注目されている永代供養
かつて、お墓は先祖代々受け継がれていくのが一般的でした。しかし核家族化や少子高齢化が進む現代では、途中でお墓を継ぐ人がいなくなってしまうケースが増えてきています。
そのような中、お墓の継承者がいなくても管理と供養をしてくれる「永代供養」が注目されています。永代供養とは、永代にわたって遺族の代わりにお寺や霊園が管理・供養をしてくれることです。
そのため「お墓の継承者がいない」「子どもにお墓の負担をかけたくない」と考える人や、身寄りのない人が永代供養を利用することが多くなっています。
そして、以下のような供養もお寺や霊園が行ってくれます。
・故人の冥福を祈る
・お墓や周辺を掃除する
・年忌の法要を執り行う
またお墓参りの代行も依頼できます。お墓参りの頻度や詳しい内容、故人の命日に希望する供養がある場合は、事前にお寺や霊園に確認しておきましょう。
永代供養は永久に供養してくれるの!?
「永代」と聞くと、どうしても「永遠」というイメージを持ってしまいませんか?
「永代」は「永世」とも同様の意味を持ち、また「永久」という意味で用いられることもあります。したがって、永代供養というと「永久に供養してもらえる」と思われがちです。しかし永代供養とは、決して「永久」に管理・供養をしてくれるわけではありません。実際は契約期間が決まっていることがほとんどです。
永代供養は、あくまでも一定の契約期間に限定されます。比較的多く見られるのは、33回忌までの期間です。場合によっては、10回忌や50回忌といった期間を設けるところもありますが、ほぼ世代をまたがず1代に限定した供養形態でしょう。
なので何世代にわたって承継したいと考えている人は、永代供養以外の方法を検討するのが良いと思います。「永久的にはお墓を承継できない」と考えておきましょう。
そして、永代供養の一定の契約期間が過ぎた後は、多くの場合「合同墓」や「合祀墓」と呼ばれる、他人と共同で使うお墓で遺骨は管理されます。それを知らずに、自分の親の遺骨が他人の遺骨と一緒に合祀墓に入れられるのを見てショックを受ける人や、後々親族間でトラブルになる場合があります。永代供養の意味を理解し、お寺や霊園によって契約期間は異なるので、予め確認しておきましょう。
永代供養のメリット
・管理や供養を任せられる
遺骨の管理や故人の供養などをお寺や霊園に任せられます。お墓があると自分たちでお墓の掃除や手入れをしたり、定期的に供養する必要もあります。そしてお墓が遠方にあった場合、その負担は大きいものになるでしょう。永代供養ではお墓にかかる手間を減らすことができます。
・一般的なお墓に比べて費用が安い
永代供養では一般的なお墓を建てるよりも安い費用でお墓が購入できます。新たに墓地を購入してお墓を建てるとなると、墓地の購入費用や墓石代などで数百万円かかる場合が少なくありません。個別の永代供養でさらに墓石まで建てる必要がある場合は、費用が高くなる傾向にありますが、それでも通常のお墓を建てるよりは安いでしょう。またお墓参りの際のお花や掃除の費用や、維持管理のための年間管理料や修繕費が不要になることで、全体的な費用も抑えられます。
この他にも、管理・供養してくれる人のいない「無縁仏」を避けられる、宗派を問わないのもメリットです。
永代供養のデメリット
・一定期間が経過すると遺骨は合祀される
先にも述べましたが、永代供養の多くは、一定の契約期間は遺骨を個別に保管し、期間が過ぎると合祀される場合がほとんどです。合祀は他人の遺骨と同じ場所に埋葬することで、一度合祀されると遺骨を取り出せません。
個別のお墓や集合墓も契約期間が過ぎると合祀するため、遺骨が取り出せなくなり、他の場所に移すのも不可能です。合祀される際は、親族間のトラブルを防ぐためにも事前に話し合ったり、本当に合祀して良いのかと考えましょう。そして将来的に合祀されることを事前に理解しておきましょう。多くの場合、33回忌のタイミングで合祀されることを知った上で永代供養を依頼することをオススメします。
・親族の了承を得にくい
近年永代供養は注目されていますが、一般的な供養方法ではありません。そのため永代供養をすることや、最終的に合祀されることに対して、親族の理解を得られないことがあります。特に先祖代々のお墓を守りたいと考えている親族や、合祀されることに抵抗を感じる親族がいた場合は注意しましょう。親族の了承を得ずに永代供養にしてしまうと、反感を持たれたり、親族間でトラブルが発生する可能性があります。
・お墓を継承できない
契約期間が過ぎれば、最終的には遺骨は合祀されます。期間が過ぎればお墓そのものがなくなるため、永代供養のお墓を子どもや孫に継承させることはできません。
子どもも一緒に入れる家族用の永代供養のお墓もありますが、そちらも永久に使用できるわけではありません。契約期間が決まっているため、期間が過ぎれば合祀されます。
・お寺や霊園が経営破綻や倒産
永代供養は「お寺の代が続く限り供養する」という努力目標でもあります。近年、墓じまいや葬儀の簡略化からお寺や霊園の経営破綻や倒産も珍しくありません。実際に北海道の納骨堂が経営破綻して、土地と建物が差し押さえられ、利用者が遺骨を取り出せなくなってしまったケースがあります。このようなリスクも含め慎重に選びましょう。
関連記事:【霊園やお寺の経営危機~理由から改葬先まで~】
永代供養のお墓の種類と費用
・個人墓
一般的なお墓と同様、個人用の墓石へ納骨されるのが「個人墓」と呼ばれるタイプです。契約期間が過ぎると、合祀されます。
そして個人墓の契約と合祀の費用が必要なため、永代供養の中でも一番費用がかかります。60~150万円程度でしょう。お墓の規模や敷地の広さによって変動します。またお寺へお布施を払う場合、さらに費用が高くなるでしょう。しかしお墓は屋外に建てられるため、開放感を得やすいメリットがあります。費用は高額になりますが、個人での供養を希望する遺族にとっては魅力的な方法です。
・供養塔
個人墓のように1人ずつ埋葬するお墓ではなく、他人の遺骨と一緒に埋葬する合祀用に建てられた供養塔に納骨する方法です。10~30万円程度です。お墓の管理や掃除などが省略できるため、費用も安めに設定されています。安価なことから永代供養の中でも選択される人が多いです。
・樹木葬
近年人気の樹木葬です。永代供養では10~30万円程度ですが、樹木の規模によって変わってきます。規模が大きいほど費用は高くなります。他人の遺骨と埋葬する場合は、大きな樹木を墓標とします。墓石とは異なり「自然に還る」というイメージがありますね。しかし樹木葬ならではのトラブルに注意しましょう。
関連記事:【樹木葬のトラブルとその対策~後悔しないために~】
・納骨堂
特定の建物で遺骨を管理・供養を依頼します。タイプによって費用は異なります。
・ロッカー型:20~50万円
・仏壇型:50~200万円
・位牌型:10~30万円
・自動搬送型:50~200万円
お寺の納骨堂は、管理や供養を懇切丁寧に行ってくれるそうです。
関連記事:【納骨堂~新たなお墓の選択肢として~】
永代供養と散骨の違い~供養の気持ち
永代供養では、お墓の継承者や管理が不要で、費用も安く抑えることが可能です。しかし近年同様の理由で「散骨」も注目を集めています。散骨とは故人の遺骨を粉骨し、海や森といった自然に還すことです。
従来のお墓や永代供養の場合では、永代供養のお墓や納骨した施設を訪ねて手を合わせるという、今までと変わらないお墓参りができますが、散骨では手を合わせる場所が形としては残りません。そして手をどこに向かって合わせていいのか戸惑い、不安に思うかもしれません。しかし、だからこそ散骨では供養の仕方も自由なのです。
家族で思い出を語り合ったり、散骨した場所へ行って手を合わせたり、家族で過ごすひとときが供養となります。新しい心の拠り所として、家族ならではのイベントを作ることをオススメします。例えば、家族揃ってお墓参りを兼ね、散骨した場所へ旅行をするのも良いでしょう。
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普段とは違う景色や食べ物を家族で楽しむことができるので、絆を深めることにも繋がります。それが海外なら尚更です。また「家族でお墓参りが楽しかった」という感覚は、故人を失った後の心の安定へも繋がるかもしれません。
お墓の継承者や管理が不要という面で永代供養と散骨は同じですが、故人を想う場所、お墓参りに対する自身の気持ちは変わってくるのではないでしょうか。