散骨後の供養
人が亡くなった際や、法事などで「供養」という言葉を聞いたことがあると思います。
「お墓や仏壇に、お供え物をして線香をつけ、りんを鳴らす。」
このような行為が一般的には供養と言われています。
しかし供養にはさまざまな方法があり、行う目的も人によって違いがあります。
近年「これから先のお墓を守る人がいない」「子供に負担をかけたくない」などといった理由で、散骨を選ぶ人が増えています。
しかし散骨は、従来のお墓とは違い、手を合わせられるはっきりとした墓標がありません。そのためどこでお参りすればいいのかわからないというご相談もあります。
また通常、一周忌、三回忌などの節目ごとの法事がありますが、散骨後では特にそのような行事もありません。
では散骨後の供養はどのようにしたらいいのでしょうか。
供養の種類
本来の供養とは、仏や菩薩、諸天(仏教でいう天上界にいる神々)などに対しての尊敬の念を表わす「仏教供養」のことをいいます。
しかし現在では、「追善供養」といって、故人の冥福を祈ったり、ご先祖や仏様にお供えするという行為のことを指すのが一般的になりました。
また仏教における供養には、主に3種類あります。
・利供養
故人が好きだった食べ物やお花をお供えして、冥福を祈る方法です。宗派によって多少違いはあるものの、お供え物の基本として、以下の五供(ごく)があります。
香…お線香のことです。
花…季節の花、故人の好きな花などを指します。供花(くげ)とも呼ばれています。
灯燭…ろうそくなどの明かりを灯すものです。その明かりには煩悩を捨て、悟りに至ることを讃える意味があります。
浄水…水やお茶を供えることです。宗派によっては必要ないという考え方もあるそうです。
飲食(おんじき)…お墓ではお菓子や果物などを供えること多いですが、家庭の仏壇ではご飯を仏飯器に入れることが一般です。
これらの他に、お酒やタバコなどの嗜好品もお供えできます。
「あの人これが好きだったな」と考えることも、故人とつながりを感じられる大切な時間です。誰かと一緒に故人の話をしながら、お供え物を考えるのも良いと思います。
・敬供養
仏教を敬う供養のことです。故人や仏への感謝の気持ちを、行為や言葉で表現します。お墓参りや法事、仏壇に手を合わせるといった行為や、仏教や禅の書物を読むことなどがあります。また一周忌や三回忌で、僧侶に読経を上げてもらうことも敬供養のひとつです。
・行供養
仏の教えを守って、修行に励むことです。3つある供養の中でも、一番重要な供養と言われています。修行に励むと聞くと、厳しい修行をしている人たちを想像するかもしれませんが、善い行いをして徳を積むことによって、生きながらにして仏の道を目指すというのが行供養です。
本題からは外れますが、自分が穏やかな顔をしていると、その顔を見た人の心まで穏やかになるそうです。これを「和顔施」と言って、徳を積むことにもなります。
散骨後の供養方法
散骨には手を合わせられる墓標というもの自体がなく、まして遺骨もないことにも戸惑いを感じる人もいるでしょう。
そこで散骨後の供養方法の例を挙げてみます。
・散骨場所へ出向く
お墓参りとして、実際に故人が眠っている場所に行ってみましょう。そこに遺骨はありませんが、故人を感じられるかもしれません。自分が会いたいと思ったタイミングで、散骨場所を訪れて故人を偲ぶことも立派な供養となります。また、弊社のような海外のリゾート地で散骨した場合、お墓参りを兼ねて旅行もでき、故人との思い出がまたひとつ増えます。
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・散骨した場所へ向かって手を合わせる
海は世界中繋がっていると考えて、海や海周辺に出かけた際に故人を偲ぶことができることでしょう。
ちなみに、散骨を行った場所は自然豊かなところであることが多いです。お供えをする場合は、自然に配慮したもので行いましょう。
・手元供養をする
故人を身近に感じ、想いをいつでも語りかけることができます。また好きなタイミングで手を合わせられます。そのためには、遺灰を全て散骨してしまわず、まず遺骨の一部を分骨して手元に残しておきましょう。
分骨した遺骨を入れて身に着けることができるアクセサリーや、手元に置くことができるミニ骨壷、自分だけの供養スペースを作ることができるミニ仏壇などがあります。最近ではデザイン性の高いものが多くありますので、故人が喜びそうなものや、自分の好みのタイプを探してみるのもいいでしょう。
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・供養はしない
人それぞれの考え方次第です。そもそも散骨後の弔い方に「必ずこうしなければならない」というルールはありません。また遺骨処分としての散骨だったため、供養の必要はないという人もいます。
故人を尊重する気持ち
散骨後の供養の方法は人それぞれです。
そこには決まった方法はなく、それぞれの意向で決めています。
自然は世界中で繋がっています。
どこかの海や森を見たときに故人を想い出すことも、供養のひとつではないでしょうか。
供養をする際に墓標や遺灰が、必ずしも欠かせないものではない気がします。
故人の冥福を祈りながら送り出したいという気持ちがあれば、それが供養となることでしょう。
何よりも故人を偲ぶ気持ちが大切なのかと思います。