関東と関西の葬儀文化②~葬儀における慣習の違い

執筆者:Tomo

関東と関西の葬儀文化②~葬儀における慣習の違い

目次

関東と関西の異なる葬儀慣習

葬儀とは、故人を偲び、最期のお別れをする重要な儀式です。
それは地域ごとに異なる独自の慣習があります。

特に関東と関西では、葬儀関連に明確な違いが見られます。

関東は東京を中心に発展し、経済や政治の中心地としての役割を果たしてきました。
一方関西は、大阪や京都を中心に商業や文化の発展に大きな影響を与えてきました。
このような地域ごとの文化や特性が、葬儀にも反映されているのです。

例えば、関東の葬儀は厳粛で静かな雰囲気が重視されるのに対し、関西の葬儀は比較的和やかで、故人の生前の思い出を参列者で語り合うそうです。

以前、関東と関西の「収骨方法」「骨壷の大きさ」「墓石の色」の違いをご紹介しましたが、今回は関東と関西の「葬儀における慣習」の違いをご紹介します。

関連記事:【関東と関西の葬儀文化①~収骨方法と墓石の色の違い~

大阪通天閣

入り口に飾る花と樒の違い

葬儀では、会場や自宅の入り口に花輪を並べるのが一般的です。

関東では「花輪」、関西では「樒(しきみ)」を置きます。

樒とは主に関西、四国、九州などで育つ常緑樹です。古くから仏教と深く関連があり、重要とされていた植物で、邪気払いやお清めのために使われてきました。

樒が仏教で重要とされる理由は、主に2つあると言われています。

1つ目は、1688年に唐(現在の中国)で生まれた僧侶である「鑑真」が、日本に樒を持ち込んだからとされています。鑑真は日本における仏教と文化の発展に大きく貢献したことから、樒が仏教を象徴する植物となったそうです。

2つ目は、樒は「青蓮華(しょうれんげ)」に似ているからだそうです。青蓮華は、極楽浄土に咲くとされ、仏様の青い目を象徴する花として尊ばれています。
樒はその青蓮華に形が似ているため、真言宗の開祖である弘法大師(空海)は、青蓮華の代わりに樒を密教の修行に用いたと言われています。樒の漢字に「密」が含まれているのは、密教が由来であるという説もあります。

また樒には独特の香りがあるため、悪霊や邪気、害獣から守る効果があるとされ、昔は樒を土葬されたお墓の周りに植えていたそうです。

樒の見た目は、花というより緑の葉であるため、花輪に親しみのある関東の人からしたら、少し不思議に感じるかもしれませんね。

お通夜の後の食事の違い

関東ではお通夜の後、参列者全員に食事を振る舞います。これを「通夜振る舞い」と呼びます。

多くの人に料理を出すので、オードブルやお寿司など、大皿で用意することが一般的です。参列者は、一口でも飲み物や食べ物に手を付けるのがマナーとされていて、それが故人への供養となります。

一方関西では、焼香などを済ませてお通夜が終わった後、そのまま帰るのが一般的です。
食事は家族や親族のみで行うので、関東のような通夜振る舞いはありません。

ディナーバスケット

香典の違い

葬儀では香典の受け渡しを行います。それは関東と関西でも同じです。

関東では香典を受け取るのが一般的ですが、近年の関西では香典の受け取りを断る傾向が高まっています。

香典は本来、大切な人を失った遺族を経済的に支える役割があります。
しかし近年では「比較的低予算で行える」「参列者へ金銭の負担をかけたくない」「香典返しを準備する手間を省く」などの理由から、香典を受け取らないケースが増えています。

また、香典袋には水引がありますが、その色にも地域で違いがあります。
香典袋の色は、関東では「白黒」「銀色」で、関西は「白黄」銀色」です。
しかし、関西の中でも奈良県は例外で、白黒を使用します。

地域よって水引の色に違いがあるので、香典を用意する前に確認をしておきましょう。

関連記事:【香典マナー~金額相場や香典袋の選び方~

葬儀までの日数の違い

関東では、亡くなってから2~4日後に葬儀を行うのが一般的です。
これは、会場だけでなく火葬場の予約も押さえなければいけないためです。

葬儀の日程は火葬場の予約が取れてから決まります。首都圏では火葬場の空きがない場合も少なくありません。空きが出るまで待ってから葬儀を行うので日数がかかります。

関連記事:【多死社会における火葬待ち問題

一方関西では、比較的火葬場の予約を押さえやすいため、亡くなった翌日に葬儀を行うことが多いです。

国や地域による葬儀の特徴

大きく関東と関西に分けて、葬儀における慣習の違いをご紹介しましたが、全国にはまだまだ特徴のある葬儀があります。そこで個人的に気になったものを一部ご紹介します。

北海道:香典に領収証が出ます。専用の領収書も売られているそうです。

秋田:焼香に小銭を添えます。

茨城:お清めの塩と一緒に鰹節をかけます。

石川:お清めの塩と一緒にぬかをかけます。

和歌山:火葬炉のスイッチを喪主が押します。

京都:友引の日の葬儀では「友人形」と呼ばれる人形を一緒に焼きます。
大阪では「いちま人形」と呼ばれています。

岡山:妊婦さんが葬儀に参列する際には、お腹に鏡を入れるそうです。

必ずしも行われているわけではありませんが、昔からの慣習として今も大切に引き継がれています。

これまで当たり前だと思っていた慣習も、地域が変われば違いが生まれます。
それは日本だけではなく、世界でも同じです。

関連記事:【インドネシアのトラジャ族~葬儀やお墓・死生観について~

関連記事:【フィリピンの葬儀~賑やかに故人を送り出す~

関連記事:【オーストラリアの葬儀~文化・宗教的多様性と先住民族アボリジニ~

そして国や地域ごとの葬儀慣習を尊重することは、故人への敬意を示すことにも繋がることでしょう。

まとめまとめ

1.関東と関西では葬儀関連に明確な違いが見られる

2.葬儀では会場や自宅の入り口に関東では花輪、関西では樒を置く

3.関東では通夜振る舞いを行うが、関西では行わない

4.近年の関西では香典の受け取りを断る傾向が高まっている

5.関東では火葬待ち問題があるが、関西では比較的火葬の予約が取れやすい

6.国や地域ごとの葬儀慣習を尊重することは故人への敬意を示すことにも繋がる

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