火葬したご遺骨を海へ撒く「散骨」は、日本ではこの数十年で少しずつ社会に受け入れられてきました。実は今、お隣の韓国でも同じような変化が起きています。2025年1月、韓国では実に63年ぶりとなる法改正によって「海洋葬(산분장・散粉葬)」が正式に合法化されました。ところが合法化から1年半が経った現地では、法律の想定と現場の実態との間に大きなズレが生じていると報じられています。
今回は、韓国の海洋葬をめぐる最新事情を手がかりに、「法律が変わること」と「現場に定着すること」は必ずしもイコールではないという視点から、日本の海洋散骨や海外リゾート散骨との違いも交えてご紹介します。
韓国で何が起きたのか―63年ぶりの法改正
韓国では長らく「葬事等に関する法律(장사법)」において、遺体の処理方法として埋葬・火葬・自然葬(樹木や芝生の下に骨粉を埋める方法)のみが規定されており、海への散骨についての明文規定は存在しませんでした。2012年に海洋水産部が「海への散骨は海洋投棄にはあたらない」との有権解釈を示したことで黙認的に広がってはいたものの、法律上は長年グレーゾーンのままだったのです。
この状態に終止符が打たれたのが2023年12月の法改正で、2025年1月24日から施行令が施行され、海洋葬が正式に合法化されました。これは実に63年ぶりの制度整備だったといいます。
・施行日
2025年1月24日。改正された「葬事等に関する法律」施行令のもとで、骨粉を海に撒く「散粉葬(さんぷんそう)」が自然葬の一形態として正式に位置づけられました。
・実施できる場所
海岸線から5km以上離れた海域に限定されています。川や湖など内水面での散骨は、今も引き続き違法とされています。
・違反した場合の罰則
定められた海域を守らずに散骨を行った場合、1年以下の懲役または1,000万ウォン以下の罰金が科される可能性があるとされています。
合法化後も相次ぐ摘発―「5kmルールを守れない」現場の実情
ところが、法律が整備されたことで現場がすぐに落ち着いたわけではありませんでした。合法化された年の1月から6月だけで、仁川(インチョン)の海洋警察が摘発した違法な海洋葬は、業者3社だけでおよそ1,800件にのぼったと報じられています。
背景にあるのは、5km規制の厳しさです。海岸線から5km以上離れた海域まで往復するには時間も燃料費もかかるため、一部の業者が規定より近い海域で散骨を済ませてしまうケースが後を絶たないという構造的な問題が指摘されています。仁川エリアは全国の海洋葬のおよそ7割が集中する主要拠点だけに、この摘発件数の大きさは業界全体に衝撃を与えました。
現地の社説では、「合法化から30年以上も法の外で黙認されてきた業界の体質が、制度が整った後もすぐには変わらなかった」と厳しく指摘されています。
統計も届出制度も追いついていない
もう一つの課題が、実態把握の難しさです。海洋葬の代行業は特別な許認可や届出を必要としない「自由業種」に分類されており、政府が業者の数や実施件数をリアルタイムで把握できる仕組みがそもそも存在しません。
この状況を受けて韓国政府は、2026年1月1日から「e하늘 장사정보시스템(火葬・埋葬情報システム)」を改編し、火葬を申請する段階で散骨を行うかどうかを必ず選択させる方式を導入しました。統計面での不備を埋めようという取り組みですが、集めたデータをもとに現場の違法営業をどう取り締まるかという具体的なガイドラインは、依然として整っていないのが現状です。
合法化から1年が経過した時点で、その年に実際に何件の海洋葬が行われたのかという正確な数字すら、当局側で把握しきれていなかったとも報じられています。制度をつくることと、その制度を実際に運用できる体制を整えることは、別の課題なのだと言えるでしょう。
日本の海洋散骨と比べて見えてくること
この韓国の状況を見ると、日本における海洋散骨のこれまでの歩みが、決して当たり前のものではなかったことに気づかされます。日本でも「墓地、埋葬等に関する法律」には散骨を直接規定する条文はなく、1991年の非公式見解を皮切りに、業界団体によるガイドラインの策定、2021年の厚生労働省による「散骨に関するガイドライン」の公表、2023年の国土交通省による留意事項の公表と、およそ30年をかけて実務の積み重ねの上にルールが整えられてきました。
粉骨の基準(概ね2mm以下)や、海岸から一定距離を離れた海域を選ぶことなど、韓国の5kmルールに通じる配慮は、日本でも業界の自主基準として早くから根づいています。「合法か違法か」という制度の話だけでなく、「現場でどう実施され、どう社会に受け入れられていくか」という積み重ねこそが、この供養方法を安心して選べるものにしてきたと言えるでしょう。
弊社「海と森のセレモニー」が提供する海外リゾート散骨も、海外の現地法令や慣習を弁護士・法務調査機関によるリーガルチェックを通じて確認したうえでプランをご提案しており、こうした積み重ねの延長線上にあるサービスです。
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本記事は韓国国内の法制度・報道内容をもとにご紹介したものです。海外の法制度は改正が頻繁に行われるため、最新の状況については現地の公的機関の発表をご確認ください。
参考:
63년 만의 해양장 합법화, 여전히 깜깜이(韓国日報)
해양장 합법화 1년… 법령과 현장 사이 '5km의 간극'(相助葬礼ニュース)
[사설] 해양장 합법화로 불법이 만연한다니 기가 막히다(Daum)
합법 된 해양장…바다 위 마지막 인사 잇는다(韓国経済新聞)





