81年の時を経て、13歳の少年の遺骨が妹のもとへ
お墓や遺骨のことを考えるとき、「この遺骨は、たしかに〇〇の遺骨だ」ということを、私たちはほとんど疑いません。けれども、そのあたりまえを支えているのは、名前や記録、そして人の目による確認です。
2026年11月4日、広島から静かな知らせが届きました。平和記念公園の原爆供養塔に安置されていた若本敏明さん(当時13歳)の遺骨が、81年ぶりに妹の三好滋子さん(91歳)のもとへ返還されたと報じられたのです。供養塔の名簿に名前の誤記があったことが、長いあいだ遺族につながれなかった理由でした。
三好さんは、うれしさよりも悲しさが先に立つと語り、もう少し早く見つかっていれば亡くなったお母さまがどれほど喜んだか、と涙ぐんだそうです。心からお悔やみを申し上げるとともに、ようやくご家族のもとへ戻れたことに、静かに手を合わせたいと思います。
同じ週には、中国・安徽省でも、火葬場で遺骨が取り違えられていたという報道がありました。今回は2つの出来事をきっかけに、大切なご遺骨を誰かに託すとき、家族が確かめておきたいことを考えてみます。
「石本」と「若本」――名前の一文字が分かれ道だった
広島市の原爆供養塔には、約7万人ともされる遺骨が納められています。そのうち、氏名が分かっていながら引き取り手が見つかっていない方は、2026年7月時点で813人分の名簿として掲示されました。全国の自治体など2,194か所にも送られ、遺族を探す呼びかけが続いています。
この名簿づくりの前提になったのが、2026年2〜3月に行われた、およそ40年ぶりの骨つぼの総点検です。氏名や年齢、住所などあわせて37人分の情報が修正されたと報じられています。
若本さんの場合、名簿には「石本敏明」と記されていました。ところが、遺骨の入った封筒には「若本敏明」と書かれていて、折り目に「若」の草冠が隠れていたことが誤記につながったとされています。6月ごろ、三好さんが「兄ではないか」と申し出て、広島市が戸籍謄本と名簿を照らし合わせ、きょうだいだと判断したと報じられました。
「石」と「若」。たった一文字の違いです。けれども、その一文字の違いで、ご遺族は81年のあいだ、お兄さんに会うことができませんでした。名前は、遺骨とご家族をつなぐ、いちばん細い糸なのかもしれません。
なお、市は遺髪が残る52人について、母方の親族が健在であれば、市の負担でDNA型鑑定を行うとも伝えられています。名前の手がかりが乏しい方にも、つながる道を残そうとする取り組みです。
海の向こうでも――中国・安徽省で起きた遺骨の取り違え
一方、中国の安徽省明光市では、殯儀館(火葬場・葬儀場)で2人の遺骨が取り違えられていたと、現地メディアが2026年11月に報じました。
報道によると、2026年10月5日に亡くなった91歳の女性のご家族が、地元の習慣で、葬儀の際に遺骨を並べる「摆骨」という儀式を行っていたとき、骨に手術で入れた金属の釘の跡があることに気づいたそうです。女性は生前にその手術を受けていませんでした。確認すると、同じ日に同じ殯儀館で火葬された別の方の遺骨が渡されていたことが分かったといいます。
原因について、殯儀館の職員が十分に確認しなかったためとされ、当局は11月5日、館長の免職と関係職員の停職審査を発表しました。遺骨は取り替えられ、双方のご家族への賠償でも合意したと伝えられています。報道では、受け取りの際に職員も双方のご家族も、遺骨の受取票を照合していなかったという説明も紹介されました。
この出来事は、中国での話として受け止めるだけではもったいない、と感じました。遺骨は、受け渡しの瞬間に「確かめる習慣」があるかどうかで、安心の度合いが大きく変わる――そのことを教えてくれるからです。
ご遺骨を託すときに、家族が確かめておきたいこと

日本の火葬場では、多くの場合、ご遺族が立ち会って収骨をします。火葬のあと、ご遺骨はお墓や納骨堂に納めたり、粉骨して散骨したり、手元に置いたりと、さまざまな行き先に向かいます。そのたびに、誰かに預けたり、運んでもらったりする場面があります。
厚生労働省の「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」には、約款の公表、文書による契約、費用の明細書の添付、散骨を行ったことを示す散骨証明書の交付などが定められています。ただし、ご遺骨の識別方法や受け渡しの確認手順までは、このガイドラインには細かく書かれていません。だからこそ、預けるご家族の側でも確かめておくと安心です。
・氏名の漢字・読み・没年月日を、書類どおりに伝える
広島の例のとおり、一文字の違いが後々まで影響することがあります。申込書や預かり票に書かれた故人のお名前は、火葬証明書や埋葬許可証、戸籍の表記と照らして、ご家族の目でも確かめましょう。
・預ける前に、骨壺や袋の状態を写真に残す
お名前を書いた紙を添えている場合は、それも一緒に撮っておくと、あとから見返せます。書類は、原本を渡す前にコピーやスマートフォンでの撮影をして、手元に控えを持っておきたいですね。
・業者に「どうやって識別していますか」と聞いてみる
複数のご遺骨を同時にお預かりする業者もあります。名札や番号で管理しているのか、粉骨や散骨の工程ごとに確認しているのか、答えを言葉にしてもらえるかどうかは、業者を選ぶときの一つの目安になるでしょう。
関連記事:【散骨業者の選び方とよくあるトラブル~後悔しないために確かめたいポイント、海外散骨を頼むときの注意点まで~】
・受け取りや引き渡しのときは、受取票・預かり票を一緒に見る
安徽省の報道で取り上げられたのも、この「照合」でした。受け渡しの場で、その場にいる全員が確かめるのは、少し気恥ずかしいかもしれません。それでも、故人のお名前を一緒に読み上げるくらいの気持ちで、ゆっくり進めて大丈夫です。
・粉骨や散骨のあとの記録を、写真と書面で受け取る
粉骨の様子や散骨の日時・場所、散骨証明書など、「いつ、どこへ還したか」が分かる記録は、時間がたってからご家族が思い出を語り合うときの支えにもなります。立ち会えない場合は、とくに丁寧に確認しておくと安心です。
関連記事:【散骨の手続きと必要書類~業者に頼むときの流れ、墓じまい後の散骨と改葬許可、粉骨まで~】
本記事は2026年11月時点の報道をもとにしたもので、法的な助言ではありません。報道の内容は、今後の続報で変わる可能性があります。手続きの詳細は、各自治体やお墓の管理者、事業者にご確認ください。
お名前と思い出を、家族の言葉で残しておく
81年ぶりに戻ったご遺骨と、受取票の照合を欠いて取り違えられたご遺骨。2つの出来事は、遺骨が「だれのものか」を、名前と記録、そして人の確認が支えていることを教えてくれます。
そして、記録を残すことは、手続きのためだけではありません。どこで、どんな想いで、故人を見送ったのか。その記録は、何十年もあとにご家族が故人のことを語り合うときの、確かな手がかりになります。お名前と見送りの記録を、ご家族の言葉で残しておくことも、大切な供養のひとつではないでしょうか。
弊社の海外リゾート散骨でも、散骨のあとには散骨証明書や写真でご報告をしています。散骨に限らず、ご遺骨を託すことへの不安や、確かめておきたいことがあれば、そのままにせず、まずはお気軽にご相談ください。
家族でお墓やご遺骨の行き先を話すとき、「そのとき、どんな記録を残しておきたいか」も、あわせて話してみてはいかがでしょうか。
参考:
被爆死の兄、81年ぶり遺骨対面 名簿に誤記判明で初返還―広島(時事ドットコム)
広島原爆犠牲の兄遺骨、81年後に戻った妹「悲しい」 名前誤記が判明(日本経済新聞)
原爆供養塔の遺骨 総点検で名前の誤記判明した男性 遺族に返還へ(HOME広島ホームテレビ/Yahoo!ニュース)
広島市役所で「原爆供養塔納骨名簿」を掲示 816人分、一部氏名修正(日本経済新聞)
官方通报“殡仪馆发错骨灰”(澎湃新聞)
安徽明光通报“殡仪馆发错骨灰”:馆长被免职,涉事人员停职(澎湃新聞)
散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)(厚生労働省)












