故人を明るく見送る葬儀
日本で葬儀と言えば「暗い」「厳粛」などのイメージを持つ人が多いかと思います。大切な人を失い最期のお別れをするのは悲しかったり、暗い気持ちになるものです。
しかし近年、死を悼む気持ちは同じでも、明るく故人をお見送りする「明るい葬儀」が増えてきているのです。
葬儀でただ悲しむだけではなく、故人の人生や一緒に過ごした時間を振り返り、笑顔で温かく送り出してあげるような葬儀にしたいと考える人もいます。また「明るい雰囲気の葬儀にして欲しい」と故人の遺志で行われることもあります。
実際に、先日お亡くなりになった電撃ネットワークの南部虎弾さんの葬儀では、クラッカーを鳴らすなど明るく華やかに行われていました。
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また弊社の散骨エリアであるフィリピンやインドネシアのトラジャ族も、明るく賑やかに故人を盛大に送ります。
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笑顔で明るくお見送りすることは、故人の最期に彩りをもたらすことでしょう。
世界の明るい葬儀~ガーナ・メキシコ・オーストラリア
先述したインドネシアのトラジャ族のように、世界には明るく葬儀を行っている国があります。
・ガーナ共和国
西アフリカにあるガーナ共和国の葬儀は、雰囲気が日本とは全く真逆です。葬儀会場全体には、陽気な音楽が響き渡り、その音楽に合わせ棺桶を担いだダンスが披露されるのです。華やかな伝統衣装を着て、笑顔で踊りを楽しみます。そのためのダンサーが招待されることもあるそうです。また棺桶は故人の人生を表現したデザインで、オーダーメイドで作られています。
youtube:【棺桶ダンス】
ガーナでは「死は終わり」ではなく「新たな生への始まり」と考えられているそうです。ガーナにとっての葬儀とは、故人の死は悲しむことではなく、故人の新たな人生への旅立ちをみんなで祝福するための儀式なのです。
・メキシコ
メキシコでは「死とは生の延長」「死は生の一部」と考えられているため、死とは永遠の別れではないとされています。そしてメキシコの葬儀は明るい雰囲気で行われます。
日本の葬儀のようなのしきたりや決まりは少なく、服装も基本的には自由です。最近ではジーンズといったカジュアルな格好の参列者もいるそうです。
また葬儀場にはお菓子やパンなどが用意されているカフェテリアがあり、参列者が故人との思い出を楽しく語り合ったりします。
そして明るく楽しく故人を送り出すために、楽器で「マリアッチ(Mariachi)」が演奏がされることがあります。マリアッチとはメキシコではお祭り、宴会、記念日などの際に親しまれている音楽です。
youtube:【マリアッチ】
このようにメキシコの葬儀は、人々が陽気に集い明るく行われます。
・オーストラリア
「故人の人生がどんなに素晴らしいものだったのか」「故人の人生を振り返り、旅立ちを祝おうという」という雰囲気で行われるそうです。
また遺族や友人たちが弔辞を読む際、故人に関する面白いエピソードを話す人もいます。明らかに笑わせようとさせている写真のスライドショーもあるそうです。そして葬儀会場が笑いに溢れることもあります。
葬儀の新スタイル
日本でも最近では、従来の形式にこだわらない自由で個性的な葬儀が生まれています。
・餅つき葬
参列者で「餅つき」をして故人を送り出します。
お餅が好きだった人が「自分の葬儀で餅つきをしてほしい」と依頼があったことから始まりました。またつき立てのお餅を食べることもできるそうです。
大きな掛け声と共に餅つきパフォーマンスを行うことで、人生大往生した故人を気持ちよく送り出すことができるかもしれません。
・坊主バンド葬
現職の僧侶たちがお経をロックに乗せて歌って故人を送り出します。
バンド演奏を始めたきっかけは「宗教と音楽は密接な関係があり、お経には声明と言って音楽的な要素が入っていて、それを人々に共感や理解をしてもらうため」と言っていました。「般若心経」を現代語に訳して歌っているそうです。
・ハワイアン葬
葬儀でハワイアンを生演奏して故人を送り出します。ハワイアンには別れの曲はないので、ラブソングである「アロハ・オエ」や「バリー・シェルズ」、望郷を歌った「ブルー・ハワイ」などを演奏するそうです。
・オーダーメイドの死装束
死装束とは故人に着せてあげる衣装のことです。生前の穢れをなくし、清らかな状態で浄土への旅立ちを願うためのものです。
そして最近では「エンディングドレス」と呼ばれるものができました。死装束をオーダーメイドするのです。「葬儀は人生での大イベントであり、ウエディングドレスと同じように故人の好きなドレスを着させてあげたい」との想いから作られたそうです。
参列者がじっくり見入ってしまい出棺が遅れてしまいそうですね。
葬儀の新しい形
時代やライフスタイルの変化に伴い、葬儀に対する考え方が少しずつ変化してきています。また明るく華やかな雰囲気の葬儀会場や、笑顔で故人の思い出話をするアットホームな葬儀も増えています。
一方で「明るく葬儀を行うことは不謹慎」と感じる人もいるかもしれません。
日本人にとっては、死は生の終わりであり悲しいものであるという認識が少なからずあるでしょう。
しかしどんなに明るく楽しく賑やかな葬儀でも、そこに悲しみは必ず在ります。大切な人を亡くした悲しみは誰もが抱く感情です。そして悲しみを癒したり、前向きな気持ちになるためにも、明るく楽しく葬儀を行う意義があるのだと思います。
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また人はいつか必ず亡くなります。葬儀を「悲しむ場」「死を悼む場」としてだけではなく「人生を全うした故人を祝う場」として、最期に祝って楽しく終わっても良いのではないでしょうか。
お墓や供養方法も変化しつつあります。死への暗いイメージだけが増えていく従来の葬儀だけではなく「明日からも頑張って生きていこう」と思えるような葬儀の選択をしても良いと思います。