11月に入ると、郵便局の店先に年賀はがきが並びはじめます。今年身内を亡くしたご家庭では、年賀状の代わりに「喪中はがき」を準備する季節でもありますね。
散骨で故人を見送ったご家族から、この時期にうかがうことがあります。「はがきに散骨のことを書くべきか迷っている」「あとで『お墓はどこ?』と聞かれたら、どう答えればいいのだろう」。お墓がある前提で作られてきた習慣のなかで、お墓を持たない見送りをどう伝えるかは、意外と悩ましいものです。
今回は、2027年用の年賀はがきの発売と、イタリア・サルデーニャ島で10月に行われた海洋散骨の報道をきっかけに、散骨したことを周りの人にどう知らせるかを考えてみます。
年賀状が減っても、喪中はがきが担う役割
日本郵便は2026年11月2日、2027年用の年賀はがきの販売を始めました。当初の発行枚数は5.6億枚で、前の年(7.5億枚)の約74.3%にとどまります。SNSで新年のあいさつを済ませる人が増え、「年賀状じまい」という言葉もすっかり定着しました。
それでも、喪中はがきには年賀状とは少し違う役割があります。本来は「喪に服しているので、新年のごあいさつを控えます」という年賀欠礼のお知らせです。一般的には、相手が年賀状の準備を始める前の、11月中旬から12月初旬ごろまでに届くように出すのが目安とされています。
そして最近は、はがきが「亡くなったことを初めて知らせる手紙」になる場面が増えています。鎌倉新書が2026年5月に公表した「第7回お葬式に関する全国調査」では、実際に行った葬儀のうち家族葬が47.0%で最も多くなりました。家族だけで見送ると、友人や知人の多くは、年末に届く喪中はがきで訃報を知ることになります。
散骨を選んだご家族にとっても、事情は同じです。喪中はがきは、故人とつながりのあった人に「どのように見送ったか」をそっと伝える、数少ない機会といえるのではないでしょうか。
散骨のことは、書く?書かない?
まず知っておきたいのは、喪中はがきに散骨のことを書かなければならない、という決まりはないということです。葬儀の形式や納骨の場所を書かないはがきも、ごく一般的です。
そのうえで、書くかどうかを考えるときのヒントをいくつかご紹介します。
・書くなら、短い一文で十分
喪中はがきは、お知らせとお礼を簡潔に伝えるものです。散骨のことに触れるなら、「故人の希望により」「遺骨は海に還しました」といった一文を添えるくらいがちょうどよいでしょう。理由をくわしく説明したり、散骨のよさを伝えたりする必要はありません。
文面の例:「母〇〇が本年〇月に永眠いたしました。葬儀は家族のみで執り行い、遺骨は本人の希望により、思い出のハワイの海に還しました。生前のご厚情に深く感謝申し上げます。」
・相手によって、はがきを分けてもよい
故人と親しかった友人には散骨のことまで伝え、仕事関係の方には年賀欠礼だけを伝える。そうした使い分けも、失礼にはあたらないと考えられます。誰に何を伝えたいかは、ご家族で決めてよいことです。
・親族には、はがきより先に直接伝える
お墓に対する思いは、世代や地域によってさまざまです。散骨にまだなじみのない親族が、はがきで初めて知って驚いてしまうこともあります。近しい親族には、電話や顔を合わせる機会に、自分たちの言葉で伝えておくと、気持ちのすれ違いを防ぎやすくなります。
・間に合わなければ、寒中見舞いで
喪中はがきを出しそびれたり、年賀状をいただいてから訃報を伝えることになったりしても、心配はいりません。松の内(一般に1月7日まで)が明けてから、寒中見舞いで報告する方法があります。
関連記事:【散骨はいつ行う?―四十九日・一周忌・命日…「急がなくていい」遺骨との時間と、送り出すタイミングの考え方】
「お参りしたい」と言われたら
喪中はがきを受け取った方から、「お線香をあげに伺いたい」「お墓参りをさせてほしい」と連絡が来ることもあります。散骨をしていると、ここで言葉に詰まってしまうかもしれません。
けれども、相手が本当に望んでいるのは、故人を偲び、ご家族に気持ちを届けることではないでしょうか。そう考えると、お墓がなくても応えられる方法はいくつもあります。
たとえば、ご自宅で写真に手を合わせてもらう。手元供養をしているなら、その遺骨に向き合ってもらう。散骨した海の写真や、散骨証明書(業者が散骨を行った日時や場所を記した書面)を見ながら、思い出話をする。「海に還った」と知った友人が、自分の暮らす町の海辺で故人を思い出す。それもまた、ひとつのお参りのかたちです。
香典や供物をお断りしたい場合は、喪中はがきに「ご香典やご供物の儀は辞退申し上げます」などと一言添えておくと、受け取った方も迷わずに済みます。
関連記事:【お墓がなくても、記憶は手渡せる―散骨のあと、故人の思い出を次の世代へつなぐ方法】
海外の散骨に見る、「場所を分かち合う」ということ

イタリアのサルデーニャ島から、10月にこんな知らせが届きました。地元紙ラ・ウニオーネ・サルダによると、5月にモルディブでのダイビング中の事故で亡くなった海洋生物学者の女性と娘の遺灰が、島の西岸にあるカーポ・マンヌの沖にまかれたといいます。
女性は子どものころから毎年、近くの海辺の村で夏を過ごし、地元の人たちと深い絆を育んできました。カーポ・マンヌは母娘がいちばん好きだった場所で、そこで永遠に眠りたいというのが2人の願いだったそうです。散骨は、州の規則で定められた期間を待ったうえで行われました。早朝に小さなボートで港を出て、夫と息子、親しい友人や家族が静かに見送ったと伝えられています。
印象に残るのは、その後の話です。友人たちは、彼女が休暇中の早朝によく走っていたカーポ・マンヌの砂岩に、追悼の言葉を刻む計画を立てているといいます。
お墓という「決まった場所」がなくても、「あの人はあの海に還った」と分かち合えれば、そこは故人を知る人たちにとって会いに行ける場所になります。どこに還ったのかを伝えることは、故人を偲ぶ場所を、ほかの人とも分け合うことなのかもしれません。
弊社が行っている海外リゾート散骨でも、ハワイやバリ島など、故人が愛した旅先の海を選ばれるご家族が多くいらっしゃいます。喪中はがきに「思い出のハワイの海に還しました」と一文あるだけで、受け取った方の心にも、その海の景色が浮かぶのではないでしょうか。
関連記事:【散骨で献花はできる?花を手向ける意味と選び方・注意点~海外リゾート散骨で現地の花を用意する理由~】
伝え方に正解はないからこそ、家族で
喪中はがきに散骨のことを書くかどうか。どこまでの人に、どんな言葉で伝えるか。どれを選んでも間違いではなく、故人と、故人を大切に思ってくれた人たちへの気遣いから生まれる選択です。
はがきの文面を考える時間は、故人がどんな人とつながり、どんなふうに生きてきたかを振り返る時間でもあります。宛名を一枚ずつ書きながら、「この人には海のことを伝えたい」と感じる相手がいたら、その気持ちを大切にしてみてください。
散骨の伝え方や、散骨したあとの過ごし方について迷うことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
関連記事:【散骨の手続きと必要書類~業者に頼むときの流れ、墓じまい後の散骨と改葬許可、粉骨まで~】
参考:
2027(令和9)年用年賀はがき等の発行概要(日本郵便)
第7回お葬式に関する全国調査(2026年)(鎌倉新書)
家族葬後の喪中はがきは「誰に・何枚?」早期割引は11月11日まで《郵便局》(LIMO)
Mother and daughter die in the Maldives, the Sardinian sea will cradle them forever: ashes scattered at Capo Mannu(L'Unione Sarda)












