海に還るか、森に還るか―海洋散骨・樹木葬・森林散骨の違いと、“自然に還る”供養の選び方

執筆者:ムラタ

海に還るか、森に還るか―海洋散骨・樹木葬・森林散骨の違いと、“自然に還る”供養の選び方

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「お墓はいらないから、自然に還してほしい」――終活のご相談で、こうした言葉を耳にする機会が増えました。けれども、ひと口に“自然に還る”といっても、思い浮かべる風景は人それぞれです。青い海なのか、木漏れ日の森なのか。遺骨を“まく”のか、土に“埋める”のか。実は、その違いによって法律上の扱いも、ご家族のその後のお参りのかたちも変わってきます。

2026年10月14日から神戸市の大丸神戸店で開かれる終活イベントでは、初日に、海洋散骨と森に還る「循環葬」をテーマに“自分に合う終い方”を考えるセミナーが予定されています。海の向こうでも、米オレゴン州の公共ラジオ局Jefferson Public Radioが10月6日、アッシュランド近郊で行われている、墓所に在来種の木を植える自然埋葬の取り組みを紹介しました。「海に還るか、森に還るか」を自分で選ぶ時代になりつつある今、それぞれの違いと選び方を整理してみます。

「自然に還る」は一つではない―“まく”供養と“埋める”供養

自然に還る供養は「自然葬」と総称されることがありますが、実は、遺骨を“まく”ものと“埋める”ものに大きく分かれます。前者が海洋散骨や森林散骨、後者が樹木葬や樹林葬、循環葬です。

この違いは、見た目以上に大きな意味を持ちます。日本のお墓のルールを定める「墓地、埋葬等に関する法律」には、次の条文があります。

埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。(墓地、埋葬等に関する法律 第4条第1項)

つまり、火葬後の遺骨を土の中に納める場合は、都道府県知事などから墓地として許可を受けた区域でなければなりません。「自然に還るのだから、自宅の庭や好きな山に埋めてもよい」というのは誤解で、違反した場合の罰則も定められています。樹木葬や循環葬は、森や庭園のような景観であっても、法律上は「墓地」に遺骨を埋蔵する供養です。

一方の散骨について、令和2年度の厚生労働科学特別研究事業で取りまとめられた「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」は、焼骨を粉状に砕き、埋蔵や収蔵以外の方法で陸地または水面に散布・投下する行為と定義しています。お墓に納めるのとは別の方法だからこそ、場所の選び方や周囲への配慮について、別のルールやマナーが求められるわけです。

本記事は2026年10月時点で公開されている情報をもとにした一般的なご案内であり、法的な助言ではありません。散骨や埋蔵の取扱いは自治体や国・地域によって異なり、変更されることもありますので、実施前に必ず関係機関や事業者にご確認ください。

海に還る―海洋散骨の特徴

日本で「散骨」といえば、まず思い浮かぶのが海でしょう。日本経済新聞は2026年、海洋散骨が2025年に6,690件となり、7年で6倍に増えたと報じています。墓じまいが進むなかで、お墓の役割を海に託す人が増えているといいます。

前述のガイドラインは、海で散骨を行う場所を「海岸から一定の距離以上離れた海域」とし、焼骨は形状を視認できないよう粉状に砕くこと、プラスチックやビニールなどを原材料とする副葬品を投下しないこと、散骨後に散骨証明書を交付することなどを事業者に求めています。

海洋散骨の特徴は、墓標を残さず、継ぐ人も管理も必要としない点にあります。海が好きだった方、旅や船が好きだった方、「子どもにお墓の負担を残したくない」と考える方に選ばれることが多い供養です。海はひと続きですから、遠く離れた海辺からでも故人を想うことができます。

その一方で、一度まいた遺骨は手元に戻せず、目印になる場所も残りません。散骨した地点の記録を残してもらう、遺骨の一部を手元に置くといった工夫を、あらかじめ考えておくと安心です。

関連記事:【散骨したら、お彼岸はどう過ごす?―「向こう岸」という言葉の意味と、水辺で故人を想う世界の習わし】

森に還る―樹木葬・樹林葬・循環葬・森林散骨の違い

木々の間から日が差し込む森

「森に還りたい」という願いに応える方法は、海よりも種類が多く、少し複雑です。主なものを整理します。

・樹木葬


墓地として許可を受けた区域で、墓石の代わりに樹木や草花を墓標とするお墓です。山林を生かした里山型から、都市部の霊園に設けられた庭園型まで形はさまざまで、個別の区画に納めるものもあれば、ほかの方と一緒に埋蔵されるものもあります。

・樹林葬


個々の墓標を設けず、樹林そのものを墓所とする方法です。神戸市がひよどりごえ森林公園内に整備した市立の樹林葬墓地では、粉骨を土と混ぜて直接埋蔵し、供用開始から50年が過ぎたあとは墓地としての管理を終えて自然の山林に戻す計画とされています。使用料は1体につき15万円。2026年の募集では、80体程度の予定数に対して1,038体の申し込みがあり、市は抽選を行わず、資格に該当する方全員に使用を許可する予定だと発表しました。

・循環葬


寺院が守ってきた森の土中に、粉骨した遺骨を埋葬する民間の取り組みです。墓標は建てず、森全体がお参りの対象になります。運営会社の案内によると、埋葬後に遺骨を返還することはできません。現在は大阪府能勢町と千葉県南房総市に拠点があります。

・森林散骨(山林散骨)


土に埋めるのではなく、粉骨した遺骨を地表にまく方法です。ガイドラインは陸上での散骨について「あらかじめ特定した区域(河川及び湖沼を除く。)」で行うこととしており、土地の所有者の承諾や周辺への配慮が欠かせません。散骨や散骨場の経営を条例で規制している自治体もあり、日本で森林散骨を行える場所は限られているのが実情です。

こうして見ると、日本で「森に還る」という場合、その多くは“まく”のではなく、墓地として認められた森に“埋める”かたちだとわかります。お参りに通える場所が残るという安心がある反面、申し込める地域や人数が限られることもあります。

関連記事:【墓参りが「行けない」を「行きたい」に変える―樹林葬人気と代行サービス拡大に見る、これからの供養のかたち】

関連記事:【三重県大台町の散骨条例案~散骨の広がりと地域の課題~】

海か森か、迷ったときの4つの視点

海と森、どちらにも良さがあります。迷ったときは、次の4つの視点から考えてみてはいかがでしょうか。

・故人や自分が好きだった風景


釣りや航海、波の音が好きだった方には海が、山歩きや木々の静けさを愛した方には森が似合うかもしれません。「その人らしい場所はどこか」は、ご家族が納得するためのいちばんの手がかりになります。

・家族がどうやって会いに行くか


海の場合は、船で沖へ出るほか、海辺から手を合わせることもできます。森の場合は、歩いて訪ねられる場所が残ります。年齢を重ねても無理なく通えるか、その土地を訪ねること自体が楽しみになるかどうかも、考えておきたい点です。

・遺骨をあとから動かせるか


海にまく散骨も、土に還すことを前提にした埋蔵も、原則として遺骨を取り戻すことはできません。迷いが残るときは、遺骨の一部を手元供養として残す、分骨して複数の場所で供養するといった方法もあります。

・費用と、その後の管理


継ぐ人が要るのか、年ごとの管理費がかかるのか、何年先まで管理されるのか。費用は総額だけでなく、「その後」に何が残るのかまで含めて比べることが大切です。

大切なのは、どちらが優れているかではなく、送る側と送られる側の双方が「ここでよかった」と思えるかどうかです。元気なうちにご家族と話し合い、希望を言葉にして伝えておくことが、いちばんの備えになります。

関連記事:【ロックフェスで息子の遺灰をまいた母―「思い出の場所で眠らせたい」という願いを、ルールの中で叶えるには】

海外なら「海」も「森」も選べる―フィンランドやオランダの森林散骨

日本では難しい森林での散骨も、国が変わればルールも変わります。

たとえばフィンランドでは、墓地以外の場所に遺灰を納める場合、土地の所有者または管理者の同意が必要とされています。国有地を管理する国営企業メッツァハッリトゥス(Metsähallitus)は、管理する土地への申請には原則として好意的に対応するとしたうえで、同意の対象は基本的に“まく”散骨であり、土中への埋葬は対象外だと案内しています。

オランダでも、自治体の案内によれば、遺灰は外洋または専用の散骨場にまくことができ、それ以外の場所にまく場合は土地所有者の許可が必要とされています。森や自然のなかでの散骨が、所有者の同意という手続きを通じて認められている点は、両国に共通しています。

冒頭で触れたオレゴン州の自然埋葬では、防腐処理やコンクリート製の外枠を使わずに遺体を土へ還し、墓所にはオレゴンホワイトオークやマドローネといった在来の木を植えることを選べるといいます。土地の再生と、遺族がその場所とつながり続けることを結びつけた試みです。方法は違っても、「大切な人が自然の一部になり、そこへまた会いに行ける」という願いは、国を越えて共通しているのではないでしょうか。

海と森のセレモニーは、その名のとおり、海外での海洋散骨と森林散骨を専門とする散骨代行サービスです。ハワイやセブ島、グレートバリアリーフ近海などでの海洋散骨に加え、フィンランドやオランダでは森林散骨にも対応しています。フィンランドでは、現地の管理団体の許可を得たうえで、ヘルシンキ近郊のシポーンコルピ国立公園で森林散骨を行っています。お申し込みから完了のご報告までご来店は不要で、散骨の様子は写真や動画で記録し、散骨証明書とあわせてお届けします。

海に還るか、森に還るか。その問いは、「どこでなら、あの人にまた会いたくなるだろう」という問いでもあります。答えは一つではありません。ご家族にとっての“その場所”を探すお手伝いができましたら幸いです。どうぞお気軽にご相談ください。

関連記事:【フィンランド・シポーンコルピ国立公園での森林散骨と、ハイキング・サウナを味わう旅】

参考:
【10/14 大丸神戸店】海洋散骨?循環葬®?自分に合う“終い方”の選び方(YOMI International株式会社/PR TIMES)
Natural burial near Ashland connects remembrance with restoration(Jefferson Public Radio)
墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)(厚生労働省)
散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)(厚生労働省)
「海洋散骨」7年で6倍、年6600件 葬送ニッポンの景色一変(日本経済新聞)
“樹林葬墓地”の利用希望者を募集します(神戸市)
樹林葬墓地の利用希望者募集結果(神戸市)
よくあるご質問(循環葬 RETURN TO NATURE)
Consent for Placing a Deceased Person’s Ashes(Metsähallitus)
Scattering ashes(Gemeente Voorschoten)

まとめまとめ

1.“自然に還る”供養は、遺骨を“まく”もの(海洋散骨・森林散骨)と“埋める”もの(樹木葬・樹林葬・循環葬)に大きく分かれる

2.墓地、埋葬等に関する法律第4条により、焼骨を土中に納められるのは墓地として許可を受けた区域のみ。自宅の庭や好きな山に埋めることはできない

3.海洋散骨は2025年に6,690件、7年で6倍と報じられている。墓標も承継も必要としない一方、まいた遺骨は戻せず、目印になる場所も残らない

4.神戸市の樹林葬墓地には80体程度の募集に1,038体の申し込みがあった。日本で「森に還る」方法の多くは、墓地として認められた森に“埋める”かたち

5.海か森かで迷ったときは、好きだった風景・会いに行く方法・遺骨をあとから動かせるか・費用とその後の管理の4つの視点で考える

6.フィンランドやオランダでは土地の所有者・管理者の同意を得ることで森林散骨が可能とされ、海外リゾート散骨なら海も森も選択肢になる

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