霊園やお寺の経営危機~理由から改葬先まで~

執筆者:Tomo

霊園やお寺の経営危機~理由から改葬先まで~

目次

霊園やお寺が危ない?~経営破綻・倒産の波及

近年、霊園や寺院墓地の経営破綻や倒産が増えてきています。
お寺も倒産するの?と思ってしまいますよね。

実際に霊園や墓地を経営できるのは、法律で「地方自治体」「宗教法人」「公益法人」とされています。しかし最近、登記上では宗教法人が経営していることになっているけれど、実は経営しているのは民間企業だったということも珍しくないのです。いわゆる名義貸しです。本来民間企業は霊園や墓地の経営はできません。霊園や墓地に「永続性」と「非営利性」が求められているからです。そして利益を追い求めた結果、経営破綻や倒産を招いたりする場合があります。

また経営破綻や倒産をする前に経営自体を辞めてしまえばいいかと思われますが、そうも簡単にいきません。
霊園や墓地を廃止する場合には【墓地、埋葬等に関する法律】で、都道府県知事による墓地廃止許可が必要とされています。
そしてこの許可は【墓地、埋葬等に関する法律の疑義について】では、「墓地廃止許可処分は原則として当該墓地に埋葬された死体又は埋蔵された焼骨の改葬が全て完了した後に行われるべき」とされてます。
つまり廃止許可と改葬の完了、しかももちろんお墓の使用者の許可も必要なので、すぐに経営を辞めることができないのです。

また経営破綻後、20年以上もそのまま続いている墓地もありますが、災害によって崩れたお墓の補修や修繕もできていないそうです。

このように、霊園やお寺が経営破綻や倒産をしてしまうのには、どのような理由があるのでしょうか。そしてそのようなトラブルに巻き込まれないための対策も解説していきます。

屋敷

霊園やお寺が経営破綻や倒産する理由

・民間霊園の経営破綻


民営霊園とは、宗教法人や公益法人から委託を受けて、民間企業が管理と経営をする霊園です。委託となっているのは、先にも述べましたが民間企業は直接霊園を経営できないからです。
厚生労働省の【墓地経営・管理の指針等について】で「墓地経営主体は、市町村等の地方
公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること」とあります。

なぜ民間企業は経営ができないかというと、基本的に営利目的だからです。営利目的そのものが悪いわけではないのですが、墓地は遺骨を埋葬する場所で、供養や祈りの場でもあります。つまり、営利性とは正反対の場所であり、結果的に宗教ビジネスとなってしまいます。そのようなことから、民間霊園の経営が不安定になってくるのでしょう。

そして、思ったよりも霊園の利用者が増えなかったことで資金繰りがうまくいかず、経営破綻や倒産に陥る場合があります。最近ではお墓を建てない人も増えています。多死社会、少子高齢化でお墓の承継者がいなかったり、お墓の管理で子どもに負担をかけたくないと考え、墓じまいをしているのも霊園倒産の原因のひとつです。

・寺院墓地の経営破綻


お寺の敷地内にある寺院墓地でも、経営破綻しているところがあります。多死社会、少子高齢化で日本の人口が減る中、檀家になる人も減少しています。また檀家制度自体に疑問を感じる人も増え、檀家離れも進んでいます。檀家が減ればお布施も減ってしまうため、寺院の経営自体が困難となっているのです

関連記事:【墓じまいからの檀家離れ~戦後から現代の葬送文化と寺院の経営悪化~

またお寺の経営不振を見込んで、石材店や投資会社が住職に「土地を造成して新たにお墓を造らないか」と儲け話を持ち込んでいるようです。しかし計画の段階で予測が甘く、数億~数10億円の資金調達をしたものの、予定していた販売数に達することができないこともあるそうです。そして多額の借金を返済していくことが困難になり、お寺は倒産します。このようにお墓の造成が原因となっている他にも、金融商品などの投資の失敗によって倒産に至る場合も稀にあるそうです。

灯篭

経営破綻や倒産によるトラブルに巻き込まれないように

万が一霊園や墓地が経営破綻や倒産をしてしまったら、経営者が管理や経営を引き継いでもらえる、新たな経営先を探さなければなりません。引き継いでくれるところが見つかれば、お墓はそのまま維持できますし、遺骨を取り出す必要もありません。ただ、新しく契約を結ぶことになるため、永代使用料の請求や管理費の値上げを要求される可能性があります。

一方、引き継ぎ先が見つからない場合では、家族や親族が遺骨を引き取らなければなりません。しかし、すぐに引き取りに行ければ良いのですが、対応が遅れると遺骨を引き取れない場合があります。
また霊園や墓地の管理者がいないため、特に納骨堂のような建物内で遺骨が管理されている場合、遺骨の行方がわからなくなる可能性もあるでしょう。

そのようなトラブルに巻き込まれないためにも以下のことを確認しましょう。

・どのような法人が経営しているか
・経営年数や契約数
・安すぎる永代供養料や管理費
・派手な建物や過剰な広告

民間霊園や墓地で契約する際は、経営母体の確認が重要です。ホームページや広告などで、どのような団体がどのような経営をしているか、他に事業を行っていないかなどを確認しておきましょう。その際、霊園を経営して何年くらいか、契約数の増減も調べておくと安心です。

また永代供養料や年間管理費が、相場と比較して安すぎる場合や、テレビのCMや新聞広告が過剰な場合も注意が必要です。なぜなら一時的に資金を集めて、持ち逃げする可能性があるからです。できれば複数の霊園や墓地を見学して見積もりを取りましょう。比較すると相場もわかります。

お墓の改装先~永眠を妨げない供養のあり方

万が一霊園や寺院墓地が経営破綻や倒産してしまったら、お墓に埋葬された遺骨はどうなってしまうのでしょうか。

遺骨は、【墓地、埋葬等に関する法律】によって守られます。第三者が遺族の許可なく勝手に遺骨を掘り返したりすると、【刑法】第188条から第191条の墳墓発掘罪に触れ、法律違反となります。

なので、埋葬された遺骨が勝手に掘り起こされてしまうということは墓埋法がある限りないでしょう。
しかし霊園や寺院墓地が経営破綻や倒産した場合には、お墓の改装を検討することをおすすめします。管理の行き届かない霊園や墓地にお墓を残しておくと、お墓自体の劣化も進んでしまいます。

改葬先の例として、散骨や樹木葬などの自然葬、手元供養や最近では宇宙散骨葬まで幅広くあります。

関連記事:【海外リゾート散骨と海洋散骨の魅力

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散骨は遺骨を海や森林などの自然に還すため、一般的なお墓のように墓標は残りません。しかし万が一散骨業者が経営破綻や倒産をしても、お墓や遺骨の心配、また新たな改葬先を考えずに済むでしょう。手元供養だは、遺骨は基本的に自分で身近なところで管理し供養ができるので、経営破綻や倒産の心配もありません。

もちろん新たな霊園や墓地にお墓を建てるのも良いでしょう。しかし、お墓に対する価値観は変化してきています。そして多死社会や少子高齢化などでお墓の継承者やお墓を任せられる人がいなかった場合、そのお墓は無縁墓になってしまいます。

関連記事:【無縁墓になる前に墓じまいを考えてみませんか?

また霊園や寺院墓地の経営破綻や倒産によって、故人の永眠を妨げられるのは、遺族にとっても不本意なことだと思います。そのようなことを考慮しつつ、納得のいく改装先や供養方法を選択してみてはいかがでしょうか。

まとめまとめ

1.近年霊園や寺院墓地の経営破綻や倒産が増えてきている

2.霊園やお寺が経営破綻や倒産する理由には墓じまいや檀家離れがある

3.霊園やお寺の経営破綻や倒産に巻き込まれないために、経営母体の確認や、永代供養料や管理費用などの相場比較をすることも大切

4.霊園や寺院墓地が経営破綻や倒産した場合の改葬先の例として散骨や樹木葬、手元供養などが挙げられる

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