葬儀のかたちは国や文化によってさまざま
葬儀は、家族や友人、知人が故人の冥福を祈り、最後のお別れをするための大切な儀式です。日本の一般的な葬儀には、故人の死を悼み、安らかな眠りを願い、残された人が別れを受け入れて気持ちを整理していく、といった意味があります。
ただ、葬儀の意味やスタイルは、国や地域、文化、宗教によって大きく変わります。インドネシアのタナトラジャでは水牛を捧げる盛大な葬儀が行われ、フィリピンではにぎやかな音楽とともに墓地へ向かう葬列が見られます。
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今回は、弊社の海外リゾート散骨エリアのひとつである「オーストラリア」の葬儀についてご紹介します。美しい海と雄大な自然に恵まれたオーストラリアには、2025年に登録された「ムルジュガの文化的景観」を含め、21件の世界遺産があります。
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多文化社会オーストラリアの葬儀
オーストラリアは世界中から移民を受け入れてきた多文化社会で、葬儀のスタイルも信仰や出身地によってさまざまです。
2021年の国勢調査では、キリスト教徒が43.9%で最も多い一方、「無宗教」と答えた人も38.9%にのぼり、キリスト教徒が初めて人口の半数を下回りました。イスラム教、ヒンドゥー教、仏教を信仰する人も増えており、教会での礼拝を中心とした葬儀のほか、それぞれの宗教の作法に沿った葬儀や、宗教色のない葬儀も広く行われています。
近年のオーストラリアの葬儀で特徴的なのは、故人の人生を振り返り、その歩みを称える「セレブレーション・オブ・ライフ(人生を祝う会)」という考え方です。弔辞の中で故人の楽しいエピソードが語られ、会場に笑いが起こることも珍しくありません。悲しみの中にも、故人への温かい思いを参列者みんなで分かち合う場になっているのです。
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日本の「喪服」にあたる決まった服装はありませんが、男性は紺やグレー、黒のスーツ、女性はシンプルなワンピースやブラウスとスカートなど、落ち着いた色合いの控えめな服装が一般的です。また、日本の「香典」のような習慣もありません。代わりに献花をしたり、遺族の希望に応じて慈善団体へ寄付をしたりすることがあります。
先住民族の弔い「ソーリー・ビジネス」
オーストラリアの弔いの文化を語るうえで欠かせないのが、先住民族であるアボリジナル・ピープル(アボリジニ)とトレス海峡諸島民の伝統です。彼らは少なくとも5万年以上にわたってこの大地で暮らしてきたとされ、数百もの言語集団ごとに独自の文化や慣習を受け継いでいます。
先住民族のコミュニティでは、誰かが亡くなったあとの服喪の期間や儀式をまとめて「ソーリー・ビジネス(Sorry Business)」と呼びます。服喪は数日から数週間、場合によっては数か月に及ぶこともあり、家族だけでなくコミュニティ全体が悲しみを分かち合います。ここでは、広く知られている慣習をいくつかご紹介します。
・スモーキング・セレモニー
植物を燃やした煙で場所や人を清める儀式で、故人の魂の旅立ちを助けるものとして、多くの地域で大切に行われています。
・故人の名前や写真を避ける
多くのコミュニティでは、服喪の期間中、故人の名前を口にしたり、写真や映像を見せたりすることを避けます。故人の魂の旅を妨げないための配慮とされ、代わりの呼び名が使われることもあります。オーストラリアのテレビ番組や博物館で、亡くなった先住民族の方の映像や名前が含まれることを事前に知らせる注意書きが見られるのは、このためです。
・地域ごとの葬送儀礼
北部準州のアーネムランドでは、故人の遺骨を美しい文様で彩った「中空の丸太の棺(ホロー・ログ・コフィン)」に納める儀式が伝えられてきました。また、ティウィ諸島の人々には、彫刻を施した柱を墓の周りに立てる「プクマニ」と呼ばれる葬送儀礼があります。いずれも、故人の魂を無事に祖先の世界へ送り出すためのものとされています。
こうした弔いの根底には、大地や自然、祖先の物語が深く結びついた「ドリーミング(アナング族の言葉でチュクルパ)」という世界観があります。先住民族にとって葬儀は、故人の魂をその人が属する土地と祖先のもとへ還す、とても大切な営みなのです。

ウルル(エアーズロック)と散骨~聖地への敬意
オーストラリア中央部にそびえる世界遺産「ウルル(エアーズロック)」は、先住民族アナング族にとって、チュクルパの物語の舞台となる神聖な場所です。
かつては多くの観光客が岩に登っていましたが、アナング族の意思を尊重し、2019年10月26日をもって登山が禁止されました。なお、立ち入りそのものが禁止されたわけではなく、現在も周囲を歩くベースウォークなどで、ウルルの雄大な姿を間近に見ることができます。
一方、ウルルやその周辺で散骨を行うことは認められていないとされています。聖地に無断で遺灰をまくことは、法律やルールの問題である以前に、そこを大切に守ってきた人々の心を深く傷つける行為です。
オーストラリアでは、海での散骨は比較的自由に認められている一方、国立公園などの自然保護区では、管理当局への連絡や許可が必要とされるのが一般的です。オーストラリアで散骨を行う際には、法律やルールを守ることはもちろん、その土地に根づく先住民族の文化への敬意を忘れないことが大切です。
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旅立ちを祝うオーストラリアの弔い
多様な宗教や文化が共存するオーストラリアですが、その弔いには共通する思いがあるように感じられます。それは、別れを悲しむだけでなく、故人が生きた人生を称え、次の旅立ちを見送ろうという姿勢です。
数万年にわたり大地とともに生きてきた先住民族の弔いも、人生を祝うセレブレーション・オブ・ライフも、故人とその人生に敬意を払い、残された人たちが思いを分かち合う時間であることに変わりはありません。
悲しみの中にも、故人が精一杯生きた人生への感謝と祝福がある。そんなオーストラリアの弔いのあり方は、私たちが大切な人を見送るときにも、ひとつのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
参考:
Australian Bureau of Statistics「Cultural diversity: Census, 2021」
西オーストラリア州 DBCA「Murujuga Cultural Landscape World Heritage Area」
National Gallery of Australia「Burial Ceremonies」
Common Ground「Death and Sorry Business」
Legal123「Can You Scatter Ashes at an Australian Beach? (2026)」





