なぜ「お墓を継がない」を選ぶ人が増えているのか
お盆や年末年始に実家のお墓参りへ足を運んだとき、「このお墓、この先どうしていこうか」と考えた方も多いのではないでしょうか。近年、先祖代々のお墓を撤去し、遺骨を別の方法で供養する「墓じまい」が全国的に増加しています。あわせて、遺骨を墓に納めるのではなく海へ還す「海洋散骨」を選ぶ人も急速に増えており、供養のかたちそのものが変わりつつあります。
こうした動きは日本国内に限った話ではありません。実は海外でも、環境に配慮した「自然に還る」弔いのスタイルが広がりを見せており、背景には共通する価値観の変化があるようです。今回は、国内外の最新の動きを手がかりに、「お墓を継がない」という選択がなぜ増えているのか、そしてその選択をするときに大切にしたいことを整理していきます。
墓じまいと海洋散骨、国内で進む静かな変化
2026年のお盆時期には、墓じまいに関する報道が相次ぎました。改葬(お墓の引っ越し)の件数はこの10年でおよそ2倍に増加したと報じられており、遠方に住む家族がお墓を管理しきれない、子どもに負担を残したくないといった理由が背景にあるとされています。少子高齢化や核家族化が進むなかで、「お墓を継ぐ人がいない」という状況は、もはや一部の家庭だけの問題ではなくなってきているのです。
墓じまいをしたあと、遺骨をどう供養するかという選択肢のひとつとして注目されているのが海洋散骨です。国内での海洋散骨の実施件数は、直近の1年間でおよそ6,700件にのぼり、この7年間で約6倍に増加したと報じられています。粉骨した遺骨を海にまくという供養のかたちが、「お墓を持たない」という選択肢のひとつとして、着実に社会へ浸透してきていることがうかがえます。
一方で、変化のスピードに制度や慣習が追いついていない場面もあります。墓じまいを寺院に相談した際に、高額な「離檀料」を求められるトラブルが各地で報告されているとされ、なかには離檀料をめぐって遺骨の引き渡しが滞るような深刻なケースも伝えられています。墓じまいや散骨は自由に選べる時代になりつつある一方で、事前の情報収集と、家族・寺院との丁寧な対話が欠かせないことも、あわせて知っておきたいポイントです。
世界でも広がる「自然に還る」弔いという選択
こうした価値観の変化は、日本だけの現象ではありません。海外でも、遺骨を自然のなかへ還す「グリーンビュリアル(環境配慮型の弔い)」への関心が高まっています。
例えばアメリカでは、火葬を選ぶ人の割合が引き続き高い水準にあるとされ、火葬後の選択肢として、思い出の場所へ遺灰をまく「アッシュ・スキャッタリング(散骨)」や、遺灰を樹木の栄養に還す方法などが2026年の葬送トレンドのひとつとして紹介されています。環境への配慮や、決まった形式にとらわれない個人らしい見送り方を望む声が、こうした選択肢の広がりを後押ししていると考えられます。
行政レベルでの取り組みも進んでいます。香港政府は、納骨堂の不足や土地資源への負荷を背景に、庭園や指定海域での散骨を「グリーンビュリアル」として長年推進しており、2026年には新たな記念施設も開設されました。お墓という「形」を持たずに故人を弔うという考え方は、文化や制度の違いを越えて、多くの国・地域で共有されつつある価値観といえそうです。
弊社「海と森のセレモニー」がハワイやフィンランド、オーストラリアなどでご提案している海外リゾート散骨も、こうした「自然に還る」弔いの選択肢のひとつです。故人を送り出す場所が、遺族にとって「また訪れたくなる場所」になるという点も、海外散骨ならではの魅力といえるでしょう。
「継がない」を選ぶときに大切にしたいこと
墓じまいや散骨は、費用や管理の負担を減らせる一方で、家族や親族の心情、供養の場が失われることへの寂しさなど、配慮すべき点も少なくありません。選択の際に押さえておきたいポイントを整理しました。
・家族や親族との事前の話し合い
お墓は個人だけでなく親族全体に関わるものです。墓じまいや散骨を考え始めた早い段階で、家族や親族に事情を共有し、理解を得ながら進めることが、後々のトラブルを避けるうえで重要です。お盆や法要など、家族が集まる機会を話し合いのきっかけにするのもひとつの方法です。
・寺院や霊園との丁寧なコミュニケーション
離檀料をめぐるトラブルの多くは、事前の説明不足やコミュニケーション不足から生じているとされています。墓じまいを検討する段階で、寺院側にも事情を丁寧に伝え、疑問点は早めに確認しておくことが、円満な手続きにつながります。
・遺骨の行き先を具体的に決めておく
墓じまい後の遺骨は、永代供養墓や樹木葬、海洋散骨など、複数の選択肢のなかから行き先を決める必要があります。改葬の手続きには「受入証明書」など、遺骨の引っ越し先が決まっていることを前提とした書類が必要になるため、早い段階で方針を固めておくと手続きがスムーズです。
まとめ―「お墓を持たない」は新しい弔いのかたち
墓じまいの増加や海洋散骨の広がりは、単なる「お墓離れ」ではなく、「誰かに管理を強いる供養」から「自分たちらしく故人を見送る供養」へと、価値観そのものが変化していることの表れだといえそうです。そしてこの流れは、日本だけでなく世界各地で同時に進んでいます。
大切なのは、費用や手軽さだけで選択するのではなく、故人の想いや家族の気持ちに丁寧に向き合いながら、自分たちに合った供養のかたちを見つけていくことです。「お墓を継がない」という選択肢が特別なものではなくなりつつある今だからこそ、後悔のない選び方を考えてみませんか。
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参考:
「海洋散骨」7年で6倍、年6600件 葬送ニッポンの景色一変(日本経済新聞)
墓を撤去して管理を終える「墓じまい」が増加 改葬件数はこの10年で倍増(ライブドアニュース/FNNプライムオンライン)
墓じまいを切り出したら「離檀料1000万円」…急増する泥沼トラブル(Infoseekニュース/プレジデントオンライン)
9 Ways the Funeral Industry Is Changing in 2026 and Beyond(Wildflower Funeral Concepts)
Introduction of Green Burial(香港政府 Food and Environmental Hygiene Department)





