注目されている古墳墓
日本のお墓は、石碑に家名や戒名を刻み、先祖代々が同じ場所に祀られるのが一般的です。
その多くはお寺や霊園の区画内に設置されます。そして墓石の前には香炉や花立てがあり、参拝者が線香やお花を供えて故人を偲びます。お墓は、先祖供養や家族の絆を深める役割も果たしていて、お盆やお彼岸、命日には家族や親族が集まって、供養を行うのが伝統とされています。
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そのようなお墓ですが、近年では散骨、樹木葬、永代供養墓などの様々な新しい供養のかたちが広がりつつあります。そして最近注目されているのが「古墳墓」と呼ばれるお墓です。
古墳と聞くと、日本の古墳時代(3世紀後半~7世紀頃)に天皇や王族などが埋葬されたお墓を思い浮かべると思います。現在も大仙陵古墳や誉田御廟山古墳など、有名な前方後円墳が残っていますね。
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そして、その古墳というインパクトから、巨大な前方後円墳を模したお墓「古墳墓」に人気が殺到しているそうです。
福岡・新宮霊園の古墳型永久墓
日本初の古墳墓は、福岡県新宮町の玄界灘を一望できる場所に「新宮霊園」によってつくられたと言われています。そして令和4年4月から、「古墳型永久墓」として売り出したところ、販売目標をはるかに上回り、約1年で約900人分が完売したのです。
古墳墓の大きさは、全長53m、円墳部分の直径16.3m、高さ3.5mで、全体は芝で覆われ、周囲には死者の魂を鎮めるために置かれたという埴輪が40体ほど並べられているそうです。そして全体で3100人分を納骨できるとされています。
また1人分の区画は30cm四方で、芝生にそれぞれに番号が振られ、石で作られた銘板に亡くなった人の名前が刻まれます。埋葬をする際には、表面の芝から15cmほど下の土中にある樹脂製の納骨室に骨壺を納め、再び土で覆います。土中の微生物が分解できる綿を使った納骨袋で埋葬する方法もあり、土に還ることも可能だそうです。
なぜ前方後円墳を模したお墓を開発したのでしょうか。
新宮霊園の広報室長によると、「亡くなった後、土に還りたいという自然葬への要望が多く寄せられていた」とのことです。そして「宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産に登録されたことにも刺激を受け、そこから古墳型永久墓のインスピレーションを得て、実際の古墳の実地調査もして構想を温めたそうです。
また「古墳型永久墓の契約者は、お墓の継承者がいない、あるいは子孫に墓守の負担を掛けたくないという方が多い。家族の在り方や考え方の変化がお墓のかたちにも表れてきた」とも語っていました。
実際、近年では継承者不要のお墓を選ぶ人が増えています。【第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)】によると、樹木葬を選んでいる割合が、48.7%と全体の約半数を占めています。
樹木葬は、従来のお墓と違い毎年の維持管理費用がかからない場合が多く、お墓の継承者も墓じまいも不要ということもあり人気を集めています。また、散骨も同様にそのような心配をする必要がないため、とても注目されています。
株式会社前方後円墳の古墳墓~竹田恒泰氏が創業
先述した新宮霊園以外にも、2024年に竹田恒泰氏によって創業された「株式会社前方後円墳」では、日本の古墳文化を現代に蘇らせ、新しい供養のかたちとして「古墳墓」を全国展開させています。
竹田氏は、古代日本の文化遺産としての古墳に着目して、日本人のルーツや伝統を再認識する場を作りたいという思いでこの事業を立ち上げました。
近年、少子高齢化や核家族化の影響で、従来の墓石を建てる供養形態が減少し、管理負担の少ない樹木葬や散骨が主流になってきています。株式会社前方後円墳では、このような社会の変化に対応しながらも、日本の歴史と伝統に根ざした供養文化を普及させることを目的としているそうです。
また古墳墓は、伝統的な古墳の形状を再現したり、自然との調和を重視し、訪れる人が安らぎや歴史的な雰囲気を感じながら故人を偲ぶことができるようにつくられています。さらに副葬品として御鏡、御剣、勾玉、埴輪の製作も行っています。
個人用、家族用の区画に加え、永代供養墓としての利用も可能で、お墓の継承者がいない場合でも安心して利用できる点も魅力になっています。
株式会社前方後円墳は、今後も新たな古墳墓のデザインや技術を開発し、さらに多くの地域に普及を目指しているそうです。また、歴史教育や地域振興と連携し、古墳文化への理解を深めるイベントの開催なども計画しています。竹田氏は、「古墳墓は単なる供養の場ではなく、日本人のアイデンティティを再確認する場所である」と強調し、その普及が日本の社会において大きな意義を持つと考えています。
このような古墳墓のように、従来のお墓の枠にとらわれない自由な供養のかたちは、今後もますます注目されることでしょう。
自由な供養のかたち~散骨や古墳墓
古墳墓はネットでも話題になっています。
「お墓参りが楽しくなりそう」「埴輪とかたくさんあってにぎやかだし、古墳好きにはたまりません」「すごく面白い企画だけど1000年後の考古学者が混乱しそうですね」などの意見がありました。
また実際に契約した人の中には、「兄の遺骨を納骨堂に納めているが、自身が他界した後は管理費を払う人がいなくなる。継続的な支払いがなく、後々のことを心配する必要がなく安心」「娘は嫁いでいるので管理面や金銭面で負担がかからないようにしたい。墓石がなく、その管理や掃除が負担にならないのがよい」との意見があったそうです。
そして近年、古墳墓のような合葬墓は、年々人気が高まってきています。その背景として、少子高齢化でお墓の継承者がいなかったり、都市化で親と子どもが離れて暮らしていたり、家族のかたちの変化がお墓の在り方に影響しているのでしょう。
また自由で新しい供養のかたちとして「散骨」も急速に普及しつつあります。散骨は、遺骨を粉末状にして海や山など自然に還す供養方法で、お墓の継承者問題や維持管理の負担をかけない点でも、多くの人に受け入れられています。そして自然と一体化するという発想から、海や森へ遺骨を撒くことが心の安らぎにつながると考える人も多くいます。さらに、弊社では海外のリゾート地での散骨を行っていて、家族が旅行を兼ねて故人を偲ぶことで、古墳墓のようにお墓参りが楽しくなるかもしれません。
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これからの日本では、古墳墓や散骨のような、お墓の継承者不要、維持管理の負担を減らす供養が主流になりつつあります。少子高齢化が進む中、家族の在り方が多様化し、それに伴って供養のかたちも変わっていくと思います。そして新しい選択肢が広がることで、従来の形式に縛られず、供養がより自由で個人の価値観に合ったものになり、故人への想いが大切にされる時代が訪れることでしょう。