2026年の秋のお彼岸は、9月20日(日)から26日(土)までの7日間。ちょうど真ん中の9月23日、秋分の日を迎えました。お墓の掃除をして、おはぎを供えて、家族そろって手を合わせる――そんな光景が各地で見られる季節です。
一方で、散骨を選んだご家族からは、こんな声を聞くことがあります。「お墓がない私たちは、お彼岸に何をすればいいのでしょう」。行き先となる墓石がないぶん、どこか取り残されたような気持ちになってしまうのかもしれません。
今回は、「彼岸」という言葉がもともと持っている意味をひもときながら、海の向こう・カナダで始まったばかりの新しい取り組みも参考に、お墓がなくても故人を想う時間は持てるということを考えてみたいと思います。
そもそも「彼岸」とは“向こう岸”のこと
実は「彼岸」という言葉自体には、お墓の意味は含まれていません。仏教の解説によれば、彼岸は古代インドの言葉「パーラミター(波羅蜜多)」を漢訳した「到彼岸(とうひがん)」を略したものとされ、文字どおり“向こう岸”を指します。迷いや悩みの多い私たちの世界を「此岸(しがん)」と呼び、そこから川を渡った先にある仏の世界が「彼岸」です。
春分と秋分の日は、太陽が真東から昇り、真西へ沈む日でもあります。浄土教では極楽浄土は西の方角にあると考えられてきたため、太陽がまっすぐ西へ沈むこの時期に、向こう岸へ想いを馳せ、先祖をしのぶ習慣が定着していったといわれています。浄土宗の公式サイトでも、お彼岸には西に沈む夕日を眺めてみてはどうか、という提案がなされています。
つまりお彼岸の本質は、「どこで手を合わせるか」よりも「向こう岸にいる大切な人を、あらためて想うこと」にあるといえそうです。お墓参りは、そのための代表的な方法のひとつ、と捉えることもできるのではないでしょうか。
水辺で故人を想うのは、世界に共通する感覚
「川の向こう」「海の向こう」に大切な人がいる、という感覚は、日本に限ったものではないようです。2026年9月、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のサリー市は、市内を流れるフレーザー川沿いの公共桟橋「Surrey Public Wharf」を、遺灰をまく儀式のための専用スペースとして試験的に開放すると発表しました。
市の案内によれば、水に遺灰を還すことは、多くの人にとって文化的・宗教的・個人的に大切な意味を持つ儀式であり、故人が自然へ還ることを象徴するものだと位置づけられています。サリー市長も、流れる水に遺灰を還すことは多くの家族にとって大切な習わしである、という趣旨のコメントを寄せています。
予約は9月21日から市のウェブサイトで受け付けが始まり、利用できるのは市内在住者のみ。手数料は1回237カナダドル(税別)で、儀式は月・木・土曜日に、最長6週間先まで予約できる仕組みです。一方で、川に入れてよいのは遺灰のみで、花やろうそく、写真、食べ物などを残していくことは禁止されており、環境への配慮と、ほかの利用者への敬意が重視されています。
日本でも、お盆の灯籠流しや精霊流しのように、水の流れに想いを託す習わしが各地に受け継がれてきました。海洋散骨についても、2021年に厚生労働省が散骨事業者向けのガイドラインを公表するなど、節度と配慮を前提とした形が整えられつつあります。水辺で故人を想う文化は、国や宗教が違っても、どこか通じ合うものがあるように感じます。
散骨を選んだ家族の、お彼岸の過ごし方
では、お墓を持たない選択をしたご家族は、お彼岸をどう過ごせばよいのでしょうか。決まった作法があるわけではありませんが、「向こう岸を想う」という本来の意味に立ち返ると、いくつかのかたちが見えてきます。
・西の空に沈む夕日に手を合わせる
秋分の日前後は、太陽がほぼ真西に沈みます。ベランダや近所の公園、海辺など、夕日が見える場所で少し立ち止まるだけでも、お彼岸らしい時間になります。
・散骨した海の方角を向いて、故人を想う
ハワイやセブ島など、遠い海で眠る人を想うなら、その方角を向いて静かに語りかけてみる。地図アプリで方角を確かめるのも、家族で話すきっかけになります。
・写真や手元供養の前に、おはぎを供える
お墓がなくても、写真や手元に残したご遺骨の前に季節のお供えをすることはできます。故人が好きだったお菓子や飲み物を添えるのも素敵です。
・家族で思い出を語り合う
連休で家族が集まりやすいこの時期は、故人の話をするのにぴったりのタイミングです。散骨の日の写真を見返しながら、当時のことを振り返ってみてはいかがでしょうか。
・「お彼岸の旅」として、散骨した場所を訪ねる
お彼岸やお盆、命日などに合わせて、散骨した海を訪れる計画を立てるのもひとつの方法です。旅そのものが、故人に会いに行く時間になります。
「お墓がないと、きちんと供養できない」というのは、よくある誤解のひとつです。大切なのは形式よりも、故人を想う気持ちを、無理なく続けられるかたちで持ち続けることではないでしょうか。
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参考:
Ash Scattering Wharf - Pilot Project(City of Surrey)
Surrey opening ash-scattering place at Surrey Public Wharf(Surrey Now-Leader)
彼岸|仏教語豆事典(浄土真宗本願寺派)
沈みゆく夕日に浄土を想う 秋彼岸(浄土宗)
秋のお彼岸はいつ?2026年の日程とお墓参りの時期・やること
散骨の法律と手続きガイド(行政書士法人Tree)




