エンゼルケアの役割~手順・目的・費用まで~

執筆者:Tomo

エンゼルケアの役割~手順・目的・費用まで~

目次

故人を穏やかな姿で見送るために

大切な人が亡くなったとき、「できるだけきれいな姿で見送ってあげたい」と願うのは自然なことです。故人が少しでも生前に近い穏やかな表情でいられるよう、衛生面とあわせて見た目を整えることも、大切な見送りの一部です。

亡くなってから納棺までの間に、ご遺体を清潔にして身だしなみを整えるケアを「エンゼルケア」と呼びます。

現在は病院や施設で亡くなる方が多く、エンゼルケアも病棟で看護師が行うのが一般的です。そのため、ご家族がよく知らないまま終わっていたということも少なくありません。この記事では、エンゼルケアの目的や流れ、費用、そしてご家族が関われることをご紹介します。

エンゼルケアとは~目的と担い手

エンゼルケアとは、医療器具の取り外しや清拭、着替え、死化粧(エンゼルメイク)など、亡くなった方の身体を整えるケア全般を指す言葉です。かつては「死後処置」と呼ばれていましたが、ご家族への配慮も含めたケアとして、この呼び方が広がってきました。明確な定義や共通のマニュアルはなく、病院の方針やご家族の希望、宗教的な慣習などに合わせて行われます。

エンゼルケアには、主に次の3つの目的があります。

・故人の尊厳を守る


点滴やチューブを外し、身体をきれいにして身だしなみを整えることで、闘病の跡をできるだけ和らげ、その人らしい姿で見送れるようにします。

・衛生を保つ


時間がたつと、ご遺体には腐敗や体液の漏出などの変化が起こります。口腔ケアなどで衛生を保つことは、ご家族や葬儀スタッフを感染症から守ることにもつながります。

・ご家族の心を支える


長い闘病や事故で姿が変わってしまった場合でも、元気なころの面影に近づけることで、ご家族は落ち着いて最期のお別れができます。大切な人の死を受け入れていく手助けにもなります。

エンゼルケアを行うのに特別な資格はなく、病院では主に看護師が行います。自宅で亡くなった場合は訪問看護師や葬儀社のスタッフ、納棺師が行うこともあります。

エンゼルケアの一般的な流れ

内容や順番は病院や施設によって異なりますが、おおむね次のような流れで行われます。

1. 医療器具の取り外し


点滴やドレーンなどを医師や看護師が取り外し、必要に応じて傷口の手当てをします。心臓ペースメーカーなど電池を含む機器が体内にある場合は、火葬時に破裂する恐れがあるため、必ず葬儀社を通じて火葬場に申告しましょう。摘出が必要かどうかは火葬場の運用によって異なります。

2. 口腔ケア


あごは死後硬直が早く始まるため、口の中のケアは優先して行われます。歯ブラシやガーゼで汚れを落とし、臭いの発生を防ぎます。入れ歯は、口元の形を整えるために早めに装着することがあります。

なお、かつては鼻や口などに綿を詰める処置が一般的でしたが、体液の漏出を防ぐ効果に根拠が乏しいとされ、近年は行わない病院も増えています。必要に応じて専用のゼリーを使うこともあります。

3. 全身の清拭


温かいタオルなどで全身を拭き、清潔にします。ここからはご家族が一緒に行える場合もあります。「身体を拭いてあげたい」という希望があれば、看護師に伝えてみましょう。亡くなったあとの肌は乾燥しやすいため、拭いたあとは保湿します。

4. 着替え


病院が用意する浴衣のほか、故人が好きだった服を着せることもできます。着せたい服があれば、あらかじめ用意しておくと安心です。

5. 整髪と死化粧(エンゼルメイク)


髪を整え、乳液などで保湿したうえで化粧を施します。男性はひげを剃ります。以前は手を組ませたり顔に白い布をかけたりすることが多くありましたが、最近はこうした慣習はご家族の希望に合わせて行い、自然な姿に整える考え方が広がっています。

手をつなぐ家族

湯灤やエンバーミングとの違い

・湯灤(ゆかん)


湯灤は、納棺の前に故人の身体をお湯で洗い清める儀式です。エンゼルケアと同じく身体を清潔にしますが、「この世の穢れを清め、旅立ちの支度を整える」という儀式的な意味合いが強いのが特徴です。現在は葬儀社や専門業者が専用の浴槽を使って行い、ご家族は立ち会って見守るのが一般的です。

・エンバーミング


エンバーミングは、専門の技術者(エンバーマー)がご遺体に消毒・防腐・修復の処置を施し、長期間衛生的に保つための処置です。エンゼルケアが「身だしなみを整えるケア」であるのに対し、エンバーミングは「ご遺体そのものを保全・修復する処置」です。火葬まで日数がかかる場合や、海外から搬送する場合などに利用され、日本でも利用件数が増えています。

関連記事:【エンバーミングの普及と課題~利用件数の増加と技術者不足~】

エンバーミングのイメージ

エンゼルケアの費用と、ご家族にできること

エンゼルケアは医療行為ではないため医療保険の対象外で、料金は病院や葬儀社ごとに異なります。費用は数千円から数万円程度が目安とされています。気になる場合は、入院中や葬儀の相談時に確認しておくと安心です。

エンゼルケアは亡くなってすぐに行われるため、ご家族の希望を伝える時間は多くありません。次のようなことを、できれば事前に考えておきましょう。

・着せてあげたい服や、いつもの化粧品


故人が愛用していた化粧品を使うと、よりその人らしい表情に近づけられます。

・ケアに加わりたいかどうか


清拭や整髪など、ご家族が一緒に行えることもあります。感染症などの理由で難しい場合もあるので、まずは相談してみましょう。

・体内の医療機器の有無


ペースメーカーなどがある場合は、病院と葬儀社の両方に伝えておきましょう。

自分の手で身体を拭き、髪を整える時間は、故人に「ありがとう」を伝える最後の機会にもなります。エンゼルケアは、故人のためのケアであると同時に、残されたご家族の心を支えるグリーフケアでもあるのです。

関連記事:【グリーフケアとは~大切な人を亡くした悲しみに寄り添う~】

参考:
エンゼルケアの手順・注意点・ご家族との関わり方(看護roo!)
【エンゼルケアQ&A】最近は綿つめを行わない?(ナース専科)
火葬室使用上の注意(八王子市)

まとめまとめ

1.エンゼルケアとは、亡くなった方の身体を清潔にし、身だしなみを整えるケア全般のこと

2.目的は故人の尊厳を守る、衛生を保つ、ご家族の心を支えること

3.近年は綿詰めを行わない、慣習は家族の希望に合わせるなど、ケアの考え方が見直されている

4.湯灤は儀式的な意味合いが強い清め、エンバーミングはご遺体を保全・修復する専門的な処置

5.費用は数千円〜数万円が目安で、服や化粧品、ケアへの参加、ペースメーカーの有無などを事前に考えておくと安心

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