり数万円程度の費用が必要になります。
海外での山・森林散骨費用(個人)【20~80万円 程度】
海外で散骨を行う場合、海洋散骨を行う場合とそれほど大きく条件は変わりません。
ボートのチャーター費用などは必要ありませんが、一方で本格的な山や遠方にある森林に向かう場合は遠征費が余計にかかると思われます。
海外で散骨を行う場合は、海洋散骨なのか、山・森林散骨なのかよりも散骨を行う国や現地での滞在期間の方が費用面では大きくなってきます。
個人での散骨費用まとめ
個人で散骨を行う場合、概ねどのような費用が必要になるのかを説明してきましたが、まとめると以下のようになります。
国内 - 海洋散骨: 1.5~20万円
国内 - 山・森林散骨:実施困難
海外 - 海洋散骨: 22~85万円
海外 - 山・森林散骨:22~85万円
※それぞれ粉骨代行費用を含む
あくまで概算の費用感ではありますが、参考にしていただけたらと思います。
個人で散骨を行う場合、大切な遺骨を確実に自分の手で供養できるという点でとても素晴らしい選択だと思います。
しかし一方で各種法令の調査や準備にかかるコストが大きく、費用の面でもそれほど安くならない場合があると言えるでしょう。
散骨代行を利用する場合の費用
ここまで個人で散骨を行う場合の費用感を説明してきましたが、実は散骨を行う場合、代行業者を利用することが可能です。
個人で散骨を行う場合でも、実は費用面でそれほど安くならないケースがあることに加え、各種法令の調査などが必要になるため、確かに個人散骨のハードルは高いのが現状です。
そのような背景から散骨代行業者に依頼をするケースも多いのですが、その場合散骨に必要な費用はどの程度になるのでしょうか。
国内での海洋散骨費用(代行)【3~35万円 程度】
国内で海洋散骨の代行を依頼する場合は最安値で3万円程度から利用が可能です。
海洋散骨に限らず、散骨代行を依頼する場合「個別の供養か合同での供養か」によって費用が大きく変わってきます。
低価格帯の5~10万円程度の海洋散骨の場合は基本的に「合同葬」となります。
複数の遺骨を船に持ち込み、まとめて散骨・供養を行う方法です。
遺族の立ち合いなどは原則できず、後に散骨証明書などが送られてきます。
一方で個別での供養の場合、概ね20~35万円程度になることが多いです。
遺族など関係者だけで船を貸し切り、各種セレモニーを執り行い散骨を行います。
費用などを気にせずにしっかりと理想通りの散骨を行いたい場合は個別での代行プランを検討するのも良いかもしれません。
国内での山・森林散骨費用(代行)【3~20万円 程度】
個人では難しい国内での森林散骨ですが、山を所有している代行業者などを利用すれば実現も不可能ではありません。
海洋散骨の場合と同様に最低3万円程度から合同散骨を委託できますが、山の場合は遺族立ち合いでの個別散骨というのはあまり行われていません。
(遺族が揃って山に入るのは危険もありますので、難しい面があるのでしょう)
一方でお寺で保有している森林に散骨をするプランを提供している法人もあり、そちらでは遺族立ち合いでの個別散骨が可能のようです。
●真言宗豊山派青蓮山宝性寺のHP
また、「遺族の立ち会いはできないけれど、供養自体は個別に行います」という中間的なプランも存在するようです。
その場合の費用感は7万円程度が相場となり、船のチャーターが必要な海洋散骨に比べて全体的に低価格なプランとなっています。
海外での散骨費用(代行)【12~35万円 程度】
海外での散骨代行は、海洋散骨・森林散骨かを問わず11~35万円程度で行うことができます。
一番多い散骨先はハワイで、13万円程度から代行可能のようです。
同じくハワイで、現地での個別散骨に立ち会う場合は35万円程度で依頼可能ですが、「渡航費・滞在費」は含まれないため実質的には数十万程度追加の費用はかかるでしょう。
弊社でご提案していますフィリピン海洋散骨は12万円程度から、フィンランド海洋散骨・森林散骨であれば27万円程度からご利用をいただけます。
国内の散骨代行に比べるとやや費用が高額になりますが、個人で海外散骨を行うのに比べれば法令的な調査や現地への渡航費が不要なところがメリットと言えます。
散骨代行の費用まとめ
散骨代行を利用する場合、概ねどのような費用が必要になるのかを説明してきましたが、まとめると以下のようになります。
国内 - 海洋散骨: 3~35万円
国内 - 山・森林散骨: 3~20万円
海外 - 海洋・森林散骨:12~35万円
(現地で散骨に立ち会う場合、別途渡航費用)
個人で散骨をする場合に比べてもそれほど費用面での負担が大きくなるわけではない、というのが見て取れると思います。
一方で「大切な遺骨だからどうしても自分の手で弔いたい」という気持ちから、合同での散骨はあまり気が進まないという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は費用面での負担は大きくなりますが、個別の散骨代行プランを選択するのも良いかもしれません
相場費用を把握してトラブルを回避しましょう
散骨代行を何回も利用したことがある人というのはかなり少数派だと思います。
それを良いことに不正に費用を水増し請求したり、自治体で示されている指針を無視して散骨を行ったりする業者も少なからず存在しています。
明らかに相場よりも高い金額を請求された場合、また逆に極端な低価格を提示して散骨を勧められるなどされた場合は注意した方が無難です。
大まかな散骨代行費用の相場感を把握して、悪意のある事業者などに大切な遺骨を預けてしまわないよう気をつけましょう。