墓じまいとその費用
近年、少子高齢化や核家族化の影響で「お墓の継承者がいない」「子供に負担を掛けたくない」などの理由や、人々のライフスタイルの変化から「墓じまい」をする人が多くなっています。
墓じまいとは、今ある墓石を撤去して、お寺や霊園にお墓を返還することです。
墓じまい後は、お寺との檀家関係が解消され、お布施や維持管理費といった費用も発生することはありません。
しかし墓じまいの際には、思いのほか費用が掛かってしまいます。墓じまいの平均費用相場は、約50~130万円前後と言われています。例えば、お墓の撤去費用は1㎡あたり約10~15万円、開眼供養料約3~5万円、離檀料約5~20万円掛かるとされています。またお墓の大きさ・立地・改葬先などの諸条件によっても金額は変わってきます。
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そこで少しでも墓じまいの費用負担を減らすために「補助金制度」を設けている自治体があります。まだ全国的に普及しているわけではありませんが、これから増えていく可能性もあります。
墓じまいを支援している自治体
・千葉県市川市
市川市では【市川市霊園一般墓地返還促進事業】を行っています。
市内の一般墓地を利用していて「お墓の継承者がいない」「生活事情によりお墓の管理が困難になった」「無縁墓になる不安がある」という人たちを対象に、お墓の原状回復費用を一部助成しています。
・原状回復費用助成限度額
第1種 | 普通墓地 | 4.0平方メートル | 240,000円 |
芝生墓地 | 4.0平方メートル | 75,000円 | |
第2種 | 普通墓地 | 6.0平方メートル | 290,000円 |
第3種 | 普通墓地 | 12.0平方メートル | 440,000円 |
第4種 | 普通墓地 | 2.5平方メートル | 210,000円 |
芝生墓地 | 2.5平方メートル | 75,000円 | |
第5種 | 芝生墓地 | 1.5平方メートル | 75,000円 |
※必要書類
・市川市霊園一般墓地返還届
・原状回復費用助成金交付申請書
・原状回復費用助成金交付請求書
・一般墓地使用料一部返還に関する書類
・市川市霊園一般墓地使用許可証
・返還対象墓地の原状回復工事に係る見積書及び領収書
・返還対象墓地の原状回復工事前後の写真
・千葉県浦安市
浦安市では【墓所返還者等支援事業】を行っています。
お墓の原状回復費用のうち、15万円を上限に交付する「墓石撤去費等助成制度」を設けています。墓地公園の通常墓所(1区画3.0平米)または小型墓所(1区画1.5平米)の使用許可を受けている人が対象です。
・補助限度額
補助金額の上限は15万円です。お墓の返還後に市から補助金が交付されます。
※必要書類
・浦安市墓地公園墓所墓碑撤去費等補助金交付申請書(第1号様式)
・墓石の撤去など、原状回復に要する費用に係る見積書
・浦安市墓地公園墓所使用許可証の写し
・群馬県太田市
太田市では、【八王子山公園墓地墓石撤去費用助成金】という、お墓の返還に際して、墓石の撤去に掛かる費用を助成する制度があります。平成31年4月1日以降に八王子山公園墓地の返還届を提出し、墓石の撤去が完了していて管理料の滞納がない人が対象です。
・補助限度額
祭祀費用は除き、補助金額の上限は20万円です。
※必要書類
・八王子山公園墓地墓石撤去費用助成金交付申請書兼金融機関口座振込依頼書
・墓石撤去に係る明細書
・墓石撤去に係る領収書
・助成金振込先口座の通帳(口座番号がわかる部分のコピー)
2024年6月時点での情報です。詳細は各自治体での確認をお願いします。
自治体が墓じまい支援をする理由~無縁墓を防ごう
墓じまいは一見、個人の事情で行われるもののように思えますが、なぜ自治体が補助金を出す場合があるのでしょうか。
それは「無縁墓」対策のためです。
お墓の継承者や管理する人がいない「無縁墓」は、現在全国で増え続けています。その背景として、急速な少子高齢化があります。厚生労働省の【人口動態統計】によると2023年の出生率は75万人に対して、高齢化が進んだ影響で年間死亡者は約160万人で、出生数の2倍に及んでいます。そうした中、総務省は【墓地行政に関する調査】を行い、無縁墓が急速に増えている実態を明らかにしました。
このように無縁墓が増え続けてしまうと、どうなってしまうのでしょう。
無縁墓増加の弊害として、自治体からは「墓石やブロック塀の荒廃による倒壊などのリスク」「樹木が生い茂ることによる環境の悪化」などが国に報告されたそうです。
また無縁墓の墓石の撤去は自治体が行わなければなりません。しかし墓石を撤去する際の取り扱いについては法律で規定がなく自治体に委ねられるので、墓石を永年保管したりと対応が様々なようです。
そして総務省は厚生労働省に対し、少子高齢化や核家族化が進む中、無縁墓がこれからも増えるおそれがあるとして、自治体へ墓じまいの支援を検討するよう要請したのです。
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墓じまいの費用を抑えるために
国は自治体へ墓じまいの支援を要請していますが、それは自治体の方針によって異なります。全ての自治体が補助金を出してくれるわけではありません。
そして少しでも墓じまいの費用を抑えるためにも、石材店や改葬先を選ぶ際に以下のようなポイントが挙げられます。
・お墓を撤去する業者の見積もりをとる
お墓を撤去する業者を選ぶ際には、複数の業者の撤去費用を確認しましょう。 撤去を依頼する業者によって撤去費用が異なる場合があります。
同じお墓で約20万円の差が出たケースもあったそうなので、複数の業者から見積もりをとって費用を比較することをオススメします。 比較することで撤去費用相場が把握できます。
・遺骨の改葬先
墓じまい後には、遺骨を別のお墓に移す「改葬」を行います。
一般的には
・一般墓
・納骨堂
・樹木葬
・合祀墓(永代供養墓)
・散骨
などが挙げられます。
合祀墓は、他の人の遺骨と一緒に埋葬されるお墓のため、自分でお墓を建てる必要がありません。また遺骨を粉骨し、海や森といった自然へ還す散骨も、お墓を建てることもちろん維持管理費用も掛かりません。
関連記事:【墓じまいと散骨に関する必要な手続きと費用】
しかしどちらも後から遺骨を取り戻すことができないため、人によっては後悔することもあります。十分に検討して決めましょう。
お墓は単に遺骨の保管場所というだけでなく、亡くなった人と向き合う場所としての意義があります。そしてお墓のあり方を社会全体で考える時期に来ていると思います。また自分たちが「どうしたいか」「今後どうするのか」ということを、元気なうちに家族や親族、周囲の人と話し合っておくことが大切です。