葬儀の意味とスタイル~国や宗教などによる違い
葬儀とは家族や友人、知人が故人の冥福を祈り、故人と最後のお別れをする儀式です。
そして、日本における一般的な葬儀には「故人の死を悼む」「死後安らかに眠れるように願う」「死を受け入れ気持ちを整理し、故人との別れを実感する」などの意味があります。そして、読経や弔辞、焼香などが行われます。
しかし、国や地域、文化や宗教によって葬儀の意味やスタイルは変わってきます。
例えば、キリスト教では死は悲しいことではなく「永遠の命の始まり」と考えられていて、祝福されることなのです。またインドネシアのタナトラジャでは葬儀で水牛を生贄にしたり、フィリピンでは賑やかな音楽を流しながら出棺します。
関連記事:【インドネシアのトラジャ族~葬儀やお墓・死生観について~】
関連記事:【フィリピンの葬儀~賑やかに故人を送り出す~】
そして今回は弊社の海外リゾート散骨エリアのひとつである「オーストラリア」の葬儀についてご紹介します。
オーストラリアは「多民族国家」であり、多様な文化や様々な宗教が信仰されています。
そのため、葬儀スタイルもそれぞれ異なってきます。
オーストラリアの葬儀~アボリジニの文化と伝統
美しい海に囲まれた自然豊かな国である「オーストラリア」。20もの世界遺産が登録されています。そして弊社の海外リゾート散骨エリアのひとつでもあります。
・オーストラリア散骨【https://sea-forest-ceremony.com/australia】
オーストラリアの伝統的な葬儀は、お通夜、葬儀、埋葬といったものが最も一般的です。しかし、多文化・宗教共生のオーストラリアでは、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教など様々な宗教が信仰されています。そしてその葬儀は、各宗教の様式のもとで行われます。
キリスト教では賛美歌、祈り、聖書の朗読などの伝統的な「教会儀式」、イスラム教の「ジャナーザの礼拝」、仏教の「御詠歌」、ヒンドゥー教の「火葬」など、様々な文化や宗教の葬儀スタイルに多様に対応しています。
またオーストラリアには、先住民族「アボリジニ」が住んでいます。
彼らは少なくとも4万年以上にも渡って、オーストラリア大陸に住み続けてきたとされています。そしてアボリジニの文化や伝統などは非常に多様であり、オーストラリア全土で様々な部族に分かれています。
そしてアボリジニにとって、葬儀はとても重要な儀式となっています。
また地域や部族によって慣習や伝統が異なります。
・オーストラリア北部(ヨルング族、ティウィ族、ララキア族など)
故人の魂が祖先の世界に行くと信じられています。葬儀は数週間にも渡ることもあるそうで、特定の木や水域が聖地とされ、そこで行われます。
また遺体を洗浄した後、伝統的な塗料や装飾品で故人を飾り立てることもあります。
そして歌ったり踊ったりして、故人を送り出します。
・中央オーストラリア(アランダ族、ピチャンチャチャラ族、アナング族など)
会葬者で故人の生涯について話したり、故人の魂が祖先の世界に導かれることを祈るために歌や踊りを披露します。また遺体を一度埋葬し、数ヶ月後に遺骨を取り出し、再埋葬します。これは故人の魂を浄化し、安らぎの地に送るためとされています。
・オーストラリア東部(ウォリマイ族、ブンジロン族、カミラロイ族など)
会葬者で故人の生涯を祝福します。歌ったり踊ったりして、故人の魂を次の世界に送られることを祈ります。またブンジロン族の葬儀では、遺体に植物や花が置かれることが多いそうです。
そして多くのアボリジニ部族には「Tjukurpa(ドリームタイム)」という宇宙の創造、自然現象、人間の行動に関する物語や教えを含む宗教、文化的な概念があります。
アボリジニにとっての葬儀は、Tjukurpaの教えに基づき「故人の魂を祖先の故郷に導く機会」となっているのです。
ウルル(エアーズロック)で散骨はできない
オーストラリアには世界遺産に登録されている「ウルル(エアーズロック)」があります。そして中央オーストラリア地域には「アナング族」と呼ばれるアボリジニ部族が住んでいて、ウルルとアナング族は宗教や文化、歴史的にとても深い関係があるのです。
ウルルは、アナング族のTjukurpaにおける物語の中心舞台になっていて、とても神聖な場所とされています。そして文化、歴史、精神的な遺産の象徴であり、日常生活や儀式、人々の絆に深く関わっています。
そのため、ウルルは観光地としてとても有名で人気のあった場所ですが、政府はアナング族の伝統を尊重し、2019年10月26日に登山禁止となりました。また稀にウルルで散骨を行っていた人もいたそうですが、言うまでもなくそれは最大のマナー違反です。
このようにオーストラリア全土では、アボリジニの文化や伝統が存在するため、散骨に関しても法律的なことはもちろん、様々なことで先住民族への配慮を考える必要があります。またウルルに限らず、自然公園の管理団体の規則で、「散骨はその土地に昔から住んでいた人物に限り許可される」といったことが定められている場合が多いのです。
オーストラリアの葬儀の特徴
オーストラリアの葬儀では、弔辞を読む際に故人に関する面白いエピソードを話す人がいるそうです。
関連記事:【明るいお葬式~笑顔で故人を見送る~】
その際は、葬儀であるからと深く考えずに、軽い気持ちで笑っても問題ないとされています。終始暗い表情でいる必要はないのです。
日本ではあまり見られない習慣なので、葬儀で笑顔を見せることに違和感を感じるかもしれません。しかしオーストラリアの葬儀は「悲しい」「寂しい」という雰囲気というより、会葬者全員が故人への心温かい気持ちを共有する場でもあるようです。
また日本における「喪服」に当たるものは存在しません。
しかし男性の場合ネイビー、グレー、または黒のビジネススーツに白い襟付きシャツ、控えめなネクタイを合わせた服装だったり、女性の場合シンプルなドレスやスカートとブラウスという服装が一般的とされています。基本的に控えめな服装が最適だそうです。
そして何よりも大事なのは清潔感と言われています。
またアボリジニの葬儀の際も、落ち着いた暗い色の服装が良いそうです。
そして「香典」に当たる習慣もありません。
また香典の代わりに渡さなければならないと言われているものも、特にないそうです。
旅立ちを祝うオーストラリアの葬儀
オーストラリアの伝統的な葬儀は、家族や友人、知人が集まり思い出を語り合い、心の整理をつけるものであります。また故人に別れを告げるだけのものでもあります。
そしてオーストラリアの葬儀の歴史は、もちろんアボリジニから始まりました。
アボリジニは「その人の人生を祝い、死を讃え、魂が次の旅に出られるように手助けする」ことを目的としています。
アボリジニと葬儀スタイルには違いがありますが、オーストラリアの伝統的な葬儀でも「別れの悲しみ」よりも「旅立ちを祝おう」ということを重要視しているのです。
悲しみの中にも、故人の人生を振り返り祝福する想いがあり、また「故人のために行う葬儀」でもあるのかもしれません。
そして故人が精一杯生きた人生を祝うという姿勢は、オーストラリアの葬儀全体に共通していると言えるでしょう。