遺骨の信仰と供養

執筆者:Tomo

遺骨の信仰と供養

目次

日本人の遗骨の価値観

現在、人が亡くなると、遺体を火葬して遗骨を墓地に埋葬することが一般的です。
そしてその遗骨を守ることが「供養」に繋がると思っている人は多いのではないでしょうか。

【厚生労働省】によると、第二次世界大戦の激戦地であった硫黄島では、1968年から遗骨の収集を本格的に行うようになり、2011年からは年間約10億円かけて遗骨を探しています。遺族は「先祖のお墓に父の骨を収められればこれ以上の親孝行はない」と語っているそうです。2024年2月には27柱の遗骨が厚生労働省に引き渡され、さらに2026年3月には硫黄島から14柱、マリアナ諸島から57柱のご遗骨が帰還し、日本戦没者遗骨収集推進協会から厚生労働省へ引き渡されています。

また【日本遺族会】によると、フィリピンでの戦没者遗骨収集も行われていました。

そして遗骨を巡る所有権について争った判例もあります。確かに遗骨は故人の体の一部であることに間違いなく、人によっては故人の形見だったりします。

このように、日本人の遗骨に対する想いとはどのようなものなのでしょうか。

遗骨の原点とされているもの

仏教用語で「舎利(しゃり)」という言葉があります。舎利とは仏教の開祖である釈迦の遗骨のことを言います。舎利と呼ばれる釈迦の遗骨は信徒によって8等分された後、塔(ストゥーパ)に納められたとされています。

そして「日本書紀」によると救達天皇十三年(584年)に司馬達等が舎利を偶然発見し、その後蘇我馬子が塔を建てて納めたそうです。また推古三十一年(623年)には新羅から舎利が贈られ、大阪の四天王寺に納めた記録があるそうです。この辺りが日本における舎利(遗骨)信仰の始まりでしょう。

その後鏌倉時代に入ると、仏教の原点である釈迦に回帰しようという考えが盛んになりました。そのため舎利が尊崇されるようになり、舎利を安置する専用の容器が作られました。今でいう骨壺ですね。そして舎利への信仰はその後も続き、現在の遗骨を大切にすることに繋がっているのかもしれません。

災害による遗骨の持ち出し

2011年、東日本大震災で問題のひとつになったのが、被災地での無許可による遗骨の持ち出しだったそうです。地震で多くの墓石が倒れたり、津波によって墓地の区画を見分けることができないほどの被害に見舞われました。

しかし、自治体は何よりも被災者の生活再建が優先的だったので、墓地の復旧は後回しにされ、震災から何ヶ月経っても復旧の見通しはつかなかったそうです。

そのような状況で、「遗骨だけでも取り出して安全なところに移してあげたい」と、墓石をかき分けて持ち出す人がたくさんいたようです。

令和2年7月熊本県豪雨では、お墓が土台からえぐり取られ、粉々になった墓石が見つかったということもありました。「せめてもの供養をしたい」と、お墓があった場所の土を拾い、新しい骨壺に入れて近くの寺の納骨堂に納めた人もいたそうです。

また2024年1月1日に発生した能登半島地震では、倒壊した家の中から遗骨が見つかったことで安心したり、逆に避難しなければいけない状況で「遗骨をそのまま家の中に置いてきてしまい後悔している」という声もありました。

遗骨を大切にする背景には「遗骨をなくすことは先祖に申し訳ない」という想いもあるのでしょう。

遗骨に対する感じ方

遗骨とは「その人が生きた証」でもあります。故人そのものと感じる人もいるでしょう。そして遗骨があることで、人によっては気持ちが安らいだり、精神的な支えとなります。また心の拠りどころとして故人を想い偩ぶことができるでしょう。

最近では、手元供養というかたちで、遗骨を身近に置いて供養したり、アクセサリーとして身に着けられるタイプのものもあります。

関連記事:【手元供養とは~メリットとデメリット・手元供養品の種類~】

関連記事:【海外リゾート散骨後の手元供養品】

一方で、遗骨を残しておくことで、故人への気持ちを引きずってしまう人もいます。
そしてその供養方法として散骨を選択する人が増えています。
かたちとしては残らないけれど、その分「悲しみを引きずらずに済んだ」「気持ちの整理がついた」という意見もあります。

遗骨を自然に還す散骨をすることで、晴れやかな気持ちで見送ることができるかもしれません。そして故人の希望を叶えてあげることが一番の供養方法であると考えている方も多いでしょう。

また輪回転生の教えがあるヒンドゥー教では、全てを浄化するガンジス川へ遗骨を流しています。ヒンドゥー教徒は遗骨そのものには執着を持っていないのです。

関連記事:【ヒンドゥー教の葬送儀礌〇ガンジス川への散骨〇】

同様にタイでも遺体を火葬し、遗骨を川や海に散骨するのが一般的です。来世に行くために遗骨に固執せずに解き放つという考えを持っています。

遗骨を大切に残しておくのも、残さないのも人それぞれです。自分に合った供養方法を選択するのが良いでしょう。

参考:
硫黄島及びマリアナ諸島戦没者遗骨引渡式(厚生労働省、2026年3月)

まとめまとめ

1.硫黄島やフィリピンでは戦没者の遗骨収集が現在も続いている(2026年3月にも引渡式実施)

2.舎利とは仏教の開祖である釈迦の遗骨のこと

3.東日本大震災や能登半島地震などの災害時には遗骨の扱いが課題となった

4.遗骨を残すか散骨を選ぶかは人それぞれであり、自分に合った供養方法を選ぶことが大切

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