樹木葬が選ばれる背景と維持費にまつわる誤解
近年、樹木や草花に囲まれた埋葬方法として「樹木葬」が注目を集めています。石のお墓に比べるとシンプルで費用も抑えられ、環境にも優しいなどのイメージから選ぶ人が増えました。
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しかし、いざ契約して利用を始めると、「思っていたよりお金がかかる」と負担を感じる人も少なくないのです。その理由は、「維持費」にあります。
パンフレットに「永代供養付き」と書かれていると、「もうこれ以上お金はかからないんだ」と思ってしまいがちです。ところが、実際には運営の形や仕組みによって費用のかかり方が大きく変わります。年ごとに管理料を支払う必要がある霊園もあれば、最初の契約時に将来分をまとめて前払いするケースもあります。さらに、法要の志納金や銘板への追加刻字など、契約書をよく見て初めて気づくような費用もあります。
つまり「維持費ゼロ」と表現されていても、全く支払いがないとは限りません。実際には「どんな名目で、どのタイミングで、どのくらいの金額が発生するのか」を細かく分けて確認する必要があります。
また、樹木葬には「屋外型」「里山型」「ガーデン型」「屋内型(納骨堂併設や自動収蔵式など)」といったタイプがあり、運営も公営・宗教法人・民営とさまざまです。タイプや運営方針によって、維持費の考え方や金額の幅も違ってきます。そのため、安さだけを重視すると、後に余計な費用が重なって後悔することもあります。
維持費に含まれる主な費用と樹木葬タイプ別の相場
まずは「維持費に含まれるもの」を知ることが大切です。具体的には、次のような費用があります。
・管理費
植栽の手入れや共用部の清掃、設備の維持などに使われます。屋外型なら0~1万円台、屋内型や都市部では1万~3万円程度が多く、「0円」と書かれていても初期費用に前払い分が含まれているケースがあります。
・供養行事の志納
お盆やお彼岸に合同法要を行う場合、参加のたびに数千円~数万円がかかることがあります。永代供養に含まれることもあれば、別扱いのこともあるので要確認です。
・銘板やプレートの費用
新規作成で1万~5万円、追刻で1万~3万円程度。屋外では劣化により交換が必要になり、2万~5万円ほどかかることもあります。
・追加納骨料
一区画に複数の遺骨を納める場合、2柱目以降は1柱あたり3万~10万円程度。追刻や法要と合わせて費用が重なることもあります。
・安置期間の更新料
「13年」「33年」などの個別安置期間が満了すると、合祀に移るのが一般的です。個別安置を延長する場合は10万~数十万円が必要になることがあります。
これらを組み合わせると、タイプごとの相場感は次のようになります。
・屋外、合祀中心型
初期費用:20~40万円台
年間管理費:0~1万円程度
・屋外、個別区画型
初期費用:30~70万円台
年間管理費:5000円~2万円程度
・屋内型
初期費用:80~150万円台
年間管理費:1~3万円程度
あくまで目安です。
大事なのは、初期費用と維持費を合わせた総額を、納骨人数に応じて考えることです。

樹木葬契約前に知っておきたい維持費の落とし穴と注意点
では、なぜ維持費で後悔する人が多いのでしょうか。そこにはいくつかの典型的な落とし穴があります。
まず「維持費ゼロ」という本当のところです。契約期間中は維持費がかからなくても、期間が終わると更新料が必要になる場合があります。パンフレットの表現だけで判断せず、契約書をきちんと確認しておくことが大切です。
次に気をつけたいのは、個別安置期間が終わったあとの対応です。合祀に移るときに銘板がどうなるのか、参拝方法がどう変わるのかを知らないと「思っていたのと違う」と感じる原因になります。
植栽についても注意が必要です。樹木葬の魅力は自然の美しさですが、木が枯れたり植え替えが必要になることもあります。そのときにかかる費用や補償の範囲を確認しておくと安心です。銘板やプレートも同じです。屋外では風雨や紫外線で劣化しやすいため、交換の費用や耐久性を事前に把握しておきましょう。
また、追加で納骨をするときは「納骨料」「追刻料」「法要の志納金」がまとめてかかることがあります。家族の人数を想定し、合計を試算しておくと後悔が少なくなります。
さらに、管理費を滞納したり住所変更を伝えていなかった場合の対応も重要です。延滞に対する猶予や公告の方法、最終的に合祀へ移される条件などは契約書で確認できます。
運営主体がどこかによっても費用や仕組みは変わります。公営は費用が抑えめで規約も明確です。一方で宗教法人は法要との結びつきが強く、志納を求められることがあります。民営はサービスの幅が広いため、費用にも差が出やすい傾向があります。
また施設のタイプによっても負担は変わり、屋内型は便利さがある反面、管理費が高めに設定される場合が多いです。
最後に、金額表記の「税込」と「税別」にも注意しましょう。墓地使用料は非課税でも、銘板の刻字や法要は課税されることがあります。見積書では必ず税込か税別かを確認しておくことが必要です。
総額を踏まえて樹木葬を選ぶための考え方
樹木葬を選ぶとき、最も大事なのは「維持費を含めた総額を時系列で把握すること」です。
1.家族構成と納骨数を想定する
単身か夫婦か、親子を含めるかを決め、追加納骨の上限や追刻費を最初に計算に入れます。
2.三つの時点で総額を出す
契約時、契約満了時、最終納骨後の三つの段階で、初期費用と維持費を合計します。
3.アクセスと参拝頻度を含めて考える
管理費が高めでも通いやすければ心理的負担が軽くなる場合があります。電車賃や移動時間も含めた「生活コスト」で判断します。
4.見積書は二種類もらう
初期費用のみの見積もりと、10年分程度の維持費を含めた総額見積もりの両方を依頼します。
5.現地で管理の状態を確認する
植栽の手入れ、通路の清掃、銘板の状態、掲示物の更新状況などをチェックすると、維持費の「質」が見えてきます。
6.将来の連絡体制を整える
代表者だけでなく家族の連絡先も登録しておくことで、未納や更新漏れを防げます。
実際の試算例を挙げると、タイプごとの総額はおおよそ次のようになります。
・屋外合祀型(単身)
初期費用:約25万円
法要費を含めると総額は約30万円前後
・屋外個別型(夫婦2柱)
初期費用:約50万円
納骨料や管理費を加えると、13年間で約78万円
・屋内型(夫婦2柱)
初期費用:約120万円
管理費などを含めると、13年間で約150万円前後
あくまで目安です。
樹木葬の維持費は「かかる・かからない」と単純に分けられるものではありません。契約内容や運営主体などによって費用のかかり方は大きく変わります。維持費は施設の管理や運営を支え、安心して供養を続けるために必要なお金です。
だからこそ、初期費用だけで選ぶのではなく、「総額」で比べることが大切です。費用の中身や契約内容を確認し、現地も見学しておけば、納得できる選択につながるでしょう。






