「自分が亡くなったあと、遺骨を引き取ってくれる人はいるだろうか」――ひとり暮らしの高齢者が増えるなか、こうした不安はもう決して他人事ではなくなっています。
近年、引き取り手のない遺骨、いわゆる「無縁遺骨」が全国で増え続けており、遺骨を預かる自治体の負担も年々大きくなっています。この記事では、無縁遺骨が増えている背景を最新の統計とともにひもとき、無縁遺骨にならないために今からできる終活や、自治体が進める支援策についてご紹介します。
無縁遺骨とは?全国で約6万柱にのぼる現状
無縁遺骨とは、さまざまな事情から、引き取り手が誰もいない遺骨のことです。
かつての無縁遺骨は、身元がわからない「行旅死亡人」の遺骨が中心でした。ところが近年は、高齢化や核家族化、社会的な孤立の広がりを背景に、身元がはっきりしていて、家族や親族がいるにもかかわらず引き取られない遺骨が増えています。
総務省が初めて行った全国調査では、2021年10月末時点で、全国の市区町村が保管している引き取り手のない遺骨は約6万柱(5万9,848柱)にのぼることがわかりました。このうち身元不明の行旅死亡人は約6,000柱にとどまり、残る約5万4,000柱は、身元がわかっていながら引き取り手がいない遺骨です。大阪市では、無縁遺骨がこの30年あまりで約10倍に増えたとも報じられています。
引き取られない理由としては、「親族の顔もわからないほど疎遠だった」「葬儀やお墓の費用を工面できない」「亡くなり方の事情から関わりたくない」といった声が挙げられます。
なお、亡くなった方の火葬などを行う人がいない場合については、法律で次のように定められています。
死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。出典:墓地、埋葬等に関する法律 第9条第1項
一方で、火葬後の遺骨をどこで、いつまで保管するかについては、法令に明確な規定がありません。そのため、無縁遺骨は「自治体庁舎の一室や倉庫」「葬儀社の保管室」「お寺の納骨堂」などさまざまな場所で保管されており、保管場所が満杯になりつつある自治体も少なくないといわれています。総務省は調査結果を受け、厚生労働省に対して保管のあり方の方針を示すよう求めています。
無縁遺骨の増加は、遺骨の行き場がなくなるだけでなく、家族や地域のつながりの希薄化、自治体の費用負担の増大といった課題とも深く結びついています。
無縁遺骨が増えている3つの理由
・ひとり暮らしの高齢者の増加と、孤独死・孤立死
無縁遺骨になりやすいのは、身近に頼れる人がいない、ひとり暮らしの高齢者だといわれています。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の人口に占めるひとり暮らしの割合は、1980年には男性4.3%・女性11.2%でしたが、2020年には男性15.0%・女性22.1%に上昇しました。2050年には男性26.1%・女性29.3%に達する見込みで、高齢者の4人に1人以上がひとり暮らしという時代が近づいています。
こうした中、誰にも看取られずに自宅で亡くなる「孤独死」も増えています。警察庁の集計では、2025年に自宅で亡くなったひとり暮らしの人は7万6,941人で、そのうち約5万9,000人が65歳以上でした。さらに内閣府は、亡くなってから8日以上たって発見されたケースを、生前に社会的に孤立していた可能性が高い「孤立死」の目安としており、その数は2025年で2万2,222人と推計されています。
身寄りがわからないまま自治体が火葬を行い、後から親族が見つかって連絡をしても、遺骨の引き取りを断られるケースも多いといわれています。
・核家族化による家族関係の変化
核家族化が進み、親族が同じ地域に住むことは少なくなりました。何十年も連絡を取っていない、親の離婚で長く音信不通だった、そもそも身寄りがまったくいない――そうした事情から、「法律上の親族はいても、遺骨を託せる相手はいない」という状況が生まれやすくなっています。
・葬儀やお墓にかかる経済的な負担
葬儀や火葬、新たにお墓を用意する費用を工面できないことも、引き取りをためらう理由のひとつです。前述の総務省調査でも、自治体が保管する無縁遺骨のうち半数以上(約3万4,000柱)は、生活保護法にもとづいて葬祭が行われた方の遺骨でした。
高齢化と家族のかたちの変化が続く限り、無縁遺骨は今後も増えていくと考えられています。死後の弔いを誰が、どのように担っていくのか。社会全体で向き合うべき課題といえるでしょう。

無縁遺骨にならないために、今からできる終活
いちばん大切なのは、元気なうちに自分の意思を形にして、誰かに託しておくことです。無縁遺骨となる方の多くは住民登録があり、葬儀のための預金を残している場合もあります。足りないのは「本人の希望を知り、それを実行してくれる人」です。生前の意思を聞き取り、確実に伝えられる仕組みを用意しておけば、希望に沿った最期を迎えられる可能性はぐっと高まります。
・遺言書の作成
遺言書とは、自分が亡くなった後の財産の分け方などを、法律で定められた形式に沿って書き残す文書です。主な方式には、自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言は一人で手軽に書けますが、形式を誤ると無効になるおそれがあります。2020年7月からは、書いた遺言書を法務局に預けられる「自筆証書遺言書保管制度」も始まり、紛失や改ざんの心配を減らせるようになりました。公正証書遺言は、証人2人以上の立ち会いのもとで作成し、原本が公証役場で保管されるため安心です。2025年10月からは公正証書の手続きのデジタル化も始まっています。
さらに2026年6月には、パソコンやスマートフォンで作成できる新しい遺言方式を設ける民法改正が成立しました(施行は公布から3年以内の予定)。ただし、葬儀や納骨・散骨の希望は遺言に書いても法的な強制力はないとされるため、次に紹介する死後事務委任契約とあわせて準備しておくと安心です。遺言は何度でも書き直せるので、状況が変わったら見直しましょう。
関連記事:【終活を始めよう~遺言書とエンディングノートの作成~】
関連記事:【「デジタル遺言」制度が創設決定―スマホで書ける時代に、「散骨してほしい」という想いをどう届けるか】
・死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、「自分の死後に必要な手続きを、信頼できる第三者に任せておく契約」のことです。葬儀や納骨、遺品整理、医療費や公共料金の精算、年金の停止手続きなど、亡くなった後に発生するさまざまな事務を、委任を受けた人が代わりに行います。契約書には、何をどこまで任せたいのかを具体的に書いておきましょう。
身元保証や死後事務をまとめて引き受ける事業者も増えていることから、政府は2024年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しています。契約の際は、サービス内容や預けるお金の管理方法をしっかり確認することが大切です。
弊社では、「散骨の実施についての死後事務委任契約」をご本人様と直接結ばせていただくことが可能です。死後事務委任契約をご案内する場合も、追加料金は発生しません。
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関連記事:【2025年問題に備える終活ガイド~散骨から死後事務委任契約まで~】
・生前契約(財産管理委任契約・任意後見契約など)
生前契約とは、身寄りがいない方や、家族に負担をかけたくない方が、元気なうちに自分の意思で受託者と結んでおく契約です。入院の手続きや財産の管理、葬儀・遺骨の安置や埋葬、遺品の整理などを任せることができます。代表的なものは次のとおりです。
「財産管理委任契約」
体が思うように動かなくなったときに、金融機関や役所での手続き、支払いなどを代わりに行ってもらう契約です。入院や介護に関する手続きを任せることもできます。
「任意後見契約」
将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、財産管理や療養・介護に関する手続きを任せる人(任意後見人)をあらかじめ選んでおく契約です。公正証書で結ぶ必要があります。
「尊厳死宣言(リビングウィル)」
回復の見込みがない状態になったときに、延命治療を望まないという意思を、元気なうちに書面で表明しておくものです。公証役場で「尊厳死宣言公正証書」として作成することもできます。ただし法的な拘束力が認められているわけではないため、家族や主治医とも日頃から話し合っておくことが大切です。
・エンディングノートの活用
エンディングノートには、医療や介護の希望、財産、葬儀やお墓・散骨の希望などを自由に書き残せます。法的な効力はありませんが、自分の想いを整理し、周りの人に伝えるための第一歩になります。市販のノートを使えば気軽に始められますので、まずは思いつくことから書き出してみましょう。
関連記事:【孤独死・孤立死を防ぐために~終活としてエンディングノートの活用~】

自治体が進める終活支援と、新しいつながり
多死社会を迎え、家族や地域のつながりが薄れつつある今、「死後を誰に託すのか」を生前に決めておくことはとても大切です。自分のお墓があっても、納骨してくれる人がいなければ、そのお墓に入ることはできません。「誰かがどうにかしてくれるだろう」と準備をしないまま、無縁遺骨になってしまうケースも少なくないのです。
こうした状況を受けて、終活を後押しする自治体も増えています。兵庫県神戸市は2024年6月、頼れる身寄りのない方の生前の葬儀・納骨契約を市が支援する「エンディングプラン・サポート事業」を始めました。市が相談を受け付け、協力する葬祭事業者との生前契約(死後事務委任契約)に市の相談員が立ち会い、預託金の保管状況も市が定期的に確認する仕組みです。当初は所得の要件がありましたが、2025年10月に撤廃され、同時に「こうべ終活相談窓口」の開設と「終活情報登録制度」もスタートしています。
神奈川県横須賀市は、こうした取り組みの先進地として知られています。2018年から行われている「わたしの終活登録」事業では、元気なうちに次のような情報を市に登録しておくよう呼びかけています。
・本籍や筆頭者
・緊急連絡先や身元保証の事業者
・エンディングノートや遺言書の保管場所
・葬儀や遺品整理の生前契約先
・お墓の所在地
情報を登録しておけば、万が一ひとりで亡くなった場合でも、本人の意思が自治体を通じて関係者に伝わり、その後の対応がスムーズになります。お住まいの自治体にも同様の制度がないか、一度確認してみるとよいでしょう。
また最近では、同じお墓に入る約束をした友人「墓友(はかとも)」づくりも注目されています。合同でお墓参りをしたり食事会を開いたりと、ゆるやかなつながりを持てることが魅力で、身寄りのない方にとっては孤立を防ぐきっかけにもなっています。
そして、お墓を建てたり遺骨を管理し続けたりすることが難しい場合には、遺骨を海や森などの自然に還す「散骨」という選択肢もあります。お墓の継承者を必要とせず、管理の負担が残らないのが特徴です。弊社では、スタッフがご遺骨を直接お預かりに伺うほか、ゆうパックでの送骨も承っております。お預かりしたご遺骨は、細心の注意と敬意をもって散骨いたします。
関連記事:【終活~最期に向けた散骨に対する想い~】
まとめ:無縁遺骨は誰にでも起こりうる問題だからこそ
無縁遺骨の問題は、身寄りのない方だけでなく、誰にでも起こりうる問題です。自分がいつ亡くなるかは誰にもわかりませんが、備えることは今からでもできます。
遺言書やエンディングノートで想いを書き残し、死後事務委任契約で実行してくれる人を決め、自治体の支援制度も上手に活用する。こうした終活は、死後の手続きをスムーズにするだけでなく、これからの毎日をより安心して過ごすことにもつながります。思い立ったときが始めどきです。まずはできることから、一歩ずつ準備を始めてみませんか。
参考:
墓地、埋葬等に関する法律(厚生労働省 法令等データベース)
大阪では死者の10人に1人が無縁遺骨に(幻冬舎plus/総務省「遺留金等に関する実態調査」の紹介)
引き取り手のない「無縁遺骨」約6万柱(婦人公論.jp)
令和7年版高齢社会白書 家族と世帯(内閣府)
令和7年中における死体取扱状況(自宅において死亡した一人暮らしの者)(警察庁)
エンディングプラン・サポート事業(神戸市)
こうべ終活相談窓口の開設及び終活情報登録制度の開始(神戸市/PR TIMES)





