大切な人を亡くしたあと、「火葬場の予約が1週間先まで取れない」と告げられて戸惑った――そんな経験を耳にすることが増えました。お別れの時間がのびることを前向きに受け止められる方もいれば、そのあいだの安置費用や、気持ちの置きどころに悩む方もいらっしゃるでしょう。
10月14日、東京都の「火葬場に係る検討会」の第2回会合が開かれ、東京23区内に小規模な火葬場を新しくつくる案が話し合われました。同じころ、海の向こうのアメリカ・メリーランド州では、葬儀社が計画する火葬施設に近隣住民が反対の声を上げていると、10月19日に地元テレビ局が伝えています。
今回は、この2つのニュースをもとに、火葬場が足りなくなっている背景と、新しくつくる難しさ、そして見送る側が今から考えておけることを整理してみます。
東京23区で「公営の小規模火葬場」新設へ―10月14日の検討会で何が話されたか
東京23区の火葬場は9か所あり、そのうち7か所を民間企業が運営しています。全国の火葬場の大半が自治体などによる公営であるのに対し、23区は戦前から続く民営の火葬場が中心という、全国でも珍しい地域です。
テレビ朝日系(ANN)の報道によると、23区の火葬料金は公営が4万4,000円から、民営は8万円から。燃料費や人件費の上昇もあって民営の料金が上がり、安いプランは予約が埋まりやすいといいます。八王子市など23区の外では、住民の火葬料が無料の地域もあり、住む場所によって負担に大きな差があるのが実情です。
10月14日の検討会では、火葬炉が2〜4基ほどの小規模な火葬場を23区内に新設する案が検討されました。日本経済新聞によると、炉や設備をあらかじめユニットにして現地で組み立てる「ユニット型」が有力とされ、将来の需要に合わせて規模を減らしやすい点も考えられているようです。
23区の区長でつくる特別区長会の吉住健一会長(新宿区長)は、検討会で次のように述べたと報じられています。
火葬場を所管する自治体として、設置を検討する必要があると考えている出典:TOKYO MX(2026年10月15日)
東京都は、用地の確保や財政面で区の取り組みを支援する方針です。検討会は12月に中間まとめを出し、来年3月ごろに最終的な案をまとめる予定とされています。
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東京だけではない―政令市の4割超で受け入れが逼迫するおそれ
火葬場が足りなくなる心配は、東京だけの話ではありません。都の試算では、都内の死亡者数は2035年ごろに火葬できる上限を超え、2065年には年4万7,000件以上の火葬に対応できなくなるとされています。
読売新聞が公営の火葬場を持つ全国20の政令市に尋ねた調査でも、次のような回答が集まりました。
・すでに受け入れ能力を超えている
横浜市と広島市。年間の火葬件数が、受け入れられる件数をすでに上回っていると答えています。
・2030年代までに逼迫するおそれ
さいたま市、千葉市、川崎市、相模原市、堺市の5市です。
・2040年ごろまでに逼迫するおそれ
岡山市と福岡市の2市です。
あわせて9市、政令市の4割を超える自治体で、遅くとも2040年ごろまでに火葬の受け入れが苦しくなるおそれがあるということです。背景には、団塊の世代の高齢化によって亡くなる人が増える「多死社会」の本格的な到来があります。
各市も手をこまねいているわけではなく、岡山市を除く19市が新設や建て替え、炉の増設を予定しているといいます。ただ、横浜市の新しい市営火葬場の整備費は約260億円とされ、施設を増やすには大きな費用がかかることも課題になっています。
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「必要だけれど、近くには」―アメリカでも起きている火葬場づくりの壁
火葬場を新しくつくるうえで、費用と並んで大きな壁になるのが、建設予定地の近くに住む人たちの理解です。東京の検討会でも、用地の確保と住民の理解が課題に挙がりました。
東京には、火葬場を住宅などから250m以上離すよう求める規制があります。日本経済新聞によると、これは明治時代の野焼きによる煙や臭いへの対策として定められたもので、火葬炉の性能が上がった今、条例の改正も含めて見直す方向性が示されたといいます。
同じ悩みは、海外にもあります。米メリーランド州ボルティモア郡のランドールズタウンでは、地元の葬儀社が、敷地内に1日6件の火葬ができる施設をつくる計画を進めています。州の環境局は、連邦や州の基準を満たすとして、建設許可を出す方向の「暫定的な判断」を示しました。
これに対し、近くに小学校や教会があることから、住民は大気への影響などを心配しています。地元テレビ局WMARの取材に、ある住民は「施設をつくること自体には反対しない。ただ、別の場所にしてほしい」と話していました。葬儀社の側は、火葬を選ぶ人が増えているため、外部に頼らず自社で火葬を行いたいと説明しています。
火葬場は、誰もがいつか必ずお世話になる場所です。けれども、「必要なのはわかるけれど、家の近くには」と感じる気持ちも、決して特別なものではありません。日本でもアメリカでも、火葬が当たり前になった社会だからこそ、施設をどこに、どのようにつくるかが問われているといえるでしょう。
火葬までの時間がのびても、慌てないために

新しい火葬場ができるまでには、まだ何年もかかりそうです。地域や季節によっては、亡くなってから火葬まで数日〜1週間以上待つこともあると考えておくと、いざというときに慌てずに済むかもしれません。
見送る側として、今から確かめておけることを挙げてみます。
・住んでいる地域の火葬場と料金を知っておく
公営か民営か、住民料金はいくらか、混み合う時期はいつか。自治体のホームページで調べられることも多く、23区のように地域で大きく差がある場合は、事前に知っておくだけでも安心です。
・火葬を待つあいだの過ごし方を考えておく
ご遺体を自宅で安置するのか、葬儀社や「遺体ホテル」と呼ばれる安置施設に預けるのか。費用も含めて、家族で話しておくとよいでしょう。
・火葬のあとの「行き先」も一緒に話しておく
お墓に納めるのか、樹木葬や散骨を選ぶのか。火葬の段取りに追われる時期だからこそ、その先の希望がわかっていると、家族の迷いが少なくなります。
関連記事:【遺体ホテルとは?料金の目安とメリット・デメリット、火葬待ちの現状と利用前に確認したいこと】
なお、火葬が済んだあとは、急ぐ必要はありません。日本の法律には、火葬後いつまでに納骨や散骨をしなければならないという期限の定めはないとされています。火葬までの慌ただしい時間が過ぎたら、遺骨をどう送るかは、家族のペースでゆっくり考えてよいのです。
弊社「海と森のセレモニー」の海外リゾート散骨も、火葬を終えたご遺骨をお預かりするところから始まります。四十九日や一周忌、ご家族が集まれる休暇など、落ち着いたタイミングでご相談いただく方も少なくありません。火葬の段取りに追われているあいだは目の前のことに向き合い、その先のことは、気持ちが整ってから一緒に考えていければと思います。
関連記事:【散骨はいつ行う?―四十九日・一周忌・命日…「急がなくていい」遺骨との時間と、送り出すタイミングの考え方】
見送る場所を、社会でどう支えていくか
東京23区では公営の小規模火葬場の新設が検討され、全国の政令市でも建て替えや増設が計画されています。一方で、費用や住民の理解といった課題があり、アメリカでも同じように、火葬施設をどこにつくるかで地域の意見が分かれていました。
火葬場は、亡くなった人を送り出す、最後の大切な場所です。誰もが安心して家族を見送れる仕組みを、社会全体でどう支えていくか。ニュースをきっかけに、ご自身の地域の火葬場のことや、火葬のあとにどう送り出したいかを、ご家族で話してみてはいかがでしょうか。火葬後の供養や散骨について気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
関連記事:【多死社会における火葬待ち問題】
参考:
東京23区の火葬場『料金高騰』&『2週間待ち』も…新設を検討へ 待ち受ける“壁”(テレビ朝日系(ANN)/Yahoo!ニュース)
東京23区、需給逼迫で「公営火葬場」新設検討へ 東京都は支援の方針(TOKYO MX+)
東京都、2〜4基の小規模火葬場新設を検討 ユニット型整備が有力(日本経済新聞)
東京の火葬場不足解消へ、23区内に「小規模新設」案…課題は250m規制と住民感情(東京新聞デジタル)
火葬場の受け入れ、政令市4割超で逼迫の恐れ…団塊世代高齢化の「多死社会」本格到来へ(読売新聞オンライン/Yahoo!ニュース)
火葬場に係る検討会(第2回)の開催について(東京都)
'Living next door to death': Neighbors oppose proposed Randallstown crematory(WMAR 2 News)






