祖先のために旅をする16日間―インド・ガヤの「ピトリ・パクシャ」に学ぶ、墓じまい後の“会いに行く供養”

執筆者:Tomo

祖先のために旅をする16日間―インド・ガヤの「ピトリ・パクシャ」に学ぶ、墓じまい後の“会いに行く供養”

目次

秋のお彼岸が明け、日本ではお墓参りの季節がひと区切りを迎えました。同じ頃、インドでは祖先のための特別な期間が続いています。

ヒンドゥー教の暦で祖先を供養する時期とされる「ピトリ・パクシャ(Pitru Paksha)」。その中心地として知られるインド東部ビハール州のガヤには、今年も国内外から多くの人が集まり、ドイツやイタリア、ウクライナ、ガーナなど、海を越えてやって来た人たちが川辺で祖先に祈りを捧げたと報じられました。

一方、日本では10月2日、墓じまいを経験した人への調査結果が公表されています。お墓を整理したあと、私たちはどこで、どのように大切な人を想えばよいのでしょうか。今回は二つのニュースを手がかりに、「会いに行く供養」というかたちを考えてみます。

祖先のための16日間―インドの聖地ガヤに300万人超

インドの川辺で行われる朝の祈りの儀式(写真はヴァラナシのガンジス川)

「ピトリ・パクシャ」は、ヒンドゥー教徒が亡くなった祖先を供養する期間です。ビハール州観光局の案内によれば、この期間にはシュラーッダ、タルパン、ピンダ・ダーンといった儀礼が営まれ、ガヤではファルグ川で儀礼を行ったあと、ヴィシュヌパド寺院で祈りを捧げるのが習わしとされています。

儀礼の中心となる「ピンダ・ダーン」は、米などを丸めた団子状の供物(ピンダ)を祖先に捧げるもので、祖先の魂の安らぎと解脱(モークシャ)を願う意味があると説明されています。「タルパン」は水を捧げる儀礼とされます。遺灰をまく儀式ではなく、供物と祈りによる祖先供養であり、散骨とは別のものです。

ガヤ(現地報道では「ガヤ・ジー」とも表記されます)は、仏教の聖地ブッダガヤにもほど近い巡礼地です。今年は9月25日から10月10日までの16日間、「ピトリ・パクシャ・メーラー」と呼ばれる催しが開かれています。地元メディアは県当局の集計として、10月4日までに訪れた巡礼者が300万人を超えたと伝えています。州の観光当局も2,500床のテント村を設けるなどして、巡礼者を迎えているとのことです。

日本のお盆やお彼岸を思わせるように、一年のうちに「祖先のための時間」を設ける文化が、遠く離れたインドにも息づいていることがわかります。

海を越えて訪れる人、遠くから託す人

今年とくに注目されたのが、海外からの参加者です。インドのPTI通信は10月2日、ドイツ、ロシア、ウクライナ、ガーナなどから訪れた人々が、ファルグ川のほとりでピンダ・ダーンとタルパンを行ったと報じました。現地の祭司の話として、2日間に3つのグループ、あわせて48人が到着したと伝えられています。

参加者はサリーなどインドの伝統衣装を身に着け、亡くなった家族や友人を想って祈りを捧げたといいます。イタリア・ミラノから初めて訪れた女性は、祖先を供養する機会を得られたことへの感謝を語り、別の参加者は、儀礼の意味を理解するために1年かけて準備してきたと話したそうです。祭司によれば、息子や夫、きょうだいを亡くした人も訪れているとのことでした。

とはいえ、誰もが現地まで足を運べるわけではありません。報道によると、ビハール州の観光当局は、現地で儀礼を行うことが難しい人のために、離れた場所から依頼できる「e-ピンダ・ダーン」の仕組みも用意するとしています。自分の足で訪ねる道と、信頼できる人に託す道。その両方が用意されていることは、供養のかたちを考えるうえで示唆に富んでいます。

大切な人のために時間をつくり、旅をする。その行為そのものが、供養の一部になっているのかもしれません。

日本では墓じまい経験者の84%が「やってよかった」―最大の後悔は「もっと早く」

ここで日本に目を向けてみましょう。墓じまい・改葬の代行サービス「安心墓じまい」を運営する株式会社Sora Capitalは10月2日、墓じまいの進め方に関わった全国の40〜70歳の男女100名を対象としたインターネット調査の結果を公表しました(調査期間:2026年9月25日〜26日、安心墓じまい調べ)。

それによると、墓じまいを終えた現在の気持ちとして「やってよかった」「どちらかといえば、やってよかった」と答えた人は合わせて84.0%。「やらなければよかった」を選んだ人はいませんでした。振り返って「もっとこうすればよかった」と思うこととして最も多かったのは、「もっと早い時期に墓じまいをすればよかった」(36.0%)だったといいます。

事前に不安だったことと、実際に大変だったことの差も印象的です。

・費用


事前に不安を感じていた人は52.0%。実際に「想定より高くついた」などと答えた人は33.0%でした。

・お寺や霊園とのやり取り


離檀料の請求などを心配していた人は37.0%。実際に交渉が大変だったと答えた人は25.0%でした。

・親族の理解


理解を得られるか心配していた人は32.0%。実際に話し合いや調整に苦労したと答えた人は24.0%でした。

いずれの項目でも、実際に大変だったと答えた割合は事前の不安を下回っていました。ただし「親族の理解」だけは差が小さく、「もっと早く親族に相談・共有しておけばよかった」と答えた人も20.0%にのぼります。

なお、この調査は回答者が100名と小規模で、墓じまいの代行事業者によるものです。全体の傾向を示す数字というより、ひとつの参考として受け止めるのがよさそうです。それでも、手続きや費用は動き出せば見通しが立ちやすい一方、家族との話し合いには時間がかかる――そんな経験者の実感がうかがえます。

墓じまいの先に、「会いに行ける場所」を持つという選択

墓じまいを終えたあと、遺骨をどこへ移すかは人それぞれです。永代供養墓や納骨堂、樹木葬、手元供養、そして散骨。どれを選ぶにしても、「これからどこで手を合わせるのか」は、あらかじめ家族で話しておきたい点です。

ガヤを訪れる人々の姿は、ひとつのヒントを与えてくれます。供養の場所は、必ずしも家の近くにある必要はないのかもしれません。年に一度でも、数年に一度でも、その人を想って出かけていく場所がある。それもまた、絆を保ち続けるひとつのかたちです。

弊社「海と森のセレモニー」がご提案している海外リゾート散骨も、この考え方に通じています。リゾート(Resort)という言葉には「何度も通う場所」という意味合いもあるとされ、セブ島やハワイ、バリ島、グレートバリアリーフ近海など、訪れるたびに思い出が増えていく場所を、大切な人の眠る場所として選ぶことができます。

散骨は弊社スタッフによる代行を基本としており、ご家族が現地に行けない場合でも、写真や動画、散骨証明書で当日の様子をご確認いただけます。ご自身で現地を訪れて立ち会うことも可能です(現地でのアテンドや航空券・ホテルの手配は承っておりません)。託すことと、会いに行くこと。ご家族の事情に合わせて、どちらも選んでいただけます。

なお、お墓から取り出した遺骨を散骨する場合の手続きには注意が必要です。東京都保健医療局は、ほかのお墓や納骨堂へ遺骨を移す場合は区市町村の改葬許可が必要である一方、散骨のために取り出す場合は区市町村によって取扱いが異なるとして、必要な手続きを自治体に確認するよう案内しています。墓じまいと散骨をあわせて検討される際は、まずお墓のある自治体と墓地の管理者に相談されることをおすすめします。

墓じまいは、供養を終わらせることではなく、これからの供養のかたちを選び直すことだといえます。遠いインドの川辺に集う人々のように、「あの人に会いに行く」と思える場所を持てることが、お墓を整理したあとの心の支えになるのではないでしょうか。

関連記事:【墓じまいに罪悪感を感じていませんか?―「故郷じまい」しても消えない絆と、また会いに行ける供養のかたち】

関連記事:【散骨したら、お彼岸はどう過ごす?―「向こう岸」という言葉の意味と、水辺で故人を想う世界の習わし】

関連記事:【代理散骨のメリットとデメリット】

参考:
Foreigners perform pind daan in Bihar’s Gaya Ji during Pitru Paksha(PTI/ThePrint)
Pitru Paksha 2026 Day 11: Pind Daan At Gaya Sir-Koop(Patna Press)
Pitru Paksha Mela 2026: Bihar Tourism to Set Up 2,500-Bed Tent City in Gaya(Patna Press)
Pitrapaksha(Bihar Tourism/ビハール州観光局)
shraddha(Encyclopaedia Britannica)
Sohra Shraddha begins(Setopati)
【実態調査】墓じまい経験者の84%が「やってよかった」――最大の後悔は「もっと早くすればよかった」(株式会社Sora Capital/安心墓じまい調べ)
散骨に関する留意事項(東京都保健医療局)

まとめまとめ

1.インド・ビハール州ガヤでは、祖先供養の期間「ピトリ・パクシャ」に合わせた催しが2026年9月25日〜10月10日に開かれ、地元メディアは巡礼者が300万人を超えたと報じている

2.10月2日にはドイツ、ロシア、ウクライナ、ガーナなど海外からの参加者が川辺で儀礼を行ったと報じられ、離れた場所から依頼できる「e-ピンダ・ダーン」も用意するとされている

3.日本では、墓じまい経験者100名への調査で84.0%が「やってよかった」と回答。最も多かった後悔は「もっと早くすればよかった」(36.0%)

4.費用や手続きへの不安は実際には小さくなる傾向が見られた一方、親族との話し合いは早めに始めたい課題

5.お墓から取り出した遺骨を散骨する場合、手続きの取扱いは自治体によって異なるため事前の確認が必要

6.海外リゾート散骨は、託すことも、会いに行くこともできる「また会いに行きたくなる場所」を持つ選択肢の一つとなり得る

タグ

おすすめ記事

Contact

海外散骨のご相談・お申し込み

どのような些細なことでも、お気軽にご相談ください。
全国どこからでも、ご来店なしでお申し込みいただけます。