仏壇じまいの増加~墓じまい後の延長線上として
家族や親族が亡くなったり、先祖代々の供養をしたり感謝の気持ちを伝える際に「仏壇」に手を合わせることがありませんか?昔の日本では、朝起きたら仏壇に向かって合掌礼拝をして、時間に余裕があればお経を読んでいたということもありました。
しかし現代では、核家族化や少子化の影響で仏壇を受け継ぐ人がいなかったり、仏壇を収納できる部屋がなかったり、時代の変化によって仏壇に対しての考え方も変わりつつあり、「仏壇じまい」をする人が増えています。
仏壇じまいとは、仏壇や位牌を供養した後に処分することです。
最近では「墓じまい」をした後に、仏壇じまいをする人も多くいます。
とはいえ仏壇じまいというと、なんとなく心苦しい気持ちになってしまう人もいると思います。また長い間家族や親族を見守り続けてきた仏壇、先祖代々手を合わせてきた仏壇だからこそ、きちんとした方法で仏壇じまいをしたいと思う人もいるでしょう。
そこで今回は「仏壇じまい」について解説していきます。

仏壇の歴史
そもそも仏壇が祀られるようになったのはいつからでしょうか。
日本書紀によると、仏壇は白鳳14年(686年)に、天武天皇が「家に仏舎を造り、仏像を安置して礼拝するように」と詔命し、日本中に広がったとされています。そしてその仏舎が、仏壇の原型になったと言われています。しかし当時、仏壇は貴族階級の文化であり庶民には縁のないものでした。
その後鎌倉時代に、禅僧によって中国の儒教の祭具である「位牌」が日本に伝わりました。そして室町時代の中頃になって、浄土真宗を中心として仏壇の文化が普及し始めました。室町時代を代表する住宅形式に「書院造」がありますが、この頃に床の間が作られるようになり、そこに仏画を掛けたり仏具を置いて礼拝するようになったそうです。
一般庶民に仏壇が普及したのは江戸時代のことです。江戸幕府の寺請制度により、庶民は菩提寺を決めたり、檀家になることが義務付けられました。そしてその寺請制度によって、庶民の間でも戒名を授かるようになり、戒名が書かれた位牌を祀るために、一般庶民にも仏壇が普及していったと言われています。
ちなみに日本最古の仏壇は、奈良県にある法隆寺の「玉虫厨子」とされています。推古天皇が仏像を安置するために使用していたそうです。

仏壇じまいの方法と注意点
仏壇じまいを行う方法は、大きく4つあります。また仏壇じまいをする際に気を付けることもいくつかご紹介します。
仏壇じまいの方法
・専門業者に依頼する
仏壇を取り扱っている専門業者に依頼します。取り扱いに慣れているので安心して作業を任せられるでしょう。また料金プランがはっきりしている業者が多いです。費用相場として3万円〜8万円といった業者が多いです。ただ住んでいる地域、仏壇のサイズなどによって費用は変わってくるので、業者にそれぞれ確認しましょう。
また専門業者は、仏壇を運んだり解体の対応をしているだけで、仏壇から魂を抜く閉眼供養は受け付けていないところが多いです。閉眼供養に対応していない業者に依頼する場合は、別でお寺に閉眼供養を依頼しましょう。
・お寺に依頼する
仏壇じまいに対応しているお寺は多いので、近くのお寺、または菩提寺に聞いてみると良いでしょう。お寺に依頼する場合、仏壇を運んだり仏壇の閉眼供養も請け負ってもらえることがほとんどです。費用はお布施(お気持ち)として、3万円くらいが相場と言われています。
しかし、菩提寺に依頼する際は注意が必要な場合があります。
仏壇じまいとは菩提寺にとって、「檀家としての最後の供養」という位置づけとなるので、離檀料といって高額請求されるケースもあるようです。
これは墓じまいの際も同様です。予め、菩提寺に確認してきましょう。
関連記事:【墓じまいからの檀家離れ~戦後から現代の葬送文化と寺院の経営悪化~】
・自分で処分する
仏壇は自分で処分することも可能です。自分で仏壇じまいをする場合、基本的に解体した仏壇は燃えるごみとして処分できますが、仏壇の素材やサイズによっては粗大ごみとして扱う必要があります。自治体に確認しましょう。
・買取を依頼する
仏壇の状態が良かったり価値の高いものであれば、買取を依頼するのも良いかもしれません。ネットオークションやフリマなどに出品して、買い手を探してみるのも手段のひとつです。
仏壇じまいを行う際の注意点
・家族と相談する
仏壇じまいをする際は、予め家族と相談しておきましょう。家族の中には、仏壇じまいをすることに抵抗を感じる人がいるかもしれません。また、仏壇処分そのものに反対される可能性もあります。そして勝手に自分で仏壇じまいをすると、トラブルの原因になるため注意が必要です。
・仏壇の中身を確認する
仏壇の中身をしっかり確認しておきましょう。仏壇には隠し引き出しがついているものもあり、その中に家宝や家系図などが眠っている場合があります。仏壇じまいをする前に、念入りに確認することをおすすめします。可能であれば、複数人で確認すると見落としも減ります。
・遺影と掛け軸も供養する
仏壇の中に遺影と掛け軸を置いていた場合、仏壇と合わせて閉眼供養を行うのが良いでしょう。
自分に合った供養方法を
近年増えている、墓じまいや仏壇じまいですが、お墓や仏壇があることで、故人がいつも見守ってくれていると感じている人もいるでしょう。また故人を失っても、遺族にとって生きていく勇気を与えてくれるのがお墓や仏壇の役割かもしれません。
しかし故人を偲ぶ方法は、様々あって良いと思います。お墓や仏壇がなければいけないということはありません。
大切なのは故人を想いその安穏を願う気持ちです。その気持ちと向き合うための場所は、お墓や仏壇の前でなくても良いのではないでしょうか。またお墓も仏壇も、立派で大きなものにこだわらなくても、悲しみと向き合いしっかりと故人を想えれば、それが最も良い選択なのだと思います。そして自分にとって、どのようなかたちで供養するのが一番気持ちが安らぐのかが大事なことです。
お墓や仏壇がなくても、写真とお線香だけといったシンプルでオリジナルのかたちで供養、遺骨アクセサリーを身に着ける手元供養、散骨で故人を自然に還して海や森で供養するなど、自身の気持ちとスタイルに合った供養方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
関連記事:【海外リゾート散骨と海洋散骨の魅力】
関連記事:【手元供養とは~メリットとデメリット・手元供養品の種類~】
関連記事:【海外リゾート散骨後の手元供養品】